第34話 能力祭開幕!
能力祭当日、康輔の予感は当たってしまい、晴天とは程遠く離れた、暗雲が立ち込めていた。
「ここが、能力祭の会場か......」
俺は、リン、萌音、氷華と一緒に能力祭の会場に来ていた。
鏡花は家のテレビで見るらしい。まぁ、あぶねぇよな。どこからでも強化を狙えてしまうこんなだだっ広い会場なんかに鏡花をいさせることとかできねぇか。
「すごい熱気ね」
「そうだねぇ〜」
なんだか、氷華は肩の力が落ちすぎてないか?
これから戦わなきゃならんてのに........。
ちなみに優勝を1番切望しているのは、校長である。
この能力祭で優勝することはつまり、全高校の中で1番強かったってことになる。
そうなったら、来年はたくさんの新入生が入る可能性が高くなる。
逆に、初戦敗退なんてしてしまったら、もっての他だ。
だから、これは能力者の戦いであると同時に、校長....学校の戦いであるのだ。
「初戦敗退だけはしないようにしよう....」
萌音は推薦されていないので参加はせず、観戦するだけだが、この中で1番緊張感を持っているようだ。どういうことなんだ全く...........。
「まだ、開始まで時間あるし、飲み物でも買ってくるか」
「賛成ね」
「いこ」
「そうしよっか」
俺らは、自販機があるところまで移動した。
「なぁ、リン」
その途中で、俺はリンに話しかける。
「どうしたのかしら?」
「......全力で手加減しろよ」
「ええ」
....この大会のルールとして、殺しは禁止のルールとなっている。まぁ、正当防衛はそもそも法律でOKとされているから、正当防衛での殺しはやむを得ないがな。
しかし、リンは正当防衛を軽く超えるほどの殺し方ができてしまう。
「せめて、気絶する程度にとどめておけよ」
「ええ、わかってるわよ」
流石に、リンも気絶程度で済ませることはわかっているのだが、どうしても心配なのである。
なぜならリンは———。
「何してるの2人で?飲み物を買わなくていいの?」
「ああ、すまんすまん。ちょっとな」
「「??」」
氷華と萌音は同時に首を傾げた。
「んーとどうすっかなぁ....エクレリでいいっか」
俺は100円玉と50円玉を入れ、エクレリのボタンを押し、受け取り口からエクレリを取る。
「やっぱりこうにぃってエクレリが好きだよねぇ〜」
「エクレリ?」
「飲み物の名前だよ。エクレリアスって言ってね。こうにぃのお気に入りなんだよ」
「まぁ、なんだかんだ飲みやすいし。健康にいいし」
「よく飽きないよねぇ〜」
ここで氷華が参戦。ややこしくなりそうだったので、俺はそそくさを会場に向かう。
「あっ、ちょっと待ってよこうにぃ!」
3人が俺の後を追いかけてくる。俺は構わず、会場に向かった。
会場の観客席に向かうと、なぜだか周囲がザワザワとし始める。
そして俺らをじっと見ているのだ。
「あれって...ランクBの氷華よね...」
「あれが氷の女王....」
などなどの声が聞こえてきた。
氷の女王....?
え?どっちの意味の氷の女王だ。
塩対応の方か、能力の方なのか。どっちでも当てはまるからわかんねぇ....。
「なぁ、氷華」
「うん?」
「お前って、二つ名が氷の女王なのか?」
俺は意を決して聞いてみた。
「うん」
ちなみに二つ名とは主に能力者につけられる、あだ名のようなものだ。
それは世間で呼ばれ始めた名前...でも二つ名になることもあるし、友人が決めた名前が二つ名になることもある。つまりは主に本人が気に入った...名前が二つ名になる。
「それってお前が気に入ったってことか?」
「うん。まぁ、決めるのもめんどくさかったし、それでいいかなって」
「適当だな...」
まぁ、氷華らしいといえば氷華らしいか。
「それではみなさん!能力祭開始まで残り5分となりました。選手の皆さんは控え室でスタンバイしておいてください!」
というアナウンスが流れた。
「そろそろ行かなきゃならんみたいだ」
俺らは萌音に別れると、控え室へ向かった。
「もう少しで開幕か....」
能力祭。俺は一生出ることなんてないと思っていた。
俺は開花していないとはいえ、無能力者に変わりないと思っていたから。
そして、能力祭は現段階では高校しかない。
だから、卒業までに開花する気配がなかった俺は出れることはないと思っていた。
しかし、今俺は極夜学園の代表として、選手として控え室にいる。
そんな、嬉しさ、感動。どちらとも受け取れる思いを自分は噛み締めていた。
そして、
「皆さん。能力祭が始まります!選手の皆さんは、アリーナ出入り口付近まで来てください!」
と、控え室にアナウンスが響く。
「んじゃま、行くか」
そして出入り口に向かう。そこには、他の高校代表がいた。
「さて皆さん!選手の準備が整いました!それでは準備はいいですか?能力祭!開幕です!!」
そう言って、大きめのクラッカーの音が鳴った。
そして、そこから歓声の声が響く。
「それではエントリーナンバー1 」
そう言って、高校の名前が呼ばれるのと同時に、代表の生徒がアリーナへ歩いていく。その都度、歓声が湧き上がっていた。
そして.....
「エントリーナンバー30 極夜学園!」
俺らの高校が鳴った。
リーダーである、俺が先頭になって歩く。
歓声が湧き上がる。今までで1番大きいのではないかと思ってしまう。
しかし、そんなことはないのだろう。きっとみんな同じだ。
「それでは全高校のエントリーが終わりましたので、これからルール説明を始めます!」
俺らは静かに司会者の話を聞く。
「能力祭はトーナメント式になっています。しかし、能力祭の特別ルールとして、能力祭にエントリーしている高校ごとにリーダーがいます」
極夜学園のリーダーは俺だ。
「そのリーダーが倒されたその時、その高校はその時点でゲームオーバー。その後にその高校の代表生がいる場合、その選手は強制的に敗退となります」
......責任が重大すぎる。
「なので、リーダーの人はその高校で1番強いにしておきましょう。私は今言いましたので、悪しからず」
それから、自分はリーダーの目印になる、バンドをつけた。(受付にさっきもらった)
「それでは、トーナメントはルーレットによって事前に決めさせていただきました。結果がこちらになります!」
そう言って、司会者の人は布を被せてあったボード?の布を取る。
ボードを見ると、俺らの高校が最初に戦うのは5戦目で、リンが初陣を切ると言った内容だった。
「まぁ、いいんじゃない?」
氷華はそういった。
俺もそう思う。力加減を知ってほしいってのがあるからな。まぁ、本当に心配しすぎなだけだとは思うが.......。
そして、4戦が終わり、リンの番へとなった。
「それじゃ、行ってくるわね」
リンはそう行って、リンは選手専用観戦席をひとっ飛びで軽々乗り越え、リングへ着地した。
その光景を目にした観客は目の色を変えて、歓声を上げた。
「さて。一捻りさせてもらおうかしらね」
1人のサキュバスは妖艶な笑みをこぼしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます