第18話 山登り

エルフの村にはすぐに着いた。

1週間かかるって?

すぐ帰って来られるじゃないか。

そう思っていたのだが。


「明日から山登りだから。しっかり休んでね。」

マリー花は山の上に生えているらしい。


山登り込みで1週間なのね。


山登りか…。

すごく嫌な気分になった。

学生の頃は嫌な思いでしかないし。


あれちょっと待てよ?

俺結構平気かも。

歩いても全然疲れないし。

ということは山登りも楽勝かな?


そう思っていたのだが…。


「カモミールさん?」


俺の目の前で浮遊していた。

風魔法なのだろうか。


「歩いていくのもいいんだけど、やっぱり疲れるんだよね~。先に頂上いってるね。♪」


つうか俺も連れていけっていうの!

置いて行かれた。

信じられん。


「はぁ~。」


歩くか。

最近疲れないし、大丈夫だろう。


少しずつ登っていく。

岩があったり、地面がぬかるんでいたり油断すると怪我しそうだ。

体力もそうだけど、意外と気を使うな。

空気がヒンヤリとしてくる。

疲れは無く順調に歩いているのだが、空気感が変わってくる。


一人で歩くのは大変だと思っていたのだが、そうでもなかった。

余裕があるからなのか。

前の世界と植物は大差ない気がするのだが…違う風景を見ている感覚。

キラキラした景色。

気持ちの余裕でこんなにも変わるものなのか?

標高が上がるにつれて、生えている植物も変わった気がする。


「これを味わないで、一気に頂上か。もったいないな。」


俺はのんびりと頂上を目指す。

ちなみに断崖絶壁だんがいぜっぺきみたいな所は無かった。

急斜面が続いているだけだ。


「前の俺だったら、途中で愚痴ってるな。」



****



「お疲れ様。目的の木はあそこだよ。」


カモミールは岩の上に座って待っていた。

何時間いたのだろう。

頂上は絶景だった。

眼下には遠くの集落が見渡せる。


「昔はあの木もっとあったんだけどな。」

ローズウッドといわれる木

少なくなっているようだ。


「人々が欲望のために伐採ばっさいしたとか?」


「そっか。そうかもしれないね。あの木はいい香りがするんだよ。香木こうぼくとも言われていてね。…本当のところはわからないけどね。」


俺とカモミールは木に近づく。

頑丈そうな木だ。

幹が太いから長い年月経っているのだろう。

小さい白い花が枝から生えていた。


「甘い香りがする…。」


「貴重だね。どのくらい持っていこうか…。必要な分だけにしよう。」

カモミールは優しく花弁にふれて摘み取っていた。


「少し、もらうよ。」

花に話しかけている。


その後、俺も少しだけもらうことにした。

これは絶対に秘密にしないと駄目な場所だ。

木を増やせればいいのにと思い、カモミールに聞いてみたが難しいらしい。

魔法も万能ではないみたいだ。



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