第15話 事後

 無事に解呪の儀も終わり、晴れやかになった古民家の中、私はバルトと一緒にリーシャが出してくれたお菓子を食べながら縁側でのんびりとお茶をしていた。


「い~い天気ですねぇじいさんや」


「そうじゃのうばあさんや……って誰がじいさんか!」


「まぁまぁ、会話のノリっていうやつですよ。ここいいですね、呪いがないだけでこんなにも趣が出るなんて」


「言われてみりゃそうだなぁ。いい感じに日が当たって、周りも静かだし。ちょっと変わった建物だけどな」


「ワッフル建築でしたっけ?」


「なんだその美味しそうな建築物は。ワフウだよワフウ。シンワ国の建築様式ってリーシャが言ってたろ」


「あぁそうでしたね。ワフウワフウウフウフ」


「言葉遊びしてる場合か」


「いいんですよ! のんびりする時はのんびりする! これが人生まったりシャッキリ生きる長年の秘訣です!」


「ばば臭い事言ってんなぁ。まだ十八だろ」


「誰がババァですかっ!」


 言い合いの隙にひょいぱく。

 お皿に残っていた最後の茶菓子を口の中に放り込む。


「あってめっ! 狙ってたのに!」


「へっへーん」


「まぁまぁ、まだありますから」


「リーシャさん」


 両手でお盆を持って笑うリーシャは私の隣に腰を下ろし、追加のお菓子を皿に乗せてくれた。


 すかさず一つ口に放り込む。

 甘すぎず濃厚すぎず、あっさりとした口当たりの不思議な食べ心地。


「これ、プリシラが作ってくれたんです」


「ほえー女子力高いですねぇ。私がやったら黒こげになりそう」


「頑張れよビショップ」


「うわ、絶対馬鹿にしてますよねバルトさん。馬鹿にされても仕方ないですがっ!」


「悔しかったらこれくらい作れるようになるこったな」


「出来たとしてもバルトさんにはあげませんよーだ!」


「んだとこのやろう!」


「やんのかぁ!」


「あははは! 仲がいいんだね二人とも」


 私とバルトが茶番をしているとリーシャがコロコロと笑った。

 

「そういえばリーシャさんの職業ってソーサラーですよね?」


「ううん、まだメイガス。C級だから」


「めいがす」


「あぁ、メイガスってのは魔術職の一番下だ。メイガスの上がウィザード、んで一番上がソーサラーだよ」


「なるほど?」


「フィリアさんはビショップなんだよね? ランク別職知らないの?」

「あーあの、私さっき冒険者になったばっかりで」



「ええええ!?」

「ええええ!?」


 いきなり大声を出されてびっくり、摘んだ茶菓子を落としてしまった。

 なになに!?


「もっとベテランなのかと思ってたよ! 凄いなぁランクは?」


「A級でした!」


「わぁ、凄い! 才能なのかな」


「どうでしょう。私は元々聖王国にいてそちらで色々と勉強してましたので」


「そっか。でも凄いな。私なんて一年冒険者やってるけど今だにC止まりだもん。才能ないのかなぁ」


 リーシャがお盆を胸に抱きながらシュンとしている。

 うわあざとかわいい。


 これ目の下のクマがなかったらそこらへんの男ぽんぽん釣れそう。

 でも大丈夫、塩フィリアは眠っている。


「無いと思いますよ?」


「えっ」


「おいおいそこはそんな事ないですよ、とかあるだろ」


「え、いやだって無いものは無いんですから煽てるより事実を伝えたほうがいいのでは?」


「だからって……」


「待ってください。私は魔法の才能がないと言っただけです。冒険者自体を否定しているわけじゃないです」


「……そうなの?」


 リーシャさん! だめ!

 うるうるした瞳を私に向けないで!

 あぁ、起きる! 塩フィリアが目を覚ますううう!

 ゴッ。

 

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