第20話
久しぶりにダンジョンの街、フェルベールへとやって来た。
目的はライブと、ファーブルで定期的にライブを開催すると言う宣伝の為だ。
早速、街一番の広場でステージを召喚すると、ぞろぞろと人が集まり始める。
そして、ステージに音楽が鳴り響き、テレサ達が登場すると大きな歓声が聞こえてくる。
ずっと練習を続けてくれていたのか、不慣れだったアイリスとセシリアも随分と様になっている。
その様子をファーリーとマリルゥは僕の横に並んで眺めていた。
ミルアはファーリーの頭の上に居る。
「パパ、なんだか元気が出て来るね!」
「そうだろう。
ファーリーもあのステージに立ちたい?
ファーリーなら、きっと良いアイドルになれるとパパは思うよ」
「本当? それじゃあ、ファーリーもアイドルになりたい!」
「ファーリーがそう言ってくれてパパは嬉しいよ。
それじゃあ、この契約書にサインして」
契約が成立したのでファーリーはアイドルになった。
年齢は変える必要は無さそうだし、服装だけ今ステージ経っているアイドル達と揃えてみた。
「ねえ、人間さん!
ミルアもアイドルやってみたい!」
ええ?
手の平サイズのミルアがステージに立っても見えないんじゃないか?
とは言って見たけど、新しく妖精のファンも着いてくれるならそれも悪くないと思い至り、ミルアにも契約書にサインをしてもらう。
「よし、ミルアも契約成立だ。
それと、今度からは僕達の事は人間さんじゃなくて、ちゃんと名前で呼ぶように。
僕の事はマスター、もしくはプロデューサーと呼んでくれて構わない」
ミルアは元気よく「ありがとう人間さん」と言って、ファーリーと共に空高く舞い上がった。
ステージの演奏が止まる。
ステージ召喚中はみんなの意識をある程度共有しているので、僕にはその原因が分かる。
ステージに輝く鱗粉が雪のように降り注ぐ。
そして、ファーリーがステージにゆっくりと舞い降りてきた。
ミルアはファーリーの周囲をクルクルと蝶のように舞っている。
二人共飛べるので、ステージの上をすべる様に踊りながら、声を揃えて歌い始める。
意外な事に僕の持っていたアイドルと言うイメージにピッタリな曲を歌っている。
意識の共有でタイミングなども掴めてきたのか、テレサ、アイリス、セシリアの三人も一緒になって合わせて歌い始める。
流石に自由に飛び回るファーリーとミルアにダンスを合わせる事は出来ないみたいだけど、三人はテレサを中心に息の合ったダンスを披露する。
曲が終わると、この日一番の拍手と声援がステージに響き渡る。
僕は皆すごいなと言う感想しか出て来ない。
「アイドルって凄いわね」
「ん? マリルゥもやってみる?」
「あんなの出来るわけないわ。
私があそこに立ってもきっと恥をかくだけよ」
「そんな事ないと思うけど?
楽曲なんかはみんなと意識を共有出来るし、フォローもいれてくれるから出来ると思よ」
「私が……アイドル……。
それじゃあ、少しだけ、やってみるわ」
契約が成立し、マリルゥがステージに向けて歩み始める。
マリルゥも、年齢を変える必要はないから服装だけ皆と合わせよう。
あれ?
なんかマリルゥだけ浮いている。
それもそうか。
マリルゥ以外のアイドルは皆スレンダーだから違和感がないけど、マリルゥだけグラマーと言うか比較するとふくよかに見えてしまう。
でも、太って見えるわけじゃないし、大丈夫か。
マリルゥがステージ上がるとシーンと静まる。
ガチガチに緊張しているけど、やりたい曲が明確に浮かんで来る。
成程、エルフの里でよく歌われている民謡のような曲か。
それなら、曲は分かっているし、歌いやすいように伴奏をイメージしてステージに曲として流し始める。
マリルゥは曲が始まってしまった事に焦ってはいたけど、ちゃんと歌い始める事が出来た。
自信無さげに歌っているせいで、声は綺麗なのにか細くなってしまっている。
しかし、テレサが上手くフォローを入れて、アイリスとセシリアも綺麗なハーモニーを奏でている。
ファーリーとミルアはマリルゥの隣で一緒に踊ったり、楽しそうに声を合わせている。
僕もマリルゥの気分が上がる様に、バスドラムの音を合わせたりして、応援していると、しだいにマリルゥの声も大きくなり、ステージに綺麗な声が行き渡る。
みんなと合わせる事で安心出来たのか、歌声に力強さが増していく。
マリルゥは無事に最後まで歌い切る事が出来た。
ステージは沢山の拍手が鳴り響いている。
マリルゥは座り込んで泣き始めてしまった……。
そして、アイリスとセシリアが新しくアイドルになった三人を紹介し、新しく出来た国、ファーブルの紹介もしてから幕を下ろした。
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