第37話 再会

ピーンポーン♪



「はいはい。あぁ、ウソクくん。」


「ただいま。アミちゃん大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。貧血かしらねぇ。部屋で寝てる。」


「お邪魔しますね。」


・ 


「アミちゃん大丈夫?」


「うん。何とも無い。ごめんね。」


「良かった。心配したよ。」


「ん。…。」


ウソクが不意にキスをした。


「ん。んー!わかったから(笑)」



「スケジュール決めて来たら、教えておくよ。」


ウソクは自分のノートPCを立ち上げエクセルで作ったスケジュール表を見せてくれた。


――――――――――――――――――――


      撮影スケジュール


12/2(月) 顔合わせ


12/4(水) 体大体育館

    練習風景撮影


12/6(木) 体大体育館

    練習風景撮影


12/9(月) 体大体育館

    ユニフォーム着用練習


12/11(水) 体大体育館

     ユニフォーム着用練習


12/13(金) 藝術大スタジオ

    インタビュー撮影


12/15(日) 打ち上げ

    ・会場未定 ・幹事:体大



・体大体育館の備品、及び器具:使用可能

・17時〜


《藝大持参》

・大型カメラ×2、三脚×1、小型カメラ×1

 一眼レフ×1、レンズ×1、PC×1、脚立×1

 電源コード10m×1、周辺機器

――――――――――――――――――――


「バスケ部の人達、誰もバイトしてなかったよ。」


(当たり前じゃん、みんなプロ目指してるのに。)


心の中でしか、こんな事は言えない。



「15日日曜日ってバイト入ってない?」


「え…。ちょっと待って。」


スマホでスケジュールを確認した。


「入ってない。」


「良かった。打ち上げしよってさ。先生達も参加だから。ヒョヌ先生来れたら良いんだけど。」


「明日確認しなきゃだね。」




「ねぇ。アミちゃん。しようよぉ。」


「私、さっき倒れたのに。ひどく無い?」


「僕の女だってマーキングしとかないと。キスマークいっぱい付けとく。」


「そんな女、最低だからやめてね?」


「バカだな。僕にだけ最高だったらそれで良いんだから。」



ウソクの部屋に移動して、たくさんの男性に会う事への“釘刺し”の“したい”を受け入れる事にした。

今はただ、静かに穏やかに12月が終わる様に、荒波が立たない様にするしか無い。


――――――――――――――――

翌日、

バイト中に明日の事を色々と思案した。



ウソクに、ユンは同級生だと言っておくべきか…。

そんな事をしたら、色々と聞かれる。

そこで作り話しをすればする程、あとでバレたら大変な事になる。


名前の知らなかった顔だけ知ってる同級生って感じで接する?

ユンは絶対自分から変な話はしない。

根掘り葉掘り聞かれる事態は避けるはず。

この作戦は上手く行きそう。


あ、そもそも、私に挨拶すらしないんじゃ無いか?

あんな最悪な別れ方をしたのに、普通になんて接してくれるはずない。

うんうん。そうだ。

絶対に赤の他人、知らない人で通すはず。


考えるだけムダだったかも…。


問題はキャプテン…。

まぁ、彼は雰囲気で分かってくれるだろう。



――――――――――――――――

家に帰りお風呂でスキンケアを入念にした。

ヘアーカラーのリタッチは先週したばかり。

プリン状態でなくて良かった。


お風呂から出てもスキンケアは怠らない。

家にある誕生日に貰った1番高いパックをする。


(テヨンありがとう!)


――――――――――――――――

撮影1日目


あまり眠れなかった…。


普段の30分前にベッドから出た。

今日のメイクはどんなのにしよう?

お昼休みメイク直しするから使った物は忘れない様にしないと。


考えに考えて、以前ハナに教えて貰ったメイクを自分の顔に施した。



『男を惑わすアンニュイメイク』



これが、上手くいっていたらハナに


『アミ、このメイクはどうゆう事なの?』

と言われるだろう。

言われなかったら、メイクは失敗だ。


――――――――――――――――

1時間目はウソクとハミンは違う授業に出ているので、ハナと2人。



「おはよ。は?」


「あ、おはよ。」


「アミぃ?このメイクはどうゆう事なの?」


(よし。)

心の中でガッツポーズをした。


「まさか落としたい男でもいるの!?」


「そんな訳ないでしょ。」


「じゃあ、メイクの理由言いなさい。」


「昨日会ったバスケ部に、色の白い不思議イケメン居なかった?」


「居たぁ! 居た。間違いなく居た。肌が綺麗過ぎて見惚れたわよ。知り合い?」


「その人だよ…。忘れられなかった人。」


「マジ!?」


「はぁ。同姓同名の違う人だったら良かったのに。」


「まだ…好きなの…?」


「違うよ(笑)せめてキレイな状態で再会したいっていう、あがき?(笑)」


「あのさ、私ね?いつも、アミの事カワイイ♡って思ってるわよ?だけどさ、今日…」



「めちゃくちゃカワイイよ!?」



「ホント?(照)」


「うん。ウソクくん気をつけなさいね。」


「う…。 で、でもさ、撮影中って私たちめっちゃダサダサじゃん?(苦笑)」


「動きやすくて破れても良い、スエット上下な(笑)」


「可愛くしても、服で終わるよ(苦笑)」


――――――――――――――――

「今日アミちゃん居て良かったよー。この荷物はさすがに3人じゃキツかったね。」


「もう大丈夫なの?」


天使のハミンが聞いてくれた。


「全然大丈夫だよ。ありがとね。」


「さぁ、行くか。」


・ 

――――――――――――――――

体育館の玄関を入って上靴に履き替えた。

バッシュのキュッキュッという音とボールのドリブルする音が響いている。


懐かしくて安心する音。



心臓が痛くなるほどドキドキする。

恐る恐る覗くと、見つけた…




色の白い懐かしい好きだった人の顔を見つけた。


少し長めの髪は茶色に染められていて、両耳にはシルバーのフープピアスが1つずつ付いていた。

高校生の時には想像もつかない姿だった。

新しいユンの姿を知る事が出来て、嬉しい様な切ない様な、何とも言えない気持ちになった。



体育館の中に入った所で、4人で挨拶した。



「よろしくお願いしまーす!」



練習を中断して

「よろしくお願いしまーす。」

と沢山の声が返って来た。



私はずっと下を向いたままで顔が上げられなかった。

走って来る数人の足音が聞こえる。

主要メンバーが駆け寄って来たに違いない。

余計に顔を上げられなくなった。




私の視界に数人の足が入って来た。

真ん前に、さっき見たバッシュとバスパンが目に入った。

足は真っ白だった。



(ん?この雰囲気なに??)



私の周辺の時間が止まった様な、戸惑っている空気がする。

全員の雰囲気がおかしい。

思わず顔を上げた。



「!!!?」



ユンが、私の顔に釘付けになりながら

目は大きく見開き、口があわあわと動いていた。


想定していたリアクションとはかけ離れ過ぎていて、私も一緒に驚いてしまった。


わずか50センチの距離で

ユンと私はしばらく見つめ合った。

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