第19話 写真

山を下りて、2日エルフの村で宿泊した。

カモミールは里帰りだったらしく、元々何日か滞在する予定だったようだ。


「俺お邪魔じゃなかったですか?」


「何言ってんの!いつもお世話になってるし、いいんだよ。」


笑顔でカモミールさんは言ってくれてるが、少々居心地が悪かった。

村八分って感じ?

仕方ないのだけど。


「…未だに人間に対して確執かくしつあるんだよな。ミライいい奴なのに。」


「ミライさんごめんなさいね。姉がいつもお世話になってるんですね。」


俺はカモミールさんの家で泊めてもらっている。

可愛い女の子の銀髪のエルフがお茶を出してくれた。


「私も外に行きたいな。」


ぽつんと呟くカモミールさんの妹。


「あ、私ミントって言います。」


ミントはふわっと笑った。

可愛らしい少女。

カモミールさんとは全然性格が違うようだ。


「そと?行かないの?」


「親に止められてて、お前には無理だろうって。」


色々事情があるのかな。

エルフは特別なのかもしれない。


「ばっかだなぁ。そんなの無視すればいいんだよ。」

カモミールさんが言う。


「私なんか何も言われてないけど、何とかやってるぞ?」


しっかりしてそうなカモミールさんと、ほんわかしていて危なっかしいミントさん

外に出さない理由、何となく分かってきたかも。


「外出れるといいですね。」


外か…。

俺は思いついた。


”ポーン”

手の中に懐かしい四角い板が現れる。


「何だそれ?」


俺は青色のスマートフォンを引き寄せた。

電池は無くなってるな…。

そりゃそうか。


充電池、ソーラーライトのやつ。

”ポーン”

あ、来た来た。

こっちの世界は電気無いからね。


「これに外の世界の写真を撮って、持ってこれるよ。」


『しゃしん?』

二人の声がハモる。


あ~ここには無いものか。

わからないよね。


”ポーン”

もう一個電池が入った充電池も引き寄せる。

これですぐ使えるかな?


パシャ

少し充電して、ミントさんの顔の写真を撮ってみる。

俺はミントさんに写真を見せてみた。


「え~なあにこれ?絵が入ってるの?しかも鏡みたいだね。」


「こうやって、外の風景を撮るんだ。そして持って帰れば外の世界を見れるだろ?」


さすがに電波はないけど、電気があれば写真は撮れるからね。

昼間はソーラーパネルの充電池で充電して、普段は電源を切っておけばそんなに電池を使わないだろう。


「それ異世界の物か?変わった能力持ってるな~。」


カモミールさんはまじまじと俺を見つめてきた。


「他に変わったもの無いのか?面白そうだ!」


カモミールさんの目がキラキラしている。

彼女って研究者だっけ。

刺激しちゃったのかも。


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