第22話 喰いぶち
「はぁ……猿もおだてりゃ木に登るっていうけども。おだてられても木に登れない羊だよわたしゃ……ぺええー!」
「きゃっ! どうしたんです? いきなり奇声上げて……」
「あ、ごめんなさい! そのまま続けてください! いいですよ! もう少しです! さぁラスト三回いきましょう!」
「おす!」
その漏らし事件が二週間前、それがあってからどうもトラウマになってしまったらしく。
たくさんたくさんお誘いしてもらえるのですが……どうにも手が出ずに今に至ります。
自分自身にブレイブハートすればいいじゃんて思うかもしれませんけど怖いものは怖いんですよ。
冒険者になりたての三週間前、その頃の私はびしっとずばっと活躍する自分を妄想していました。
でもやはり妄想は妄想です。
もう、そうなんです。
でもでも、私が頑張った甲斐があったのか、バルトもA級に昇格したんだよ。
今はコンビを一時休止していて、他の女とよろしくやっているはずだ。
疾風のお二人とも何度かダンジョンに潜っているらしく、最近は結構羽振りがいい。
たまに海鮮料理を奢ってくれるいい人になった。
そんなこんなで日常は過ぎていき、貧乏暮らしをしていた私に転機が訪れた。
「なぁフィリア。これやるよ」
「え? 何ですかこれ」
「剛気のネックレスだそうだ。この前ダンジョン潜った時に拾ってな、鑑定してもらったんだけどそれを付けてれば勇気凛々元気元気、怖いものなんてない、ってな代物らしい。お前がリーシャの家で俺にかけてくれた法術に似たようなもんだな」
「えぇー……これを私に付けさせてどうするおつもり特盛?」
「一々ふざけないと死んじまう病気か何かかお前は。リハビリだよリハビリ。お前ろくなもん食ってないだろ。毎日依頼こなしてるのは知ってるけど、上手くいってないんだろ?」
「うぐ。なぜそれを」
「受付のねーちゃんから聞いたんだよ。困ってるみたいだから手を貸してやれってな」
ぐぬ。
確かにバルトの言う通り私がこなす依頼はあまりうまくいった試しがない。
薬草が生えてるポイントの地図を逆さまに読んで逆走したり、鈍臭いゆえか走って転んでガン萎えしたり、捕獲対象のモンスターが親子連れで捕まえるのかわいそうになって見逃しちゃったりと実にうまくいかない。
おっかしーなー。
処女宮にいた頃は成績トップ独走してたのになー。
どうしてこうなったー?
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