第14話

 「そういうことだ」

「その……攻撃方法もわかっているのですか?」

「うむ。ニンゲンたちは四つの属性のうち、ひとつを持っているゆえ、相対する属性をもって攻撃するとよいという。攻撃されて滅した魔物は、魂となり元の星域にもどると申されていた」

 

 「その属性というのが……」

「そう。あたしたち」

火と風と水と地。

 

 「火属性は水属性が消す。風属性は地属性が邪魔する。水属性は風属性が吹き散らす。地属性は火属性が焼いて固め、粉砕する。簡単に言うとこんなところだ」

四属性、それぞれに相性があるのね。

 

 四人の自然神が呼ばれていた理由は、このため。

でも確かヘイスト様は『あたしたちの力を組み込んで』っておっしゃってたわ。

それって、どういう方法をとるのかしら?

 

 「それには神具を使ってもらう。これを左の手にはめよ」

スノウクロア様が空中から何かを取り出し、私に手渡してくれた。

それは五色の玉が連なったブレスレット。

青・白・赤・黄・緑

それぞれの玉は透明で、キラキラと光っていた。

言われたとおりに左手首にはめると、吸いつくようにぴったりと手首のサイズにおさまった。

 

 「きれい……」

「その玉それぞれが神のコアで作られている。神々とつながっているゆえ、そなたの念じに応じてパワーを送ってくれるのだ。ただし送られた力に耐えられなかった場合は」

「耐えられなかった場合は?」

「そなた自身がつぶされてしまう」

 

 (アイガータとならまだしもヘイストでは負けてしまう)

メールス様に言われた言葉を思い出す。

「わたくしは『地』ですもの。ヘイストのようなとは違いますわ」

 

 「だれが暴れ馬ですって?あんたはただってだけじゃない」

……また言い争ってる。

だけど、確かに火のほうが激しいってイメージはあるわ。

でも、風は?水は?

どちらも激しくなることがあると思うんだけど。

 

 「かれらはフェミニストだから、オンナノコには優しいと思いますわ。無理なく使えるよう、最初は手加減して力を送り込んでくれるでしょう」

アイガータ様が涼しい顔で言った。

「それぞれの玉は、どの神とつながっているのですか?」

ユウリが聞いた。

 

 「まず緑色がスロオイアス、黄色がアイガータ。赤色がヘイストで白色がケアスオーノ。そして青色が儂だ」

スノウクロア様が説明してくれた。

 

 全能神スノウクロア様まで!

そんな……畏れ多いというか、私なんかに使いこなせるの?

 

 「ブレスレットを手にできた時点で、あんたには資格があるということよ、ユーリ」

ヘイスト様が言った。

 

 「そうですわ。ちゃんと自信をお持ちなさい」

アイガータ様も同意する。

「でも……」

 

 「気にしてるようだから言ってあげるけど、資格を持たないものがブレスレットを手にしたら、その瞬間に消え去っているわ」

「わたくしたちの核で作られているということは、そういうことなのですわ」

 

 「あとは、どう発動するか……だが」

スノウクロア神があごに手を当てて考えている。

「既定の位置に装着できたということは、発動する準備は整っているはずなのだが」

 

 「そうですわね。刻印も光を増しておりますし。使えるとは思うのですが」

アイガータ様が言った。

 

 「ふむ。ためしにエアと唱えてみよ」

「?……空」

そのとたん、左手のブレスレットの青い玉が強く輝きだした。

同時に熱い、なにかがブレスレットから体の中に入り私を満たしていく。

その“なにか”が、どんどんふくれあがって……。

これ以上は、無理!

 

 「ユーリ、あの岩をねらえ」

スノウクロア様が言った。

 

 どうやって?

 

 「あの岩ですか?」

私はさっき私が変異させたと言われた岩を指差した。

 

 そのとたん。

ピカ───ッ!!!

眩しい光が指先から飛び出し、岩に命中した。

 

 ガッ!

 

 光が当たった岩は……こなごなに砕けてしまった。

 

 「え?」

私は砕けた岩と右手の人差し指とを見比べた。

なに?何が起こったの?

 

 「すごい!すごいよ。ユーリ」

ユウリが、笑顔で拍手をしてくれた。

 

 「私が、やったの?」

「そうだよ。見てて、ぼく、びっくりしちゃった」

 

 「これは、驚いたな」

「ええ。想像を超えていますわ」

 

 スノウクロア様とアイガータ様がしげしげと私を見ている。

「スノウクロア様、いったいの力を送られたのですか?」

「儂はほとんど送っておらぬ……どのくらいの器かわからぬゆえ、ほんのわずか岩が動くかどうか程度を送ったはずなのだが」

 

 「お取り込みのところ、失礼いたします」

誰かの声がした。

扉から入ってきたのは、ロケイース様だった。

 

 「祈りの間にいましたところ、こちらから波動を感じましたので、伺いました」

「おお、ロケイース。いや、ユーリに発動の実験を行なおうとしたのだが、どうも儂が送った以上の力が発動したようでな……祈りの間までも届いておったか」

 

 「さようでございます。ここより一番遠い場所ゆえなにごとかと。……ユーリを視てもよろしいでしょうか」

「たのむ」

 

 ロケイース様が私に近づく。

小柄な神様だと思っていたけれど、思った以上に小さいわ。

もちろん私よりは大きいけれど。

 

 ロケイース様が私の顔をのぞきこむ。

フードの下の暗がりに光る二つの目。

その目がどんどん大きくなって、私は飲み込まれるような気がした。

 

 ふと、ロケイース様が目をそらして、私から離れていった。

「スノウクロア様。この者、ユーリは強い増幅器ブースター能力を所持しているようでございます」

「そんな能力を持っているのか」

 

 「はい。さらに変異ミューティション能力も」

「うぅむ。……小石を岩に変異させたのは、その能力か」

「おっしゃるとおりかと存じます」




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