第8話 〜侵略者達〜

どれくらい時間が経っただろうか。

俺はふとそばに気配を感じた。

「誰かいるのか」

しかし空気が揺らぐことはない。

俺は目を開ける。目を開けたはずだった。

しかし何も見えなかった。

「ここどこだ。何が起こってるんだ」

身体を動かそうと思ったが、自由が効かなくなっている。

唯一声だけ出せるので、叫んだ。

「おい、誰かいないのか」

相変わらず反応は何もない。恐怖で全身に鳥肌が立つ。

他に何かできることはないのか。つーか神なのに何もできないとかどうなってるんだよ。

俺は声が出せることに感謝しながら、自分の能力をどうにか声だけで起動できないか試してみる。

「白く染めろ」

しかし何も起こらない。くそっ後はなんだ。

俺はペンは自由に出せることを思い出し、手にペンを握っている想像をした。

しかし、ペンは出てこない。

「くそっなんでだよ」

文句を言っている間に少し前の記憶が蘇ってきた。

そう言えばペン折ったんだった。

しかしこの状況はなんだ。

俺はいつものように全能神に向けて話しかけることにした。

「えー全能神さん全能神さん聞こえますか。この状況について説明してくれますか。繰り返します。全能神さん全能神さん応答してください」

いつも通りではあるが反応がない。猫ロボに確認するか。

「猫ロボ近くにいるかー。この状況について教えて欲しいんだが」

「……」

「おかしいな。猫ロボは反応しないことなかったんだけどな」

壊れたか?マジで今の状況を誰か説明してくれよ。

すると近くからふふふと笑い声が聞こえた。

「誰だ?おい?誰かいるんだろ?」

「僕ですよ創造神」

「おっその声は知恵の神だな。今どういう状況なんだ」

「残念ですが、僕にもわかりません」

その声は戸惑いを帯びていた。

「それにしても創造神いつまで横になってるつもりですか」

「えっ?お前も寝てるんじゃないのか」

「えっ?僕は座ってますよ」

「えっ?お前どうやって身体動かしたんだ」

「動かしたも何も動きますけど」

知恵の神は少し考えているようだ。

「もしかして創造神は重力操作とかできない感じですか」

「なんだ重力操作って」

「あー無理そうですね」

「さてどうやってここから出ましょうね」

「ちょっと待ってくれ。状況把握してないんじゃなかったのかよ」

「はい。状況は把握してないです。ただ、創造神が起きる前にここの空間について調べる時間はありましたから」

「おおっそうか。でここはどこなんだ」

「どこか。まではわかりませんが、転移ができなくなってますね」

「転移できないのか?」

俺は転移の力を使ったことがないが、他の神達は自由に使いこなしている感じだった。しかしそれができなくなっているとはどういうことなんだ。

「はい。あと重力が下に強く働いていることから。上昇していることは間違いなさそうですね」

「上昇ね。そもそもどうして俺らに重力が働くんだよ。今までも感じてなかっただろ」

「……うーんどうしてでしょうね。今までとは違う次元、あらたな世界にでも連れて行かれている最中でしょうか」

「……今までに造った世界の生物が何か俺らに危害を加えようとしてるのか」

「それはどうでしょうか。彼らはまだ意味を得たばかりです。僕たち神の存在を認識し、捕まえられる程の力を持っているでしょうか」

「なんだ神を超える存在でもいるってのかよ」

「その可能性もありますね。でも僕たち神が少ないと思ったことはありませんか」

「少ない……」

言われてみれば、8つの世界に対して、俺、全能神、命与神、軍神、冥界神、芸術神、知恵の神の7神しかいない。

それが多いのか少ないのか俺には判断がつかないがもう少し神がいてもいい気がする。

「知恵の神としては少ないと思うのか」

「はい。全能神の力が弱いのかと思っていたのですが、最近は情報処理することに使う力も減っているはずですし、例えば水の神や炎の神、愛の神などがいてもいいと思いませんか」

「なるほど。俺も1神で世界を創るじゃなく、世界創造する神がもっといる可能もあるってことだよな。そもそも俺は絵が下手らしいしな……」

最後は自虐っぽくなってしまった。

「そうですね。そもそもなんで創造神は絵が下手なんでしょうね。本来は創造の神ではなかった。芸術神や絵が描ける神が創造神であればもう少し世界創造も楽だったかもしれないですね」

「そうか……。できることと得意なことにことに差がある訳か。なぁ他の神たちには何か弱点みたいな苦手なことってあるのか」

知恵の神は少し考え込む。

「弱点と呼べるのかはわかりませんが、僕の知っている限りでは、全能神はほとんど寝てましたし、命与神は生物に命を吹き込むとその世界の生物に似た容姿になることがありました。軍神は世界を探索してましたが、元の場所に戻ってくるのが苦手だった。芸術神は力を使うと小さくなりますね」

「おぉそう言えばそうだったな」

命与神や軍神については初めて聞いたが、芸術神は最初の世界で力を使ったのを見ているので知っていた。

「僕はどうなのでしょうか。自分のことなのでわかりません。あと冥界神はほとんど関わりがないのでわからないです」

「いや自分のことは難しいよな。俺も自分の絵が下手だと思ってなかったしな。それこそ2つ目の世界で芸術神が絵の描き方を少し教えてくれて、次の世界では何も言われなかったから上手くなってたのかと思ったのにさ」

「……あぁもしかして聞いたんですか?」

知恵の神達が俺の描いた絵を修正していたことを俺が知っていることについて指していることを察した。

「あぁ聞いたばっかりさ……。それでやる気をなくしてふて寝してたらこの有様だよ。……ほんと何が起こってるんだ……」

知恵の神はしばらく黙っていた。

「創造神やっぱりここから出ませんか」

「……出る方法あるのか?」

「いえ、試してみないとわかりません。でもここで待つよりできることがあると思うんです」

「そうだな……まず俺が動けないのをどうにかしたいところだけど」

「それなのですが、もしかしたら解決できるかも知れません。創造神に触れてもいいですか」

「あぁもちろんだ」

「失礼します」

そう言うと、知恵の神が動く気配がした。

しかしその瞬間は訪れなかった。

ゴォォォォォォォォ。

激しい爆音と衝撃が俺を襲った。神なのに死ぬのか。俺は強く目を瞑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る