第6話 スキルはないけど……魔力操作ならできるんじゃ?

『きゃ~! 出てきたわ~!』


『イケメン~!』


『可愛い~!』


 う、うるさっ!?


 家の外に出ると、村にものすごい数のスライムたちが集まっていた。


 器用に建物に寄りかかったり、物を壊そうとはしていない。文字通り、集まっている。


「い~ち、に~い、さ~ん、よ~ん」


 ソフィが数え始める。


「多くて数えられないよぉ~」


 うん。だと思ったよ。


 一体何匹のスライムが集まっているんだ……?


 まるで泉でも見ているかのように、村中がスライムだらけになっている。


 大人たちは険しい表情を浮かべているが、子供たちはみんな面白いのかゲラガラ笑っている。


「あら~スライムたちが多いわね…………セシルちゃんの魔力に魅入られてきたのかしら」


 スライムたちはいまでも僕に向かって飛び掛かってきそうな感じだ。


 このままでは――――村が崩壊してしまう!


 僕は全力で大声を上げた。


「止まれえええええ~!」


 僕の一言でピタッと止まったスライムたち。


 ぽよんぽよんとうるさかったのに、一瞬で静かになった。


 シーンとなった静まった現場。


 あまりの静寂に村民たちもお父さんたちも静寂に包まれた。


 スライムたちとみんなの視線が僕に向く。


 …………。


 …………。


 何も考えてないよおおおおおおお!? ただ止めたかっただけだよ!?


 気まずい静寂と注目を何とかしなくちゃ……!


「ごほん。スライムたち? 僕の声は理解できるんだね?」


『『『『『は~い!』』』』』


「あ、あまり集まりすぎるとみんなが迷惑しちゃうからね?」


 するとみんながしょぼくれた顔に変わる。気のせいか体まで少しぷにゅ~ってなってる。空気が少し抜けた風船みたい。


「お兄ちゃん~? みんな落ち込んでいるよ?」


「え、えっと……その……責めたいわけではなくて!!」


 スライムたちは安堵した表情を浮かべる。


 印象としては、難しいことを思ってるよりは、簡単な意思疎通ができる感じかな?


「それで、みんなどうしてここに来たのか教えてくれる?」


『貴方のご飯が食べたいの!』


「えっと……そのご飯ってなに? 何が作ってあげたらいいの?」


『うん! 貴方のその大きい青いのが欲しいの!』


「紛らわしい言い方やめて!」


「お兄ちゃん? みんなは何て言ってるの?」


「ご、ご飯が欲しいって」


「ふ~ん」


 僕の体に青色って何一つないので、お母さんが見えるって言っていた漏れ出ている魔力のことなんだろう。


 魔力って青い色をしているのか……?


「み、みんな! ご飯ってどうやったらあげられるんだ?」


 すると一匹のスライムがゆっくりと近付いてくる。


 そして――――僕に抱きついた。


 むにゅっと音を立てて、ひんやりしていつものスライムの気持ちいい感触だ。


『食べれない……』


「ん? 漏れてるのに?」


『魔力が形になってないの~』


 魔力って分かるなら最初からご飯じゃなくて魔力って言って!?


「魔力を……形にする?」


 疑問を抱きながらお母さんを見つめる。


「魔力を塊にしなくちゃいけないんだけど、それって……魔法系統のスキルがないと…………せめて魔法操作のスキルがあれば形にできると思うけど……」


 スキルがないから形にできないもんな……。


 …………。


 …………。


 ん? 魔法操作? それって体内魔力を動かす・・・あれなのか?


 魔法の操作なら赤ちゃんの頃から毎日やっている。なんたって暇だったから。実はあの暴走で魔力を感じ取ってから操作できるようになった。それがあったからこそ暴走しなかったと言える。なぜなら、何度も魔力が暴走しようとしていたからだ。


 そういや魔力が暴走しようとしたとき、毎回スラちゃんが目を光らせていたっけ。


 ひとまず、魔力を操作してみると――――今まで感じていた魔力の何倍もの勢いがある。元々の魔力は大体50000くらいか? 二十倍くらい勢いが強くなっている。


 操作して魔力をぐるぐるにして両手の間にボールの形で集める。


「セシルちゃん!? 魔力の操作が!?」


 ――――【スキル『魔力操作』を獲得しました。】


 えっ……!? スキルって獲得できるのか!?


 そんなことより、目の前のスライムが僕の両手の間に集めた魔力玉に飛びついた。


『美味しい~!!』


 それと同時にスライムたちが一斉に僕に跳びついてくる。


「待てぇええええええ~!!」


 まるで大きな波のように跳びかかってくるスライムたちが、またビタッと止まった。


 器用にくっついて波の形になっている。


「あははは~! スラちゃんたち面白い~!」


「うふふ。セシルったらすごいわね!」


「みんな~! 一気に来ても食べられる子は決まってるから、ちゃんと並んで~!」


『『『『『『は~い!』』』』』』


 スライムたちが一斉に移動して一列に並んだ。


 みんな器用だな……。


 一匹ずつ魔力玉を食べさせる。


「セシル? それだと時間がかかりすぎじゃないかな? ものすごく並んでるよ?」


「すご~い! スラちゃんたちの後ろが見えないよ~」


「…………どうしたらいいんだろう?」


 ん~と悩むリア姉とソフィ。


 くすっと笑ったお母さんが声を上げた。


「セシルちゃん。いっそのこと、魔力を手の中じゃなくて全身にまとわせたらいいんじゃないかしら? できる?」


「全身に……」


 イメージを手の間じゃなくて、体全体にまとわせてみた。


「う、うおおおお~!」


「すご~い! お兄ちゃんの全身が――――金ピカに輝いてる~!」


「髪も逆立ちしててかっこいい!」


 …………まとわせるというより、変身ってイメージでまとわせたらこんな感じになってしまった。


 そのあと、全身に水玉たちがまとわりついて、僕の体を全力で吸い続けた。

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