エピローグ

 漆黒の城の中には青白い光が灯っている。


 その中に足を踏み入れる者はもう、誰もいないはずだった。生命が絶え、そこにいるものは冷たい血の怪物ばかりだ。先ほど白い衣を纏った長身の男がドアを開けただろう?

 あなたを案内をするのはおしゃまな黒と白が反転したメイド服を着た女だ。久しぶりの客人だとうきうきしているがご用心。あなたの目的をひそかに探っている。

 そして当主らしき壮年の男はにこにこしながらあなたをとっておきの場所へと案内する。青白い明かり――この島でしか採掘できない希少な青光石をふんだんに使った豪奢な造りだとあなたは驚くかもしれない。

 だが、それ以上にぞっとするものがそこには安置されている。


 そろそろあなたは甘い薔薇の香りが、あたりに漂っていることに気付く頃だろうか。その出所が一基の石棺であることにも、気付いているのかもしれない。

 棺の蓋がずず、と重苦しく唸りながら開く。薔薇の香りがいちだんと濃くなった。

 そしてその中に横たわっていた美しい少年と彼の腕に抱かれた少女が、客人を出迎えるのだ。


「ようこそ――【怪物公爵】の城へ」

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シャトーヴェリテの蕾姫✦身代わり令嬢は百年公子の寝顔を見守る 鳴瀬憂 @u_naruse

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