異世界ファンタジーを読むのが苦手

 はい。非常に唐突なのですが、私は異世界ファンタジーを読むのが苦手です。

 何を言ってるんだ?――という感じですよね。


 順を追って説明いたします。


 まず、この〝苦手〟とは〝読みたくない〟という意味での苦手ですね。

 ですので読むのは好きです。決して〝嫌い〟ではございません。


 私自身も異世界ファンタジーを書いておりますし、異世界ファンタジーは大好きです。なのですが、異世界ファンタジーを読むのが苦手なのです。


 それはなぜか?

 まさに〝私自身も異世界ファンタジーを書いているから〟です。


 ◇ ◇ ◇


 これには前回〝真世界シリーズの裏話:4〟でも申しあげた、〝私は名前を考えるのが苦手だ〟という部分が大きく絡んでまいります。


 そうなんです。異世界ファンタジーを読むと、時おり登場人物などの〝名前が被る〟ことがあるんですよね。


 世界観や設定などが丸被りするなんてことはあり得ないんですが、名前だけは割と被ってしまいます。〝エクスカリバー〟などの有名なものならば、被ったうちにも入りませんが――ちょっとオリジナル感を出して名づけたものや、頭を捻ってようやく絞り出したものなどが、もろに被ってしまうと悲惨です。


 別にどっちが先だの、パクっただのパクられただのと、そういう話を完全に抜きにしても、被ってしまうとなんだか気まずくなるんですよね。特に大好きな作品と名前が被ってしまうと、自作に劣等感すら覚えてしまいます。



 さらにツライのが、〝まだ登場させていないプロット段階の名前が被ってしまった〟場合なんですよね。プロット段階とはいえ、作者である私自身の頭の中では、すでに〝その名前〟で物語が、ずっと先の先まで進行しています。


 ですが、うっかり同名の人物が登場する作品を読んでしまった場合「あ、被ってしまった。出す前に変えた方がいいのかな」と感じてしまうわけなのです。


 しかし、そうすると問題がありまして。


 すでに〝被った名前〟が付いているキャラは、私の中では〝その名前〟でなくては存在が揺らいでしまうんですよね。急に変更してしまうと「誰だこいつ?」状態になってしまうのです。


 その結果、名前を覚えられなくなったり間違えたり、昔の名前に誤字ってしまったり。最終的に愛着がなくなってしまったりと散々です。


 ◇ ◇ ◇


 実はミストリアンクエストの第2章と第3章で、拝読中の作品の人物と名前が被ったキャラがおりまして、初登場時に急遽ちがう名前に変更したのですが――見事に「誰だこいつ?」状態になりましたね。もちろん名前も間違えました。


 さらに申しますとミストリアンクエストそのものも、最初は〝ミスティリアクエスト〟という名前だったんですよね。神の名前もミストリアではなく、ミスティリアという名の女神でした。


 ――なのですが、ミストリアンクエストを投稿する前に、ミスティリアと付くゲームが配信されてしまったので、止む無く変更してしまったのです。


 タイトルというガワに留まらず、神の性別が変わったことで、色々と設定の全面的な見直しまでも余儀なくされました。元々中性的な設定だったのが救いですね。


 このせいもあり、ミストリアンクエストを最初に投稿した際には、なんとなく収まりが悪いというか、しっくりこないタイトルだったんですよね。


 ミストリアン? エイリアン? エイドリアン? って。


 今では馴染んでおりますが、これは読者さまが「ミストリアンクエスト」というタイトルを、声に(文字に)出して呼んでくださったおかげなんですよね。名前というものは、自分以外の他人から、それを呼ばれた時点で命を持ちます。


 コメントでタイトルを呼んでくださり、さらに主人公や作中人物の名前を呼んでくださったからこそ、キャラは命を得たのです。


 いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。


 ◇ ◇ ◇


 名前を決める際には二通りのパターンがありまして、一つは作者である私が名付けるパターンと、もう一つは登場人物自身が名乗るパターンですね。このうち後者の場合は、被ろうがどうしようが変更しません。その名前でなければいけないからです。


 登場人物自身が名乗るパターンは、キャラクタの命名法則が定まっている人たちですね。具体的には主人公やヒロイン、私の別作品からの引用勢、エルフ勢、ドワーフ勢、古代人勢などです。彼らは法則に従って名乗っているので、絶対にその名前でなくてはならないという信念があるのです。


 また、ミストリアンクエスト自体が、名前というものを重要な要素として描いておりますからね。物語上、簡単に変えることができない傾向にあります。



 逆に私が苦労して名付けた場合は、被ってしまうと迷いが生じてしまうんですよね。もしも私が足跡をつけて、その作者さまが読み返しに来られた場合などは、かなりヒヤリとします。別にパクったわけではないのですが、なんか気まずくなるんですよ。――どう思われてるのかなって。


 実はミストリアンクエストの第5章にて登場予定の重要キャラが、拝読中の作品の登場人物と被っておりまして。さらに私自身、そちらの作品のキャラが好きで、コメントでも何度か話題に挙げたりもしていたんですよね。


 なので第5章に入る前に、別の名前を考えるべきかとも迷ったのですが――どうも、どの名前もしっくりこない。元々〝花〟から取った名前なので、誰かのオリジナルというわけではないのですが、私が使うとどうしても気まずくなってしまうなと。


 ありふれた名前なので、別に使っても問題ないとは思うのですけどね。セバスチャンといえば執事、というように、メイドといえばこれ、といった名前です。私だけのイメージなのかもしれませんが。


 関係ないのですが、ピエールといえば細い口髭がカールしているイメージですね。母親世代にも「ピエールみたいなヒゲのやつ!」と言えば通じるので、何らかの共通認識が存在するのでしょう。


 ◇ ◇ ◇


 あと、まだ読んではないのですが、とても気になっている作品がありまして。


 今のカクヨムはプレビューが表示されると思うのですが、あそこにチラッと、今後私が登場させる予定の名前が見えてしまったんですよね。


 ――はい。残念ながら読むことができませんでした。


 その名前を私も登場させたあとならば、もしかすると読むかもしれませんが。今読んでしまうとどうしてもね。パクッたと思われるのも嫌ですし。見ただけであって、まだ読んでおりませんのでセーフということで。


 これ以上、私の少ないレパートリを減らされるのはキツイです。


 一見すると名前が長く、覚えづらいキャラの方が、こうしたリスクを回避するには最適なのかもしれませんね。リズムが良くて長い名前の方が記憶に残ったり、逆に覚えやすかったりします。


 逆に、たとえばゲームの〝おまかせ命名〟ボタンなどで生成される名前を付けてみても、なんか愛着がわかないんですよね。単に〝被らない・変わった名前〟ならなんでも良いというわけにはいかないようです。なかな【カニ】難しいですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る