不利と有利

「ちっ、まだ追ってくる」


 そう舌打ちをして俺は、投げナイフを暗がりに放つ。


「ギャッ」


 小さな悲鳴が聞こえたが、倒れる音が聞こえない。


「……牽制にはなるけど、こんなことしてても先に手持ちのナイフが無くなるだけか」

「ゴブゴ―」

「キプロスも戦うって? ……ん、ありがとう。でもとりあえずキプロスは俺の先を走ってて」


 そう言って俺はキプロスを先頭にして、再度投げナイフを投げた。

 ナイフは暗がりから飛んできた矢に当たり、地面に転がる。


「……早く」

「ゴブゴ―‼」


 そう言ってキプロスは全速力で道を駆ける。

 牽制しつつ、後退……それを繰り返して先へと進んでいく。


 逃げずに戦う、っていうのも一回考えてみたが……相手は複数。少なくとも五体以上はいる。

 

 その上、この坑道というフィールドは、俺の場合は光が無いと何も見ないのに対し、相手からはこちらが見えている状態だ


「……流石に分が悪すぎる」


 とりあえず戦うにしても、外に出てからにした方がいいだろう。


「ナイフ……は間に合わないか」


 暗がりから飛んできた矢を、短剣で弾く。

 二発、三発……四発。


「連続で撃ってきた」


 その矢の事如くを弾いていく。


「……っ」


 しかし、流石にはじけるようにも限界があり、俺は左腕に矢を腕に矢を受けてしまった。


 バンッという重い衝撃と共に、俺の右腕にジンジンと熱い痛みが広がっていく。


「……痛い」


 涙が出そうなほどのいたみだが…………耐えられない痛みじゃない。

 腕を伝い、地面に垂れる血を見ながら俺は走り続ける。


「ゴブゴッ!」

「良いから走る」


 心配そうに見てくるキプロスにそう言うと、目の前をちらりと見た。


 目の前の通路は三つに分かれており、どれもが暗い穴をぽっかりとあけていた。


「……分かれ道」


 どっちだ?

 今まで一本道だったからずっと走ってきたが、ここで分かれ道が来るとは……


「間違ったら、行き止まりか……それとも全部外に繋がってるか」

「ゴブゴ~?」


 とはいえ、後ろにゴブリンは迫ってきているわけで……迷ってる暇はない。


「……右、左……真ん中………」


 だがしかし、間違っていたとしたら……


 そう、なかなか決断することができなかった時だった。


「……?」

「ゴブゴ~?」

「そっちに誰かいるの?」

「ゴブ~?」


 そう言って、右側へと顔を向ける。


「今……声が聞こえた様な」


 


 その時、俺の足元に矢が刺さる。

 

「っ……迷ってる暇は……本当に無いか」


 声意外に判断材料はない。


「……賭けるか、キプロス。右側に行くよ!」

「ゴブ!」


 そう俺たちは言って、右側の通路へと飛び込んだのだった。




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読んでくれてありがとうなのです!

作者からの少しの宣伝なのです。

新作を始めましたのですよ!


タイトルは『転生したら幽霊船だったので、この世のお宝すべて手に入れてやろうと思います。』

https://kakuyomu.jp/works/16817330665162212961


……知ってます? 船って彼女なのですよ。

是非読んで……コメントいただけたら最高に嬉しいのです!


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