第21話 優しい(?)無慈悲


「ちょっと待って?」

「今度はどうした?」

「仲間になったのに....なんでカシルさんはこっちの世界に来てないの?」

「........」

「なんで目を逸らすの?」

「それはな......俺がこっちに帰還する時に遡るんだが....」


ー帰還する数日前ー

「そろそろあっちに戻るとしますか」

「そうねぇ」

「ええ⁉︎康輔、自分が"ポータ"覚えるまで待っててよ?」

「....ウンワカッテルヨ」


次の日、我慢できなくなった俺は、カシルを置いてリンとこっちの世界へと帰ってきた。



「普通に、康輔ひどすぎでしょ」

「しょうがないだろ。人数が多いと何かと不便なんだよ」

「だからって.....」

「まぁ、私もカシルちゃんには悪いことをしたと思ってるわ」

多分、"ポータ"は覚えたんだろうけど、どの世界に行けばいいかわからないんだろうな。来られたら来られたでぶん殴られるのが目に見えてるんだけども。

「まぁ、いい時間だし、俺らはもう帰るわ」

時計を見ると、午後7時を針は指していた。

「明日も来てね」

「ああ」

「またね〜」

リンが鏡花に手を振っている。

それに同調して俺も手を振る。

そして、屋敷を後にした。


「カシルちゃん、今頃どうしてるのかしらね」

「ワンチャン、いろんな世界に行ってるんじゃね?俺らのいる世界に行けるまでしらみ潰しに行ってる気がする......」

「確かにありそう.......」

「まぁ、とりあえず普通に過ごしてりゃいいでしょ」

「そうね」



「おかえり〜」

「たでーま」

俺たちを出迎えてくれたのは萌音だった。

「萌音ちゃん、今日は一緒にお風呂に入らない?」

「いいですね!」

そう言って、2人は風呂場に直行していった。

俺ん家の風呂って何気に大きいんだよな....。

4畳ぐらいの大きさだからなぁ....風呂場で。

「それにしても、萌音って本当にいい子だよなぁ」

俺らのことをいつも待っててくれるなんてな....。

「最近戦ってないから鈍るかもしれんし、訓練でもするか」

俺は、帰って来たのも束の間、すぐに外に出た。


「"ブリザード・アクス"!!」

足元から氷の棘を発現させ、木に命中させる。

「凍りつけ......‼︎‼︎」

その瞬間、氷の棘が刺さっている木が凍りついた。

「..... ふぅ....」

「何それ」

不意に声をかけられた。振り向くと、

「氷華?」

そこにいたのは氷華だった」

「何それ」

「ああ、これは"ブリザード・アクス"って言ってな、氷の棘を対象に刺し、刺さった相手を凍りつかせる魔法だよ。中級魔法」

「強そう」

「なんなら、氷華にもできるんじゃないのか?」

「やってみる」

氷華はそういうと、凍りついていない木の方に立ち、目を瞑った。

そして、深呼吸をしたかと思ったら、氷華の足元から氷の棘が発現した。

そして木に命中したところまでは良かった。

しかし、凍りつかせる寸前に氷の棘が消えてしまった。

「もう1度....」

今度は、氷の棘に意識を集中させたのだろう。

今回では氷の棘は消えなかったものの、中途半端な凍りつき方だった。

「難しい....」

「俺も難しかったからなぁ」

まぁ、この上の"ブリザード"っていう上級魔法もあるけど.....まぁ言わんでいいか。

「もう1度.....」

氷華は何度も挑戦しているが、なかなか上手くできていない。

それにしても、この魔法、既視感があるような気がしてならないんだが....。

気のせいか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る