第26話 キノコのダンジョン
【君⭐︎公式情報】
キノコのダンジョン
「君☆(きみほし)」シリーズで重要な役割を
◇□◇□◇□
「ユーファネート様。いつでも出立できます」
「ご苦労様。セバスチャン。キノコのダンジョンへ出発進行ですわ!」
セバスチャンの声に、希は頷くとミスリル装備を身にまとって馬車へと乗り込む。そして窓を開け一緒にいかないのかとギュンターへ問いかけると、後で向かうと返ってきた。そしてギュンダーは馬車に乗り込もうとするセバスチャンを確保すると少し離れた場所へ移動する。
「いいか、セバス。絶対に魔石爆弾は使うなよ! どうしてもって言うから少し残したが、あれだけでもスタンピードに対処できるレベルだからな」
「ご安心ください。ギュンダー様。至上なるユーファネート様の御身に危険が及ばない限りは使用いたしません。少しでも危険と判断した場合は容赦しませんのでサクッとダンジョンを消滅させます」
「だーかーらー! キノコのダンジョンだって! 安心安全超お手軽。赤ん坊からお年寄りまで、なんならユーファでも攻略出来るんだよ」
「お嬢様が赤ん坊よりも劣ると?」
「そんなことは言ってないだろ! 言葉のあやだよ。どこに怒りのスイッチがあるんだよ」
「それはようございました。ユーファネート様に出来ないことはございませんので。危うくギュンダー様を調きょ……教育するところでした」
「怖えよ! 今、調教って言おうとしただろ!」
「そんな滅相もありません。あの、そろそろよろしいでしょうか? ユーファネート様を恐れ多くもお待たせしておりますので」
「だったら、アレは使うなよ! 絶対だぞ!」
「それは使っていいとの振りで?」
「なんでそうなるんだよ! だから使うなって!」
セバスチャンとギュンターとのやり取りを眺めていた希だが、湧き立つ心はすでにキノコのダンジョンへ向かっていた。キノコのダンジョンは、主人公をサポートするために現れる。
魔物を討伐してレベルを上げ、当面の食材(キノコ)を入手し、ダンジョンコアを破壊しない限りは永続的に恩恵を受けられる。
「
「どうかされましたか?」
「いえ、なにもないわよ」
ギュンダーとの会話を終えたセバスチャンが馬車に入ってきた。希の表情が
「僕ではお役に立てないでしょうか?」
「う゛っ!」
セバスチャンに心配をかけさせないように返事をした希だが、かえって心配させてしまったようだ。目を潤ませ片膝をついて見上げてくるセバスチャンに希の母性本能が全開になる。
「もう! なんて健気で可愛い子なの。すごく役に立ってくれているわよ。だからそんな母性本能をくすぐるような表情を止めて――。いや、やっぱりそのままのセバスチャンでいいわ。もの凄くキュンキュンして推したくなるもの。ああ、私の役に立ちたいのよね。だったセバスチャンが淹れた紅茶が飲みたいわ」
「紅茶ならお任せください! 僕がお役に立てますね!」
「ふふっ。もちろんよ」
優しく抱きしめ頭を撫でていると、セバスチャンが落ち着きだした。しばらく柔らかなセバスチャンの感触を満喫していた希であったが、馬車が動き出したので紅茶を求める。
さすがは侯爵家と言われても納得出来る馬車であった。通常よりもかなり広く作られており、ミニキッチンが備えられ、魔道具で揺れない特別仕様にもなっていた。紅茶が零れず、希が優雅に飲めるほど安定している。
「馬車が揺れないのは本当にありがたいわね」
「旦那様が王都から一流の魔道具業者をお呼びになっておりましたので」
ユーファネートの父親であるアルベリヒが「可愛いユーファが体調を崩したらどうするのか!」と王国でも数台しかない馬車である。まさか知識チートしなくとも父親の過保護で揺れない馬車が実現されるとは思わなかったが、お陰で希は優雅に紅茶を飲めていた。
「キノコのダンジョンを直轄出来たら、食生活を豊かにしたいわね」
「さすがはユーファネート様でございます。食生活向上まで考えてられるとは。そのようなことは料理人に任せればよろしいですのに、ご自身で考えられるとは感服でございます。本当に
「なんて?」
目を輝かせているセバスチャンに思わず聞き返す希。頬を赤らめ自分を見つめるセバスチャンに
◇□◇□◇□
「お嬢様。到着しました」
御者の声でセバスチャンを撫でちち夢の世界にいた希がうっすらと目を覚ます。電車に乗っているような緩やかな振動はなくなっており、到着してしばらく時間が経っているようであった。
「気を使ってくれたのね。ありがとう」
至福の表情で自分の寝顔を見ていたセバスチャンに気付いた希は少し顔を赤らめながら、装備をチェックして馬車から降りた。てっきり途中休憩を入れると思っていたのだが、優秀な馬車と御者のお陰で夜通し走り続けたようであった。
「近くの町には寄らなかったの?」
「侯爵家の馬車が先触れも無しにやってくると混乱を招くと思いまして。ユーファネート様もぐっすりとお休みでしたので早めの到着を指示しました」
目の前のダンジョンを見上げ素朴な疑問を投げた希に、セバスチャンが恭しく答える。
「ああ、そうなのね」
「一刻でも早く到着したいとおっしゃっておりましたので。私の対応は問題ありませんでしたでしょうか?」
「もちろんよ。全幅の信頼を置いているのだから問題ないわ」
この1年でセバスチャンは成長しており、将来を期待される人材となっていた。少しばかりユーファネートへの忠誠心が振り切っているが、紅茶や剣術だけでなく、執事としての技術やスケジュール管理だけでなく、希に関する近隣への対応も任されつつあった。
「でも、帰りは近くの町に寄るわよ。お父様とお母様にお土産買いたいから」
「かしこまりました。先触れを出しておきます。ユーファネート様、こちらをお持ちください」
希に手渡されたのは魔力を弾丸のように打ち出す光属性の武器であった。アルベリヒが娘の為にと王都のオークションで競り落とした古代文明の魔道具であった。魔力を消費するそうだが、
「お兄様は?」
「ギュンター様なら先ほど到着されました。あちらでお待ちです」
「それじゃあ、私たちも向かいましょう。あなたは馬車をお願いね」
希は、お金を渡すと御者に留守番を頼んだ。夜通し走ってくれたお礼として私のだが、貴族がそのような事をするのは珍しいらしく、御者は嬉しそうに受け取ると村にある酒場兼宿屋へと向かっていった。
そして希はセバスチャンや護衛騎士達を連れだってキノコのダンジョンへと意気揚々に向かうのであった。
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