第37話 イカロスの探求者

 新しい村が出来たと噂を聞きつけた旅人の男は最果てへとたどり着いた。ここでは、イグニス教だろうと、ケラー教だろうと、更には鉄の悪魔ですら受け入れるらしい。イグニス教とケラー教の間に生まれた男には、居場所がなかった。最後の頼みの綱として訪れたのが、ウトピア村だった。


 まず、村に入って驚いたことが見たことのない燃料を使っていることだった。アランという村長がいうには、ドウという植物らしく色んな種類があるらしい。嗅いだことのない匂いは、消耗した精神を癒してくれた。温かい飲み物を貰い、休んでいると、噂は本当だったらしく、鉄の悪魔が人間と遊んでいる光景が当たり前のようにあり、目を大きくして見入ってしまう。


「貴方が今日来た旅人さんね」


 声の方を向くと水色のショートヘアが特徴な女性がいた。名を尋ねると彼女はソフィアというらしい。この村の医者であり、何か怪我をしたら遠慮なく来てねとのことだ。


「あの、この村はなんでイグニス教やケラー教だけじゃなく、鉄の悪魔まで受け入れるのですか」


「最近鉄の悪魔は襲わなくなったでしょう? でも、他の村は鉄の悪魔に恨みがあるから、無害な彼らを攻撃する。村長のお父さんが鉄の悪魔と一緒に過ごしていたことを思い出して、だったら受け入れてみたらと私が言ったら受け入れ始めちゃってこうなってるの。彼らも壊される為に生まれた訳じゃないからね」


 可笑しそうに笑うソフィアに、旅人がなるほどなと納得していると、広場に子供達が集まってきた。


「ちょうどローちゃんの読み聞かせあるみたいだから、貴方も聞いてみたら?」


 そう言われたので、旅人は広場の方へと足を運ぶと茶色の髪とそばかすが特徴の青年が座っていた。


「ローにいちゃん! あのお話してー!」


「私あのお話大好きなの!」


「そうだね。ちょうど新しい人がいるみたいだし、あのお話にしようか」


 子供達がはしゃぐようにあのお話しをしてと、ローと呼ばれた青年にせがんでいる。旅人は分からないが、子供達に一緒に聞こうと言われ、その場に座る。


 ローは革から出来たカバンから取り出したのは、ここでは見られない青い空に、白い何かが浮かんでおり、更には丸く明るそうな何かが白い青年と、赤い少女を照らしている表紙が特徴の絵本であった。


「これは太陽を探しに行く旅人達のお話だよ」

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イカロスの探求者 多田羅 和成 @Ai1d29

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