第30話
現在、僕達はファーブルをライズに任せ、アイドル達を連れてフェルベールの街に来ている。
ギルドを通して宣伝もしていたので、既にいつもの広場には沢山の人達がいる。
何をするのかと言えば当然ライブなんだけど、テレサが亡くなってからする初めてのライブだ。
当然だけど、僕を含め、皆本調子ではない。
でも、僕達はこの試練を乗り越えなければならない。
いつもの様にステージを召喚する。
BGMと共にアイドル達が入場すると、歓声と入り混じってザワザワと
テレサが亡くなった事をどこかで聞いたのだろう。
そして、ライブでいつも活躍していたテレサが入場して来ない事で、確信に変わり、
そんな感じか。
いつも大盛況だったけど、今回ばかりは失敗しても仕方がない。
やる事に意味があるんだ。
ファーリーとミルアがセンターに立ち、曲に合わせて歌い始める。
練習をしていたのか、今回はちゃんと皆に合わせて控え目な演出だ。
控え目と言っても空を飛んだりしないだけで、キレのいい動きでファンを楽しませてくれる。
ミルアもファーリーの周りをクルクル回ったり、他のアイドル達との連携も取れている様子だ。
明るい曲から始めたお陰か、ファン達の
それから三曲歌った後、アサギが登場する。
他の皆はフェードアウトして、アサギだけが残った。
アサギは演説した時と同様に、弦楽器を用いて歌い始める。
僕が前に音を合わせたのを覚えているのか、今回は弦楽器の音以外にも沢山の音の入った曲が流れ出している。
テレサの最後のステージを聞いて浮かんだ曲なのか、この歌は大輪の花が咲き誇る丘をイメージした曲だ。
花が枯れても種を残し、また新しい花が咲く。
アイドル達の背中を押す様な……そんな風に感じさせる曲だった。
というか、意識の共有でそう言う曲なのだと伝わって来てしまう。
思わず目頭が熱くなった。
アサギがステージを下りると、再びアイドル達がステージへと上がる。
センターはマリルゥ。
満面の笑みだと……?
しかも、客席に向かって「皆げんきー?」と聞いたりしてやけにテンションが高い。
いつの間にこんなにアイドルとしての意識が高まったのか謎だけど、盛り上げてくれるのは凄くありがたい。
マリルゥの曲が始まる。
ファーリー達の曲からヒントを得たのか、最初にやったエルフの民謡とはかけ離れたアイドルらしい曲。
振り付けもバッチリ覚えていて驚く事ばかりだな。
ファンからも曲の合間などに凄い歓声が轟く。
2曲やった後、最後にはポーズもバッチリ決めてフィニッシュ。
完璧なアイドルを見せてくれた。
そして、アイリスとセシリアがセンターにたつ。
「皆さん、お気づきだとは思いますが」
「テレサは、ここにはいない!」
「私達二人は、テレサさんに沢山の事を学び」
「沢山遊んでもらった!」
「私達の尊敬するテレサさんは」
「私の……大好きなテレサは」
「「永遠のアイドルになりました!」」
アイリスもセシリアもちゃんと前を向いているけど、頬を伝う雫は止まらない。
堪えきれないのか、しばらく沈黙が続く。
ファン達もその空気を感じ取り、すすり泣く声が聞こえる。
「永遠のアイドルになったテレサさんに捧げる、私達の歌を聞いて下さい」
泣き声まじりにそう言ったセシリアは、曲が流れるとアイリスと一緒に呼吸を整え、一緒に歌い始めた。
テレサに向けて、感謝の言葉がいっぱいの歌。
そして、二人が成長した姿を見に来て欲しい。
そんな思いを込めた歌だった。
そして、そのまま次の曲へと移行する。
この曲はテレサがライブでもよく歌っていたテレサの好きな歌。
皆でその歌を唄う中、アイリスは堪えきれずに大泣きしてしまい、セシリアに抱きしめられる。
セシリアも涙を流しているけど、鳴き声交じりに歌う。
ミルアも貰い泣きしながら種を頭の上に掲げ、白い花を咲かせた。
意識を共有しているせいで、皆にアイリスとセシリアの悲しい気持ちが伝染する。
僕もミルアの花を見た瞬間、
悲しみが極まり、アサギも含めたアイドル達はステージ中央に集まり、互いを慰めるように抱きしめ合う。
それでもテレサの好きだった歌は途絶える事無く聞こえて来る。
ファン達が唄ってくれているんだ。
ライブで何度も聞いたから皆覚えていてくれている。
テレサ……これからも君は、ずっとずっとアイドルだ。
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