断章

 深夜、桔梗の間。

 西園寺寅吉は自分の鞄を漁っていた。

 鞄から取り出したのは白い手袋。それを嵌めると、傍に置いていた金槌、包丁、そしてビニール紐を手にとり、ほくそ笑む。

 それらの品をビニール袋に入れると、音を立てずに自室の扉を開いて廊下を覗き込むも、舌打ちをして頭を引っ込め扉を閉める。

 暗い廊下には懐中電灯の明かりが見えた。キャシーが見回りをしているのだろう。機巧人形は眠らない。

 寅吉は扉の鍵をかけると、窓の方へと振り返った。

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