第7話 〜嫌な気配〜
「ちょっと芸術神、楽も言い方どうにかならなかったんですか」
創造神が消えた後、残された僕、芸術神、そして花を運んでいた他の妖精達も何かあったのかと集まってきていた。
「ごめんなさい。最初の花と違って雑な感じだったので」
「あぁ……そうですね」
最初に芸術神が描いていた花を具現化させていたこともあり、それと比べれば彼の絵のクオリティは見劣りしてしまう。これでも最初の頃に比べればだいぶ上手になりましたし、彼の温かさが溢れた花なんですけどね。僕は彼が描いた花を1輪手にとった。
「すいません。私も説明していなかったので」
僕は創造神は絵があまり上手ではなく、それでも世界創造を任されていたこと。そして最初の花は彼の機能の一部として芸術神が描いた絵を具現化していたということを説明した。
「いやでも、あいつが絵が下手なのは事実じゃん」
芸術神はズバリと言い放つ。彼女は最初から描ける側だったから……。彼のうまく描きたいが、思うように描けないというこの苦しみを理解できないのだろう。
「でもあいつしか世界にモノを生み出せないから仕方なく描いてもらってるんじゃないの。ただでさえ時間がないのに、あいつが絵を描くのをやめたら、他の世界が未完成のまま動き出すぞ」
「本当なら芸術神から絵を描くこと教えてもらってから、創造してもらえればよかったんですけどね。思っていたより時間がなく、きちんと説明しなかった私の責任ですね」
さてどうしたものか。
「どうして時間がないんですか」
喜が疑問に思ったのか、質問してきた。
「えーっと。それはですね」
僕はまず妖精達に他にも世界があること、そして他の神について簡単に説明した。
「私は他に何もできない程、流れてくる情報の処理に追われていて、他に神達に世界創造のことを任せていたんです。
他の神には簡単に役割だけを説明してました。
創造神の後に軍神が生まれました。
彼はまだ役割をこなすタイミングではないので、時間がありました。
だから彼は8つの世界、そして外側の空間、行ける場所には全部行ったのではないでしょうか。
その彼が異変に気づいたのです。
創造神がまだ造ってない世界に、何もなかったはずの空間に変化が起きてしまったのです」
僕はそこで一呼吸置く。
「2つ目の白黒の世界。本来はそんな制限はなかった。3つ目の世界水で満たされてはいなかった。4つ目の世界中央に光源はなかった。5つ目の世界に並行世界など存在していなかった。6つ目の世界と7つ目の世界にもそれぞれ変化が起こっています。私達は神ですから、この世界に干渉できるものはないはずなのです。しかし異変が起こっている。軍神は今も多くの場所を探索して、変化がないかを確認し報告してくれています。私は全知全能の神ですが、この世界の変化についての情報は流れてきません。異常事態なのです。だから私達はできるだけ早く創造神に世界を想像してもらうべく、素材サンプルや知恵の神と一緒に世界創造してもらったり、彼を手助けしてきました。だから彼は絵が上手くないまま世界を創造しなければいけなくなってしまったのです」
僕は並行世界に手を翳す《かざ》。
並行世界には僕の姿は映らない。
「芸術神あなたは並行世界に姿映りますか?」
「あっ?そこまでいけばいいのか?」
芸術神が移動しようとしたその時、パリンッ境界面にヒビが入った。
「危ない。芸術神、妖精のみなさんも転移します。私に掴まってください」
僕は芸術神そして、喜怒哀楽の妖精と共に第8世界神の世界に移動した。
他の世界に移転した時に妖精が消失する可能性もあったが、消失しないことに少し安堵した。
まぁ神の世界は都合のいいようにできてるんですけどね。
僕は急いで他の神を呼び出す。
「緊急事態だ。早急に第8世界まで戻ってきてくれ」
軍神と冥界神が一緒に現れ、少し遅れて命与神も現れた。
しかし知恵の神と創造神が戻ってこない。
「おいどうなってるんだ」
「すいません。今はあまり説明している暇がないのですが、第5世界を封鎖してもらえますか。そしてそれ以外の世界についても結界を張って侵入者が入ってこないようにしてください」
軍神、冥界神は上手く連携をとり指示を出した通り結界を張っている。
「命与神、知恵の神と創造神の場所を特定できますか」
「やってみる」
命与神は頷くと捜索を始めた。
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