幕間3【草薙美羽視点】

PM 20:20 札幌市内某所(アルトナの戦いの前日)


 エイル達の追跡もあり、標的がアジトとしている廃倉庫に辿り着く。様子を見ていると、制服を着た学生達が出ていくのを見る。

 学生達が全員出ていくことを確認し、奴のアジトへ入り込む。すると、ちょうど例の魔術師が中で何かをしていたようだ。


「ようやく見つけたわ。いいかげん、観念しなさい」


「お、お前は!! 執行者か!?」


「残念ね。その上よ」


 私は、彼に向けて帯で巻かれた剣を魔術師に向ける。同時に、『妹達』が集まりだす。

 すると、魔術師はそれを見て何かに気がついたようだ。


「まさか!! 何故ここに来てるんだ!? お前は確か――――――」


「『魔術評議会 議長専属秘書官 草薙美羽』。本来なら、執行者の業務ではあるが、こちらの都合で来れないそうでね。代行として、あなたを処断しに参ったのよ」


「嘘だ!! 俺は、餓鬼どもに、魔術を教えただけで、何故殺されなきゃいけないんだ!!」


「何をほざいてるのよ? あなたは一般人に魔術を広めていた。それだけなら、殺されることはないでしょうね。

 でも、あなたはこちらにその旨を伝えなかった。これは立派な情報漏洩に値するわ。

 よってあなたにはここで死んでもらうわ」


「そ、それは、ただそのくらいでは誰も何も言わないだろうと思っただけで。でも、何故たかがこのくらいで死ななきゃいけないのが、訳がわからん!!」


「そのたかがという気持ちが、災いを引き起こすのよ。現に、ある高校では、魔術を使ったいじめが起きてる。

 その原因が、あなたにあるのよ。大人しく、その首を出せば、酷い目に合わなくて済むはずよ」


 魔術師は、私の魔具を見て、ニヤける。


「首を出せば済む? そんな鉄の剣で、何ができる!?」


 彼の反論に、私は剣に手を添える。


「なら試してみる? 世界を滅ぼせる『核の炎』を宿したこの剣で」


 魔術師は、私の声に耳を疑う。すると、私の声と共に剣の色は徐々に紫に染まっていった。


「焼き尽くせ、『レーヴァテイン』!!」


 布が巻かれた剣が解き放たれ、紫の剣が現れる。それを見た魔術師は、パニックを起こす。


「そ、それは確か!! 世界に7つしか存在しないとされる、『S級魔具』の一つで、『紫』の魔具の頂点に君臨するとされる魔具!!

 その名は、確か!!」


「『核剣 レーヴァテイン』。世界を終焉の炎に包み込んだ巨人、スルトが所有していたとされる魔具。

 それを、人類が作り上げた災厄の兵器、『核』で再現した『模倣魔具』よ」


「こ、こんなのは違法だ!! いくらなんでも、これはやりすぎだ!!」


「それはあなたの事でしょう? 元々、一般人に魔術をただで教えるなんてご法度よ」


 私が剣を構えると、魔術師は召喚の術式を唱える。すると、魔方陣から数体の幻獣が現れる。

 幻獣の図体は、ライオンのタテガミに、虎のような胴体をしていた。


「『虎獅子ライガー』? それも数体呼び出すなんて、中々の手腕ね」


「そうさ!! その余裕があるうちに、こいつの牙の餌食にしてやるよ!!」


 魔術師は、『虎獅子ライガー』に私を襲わせる。『虎獅子ライガー』の牙が私に降りかかる時だった。

 なんと、三本の槍が、『虎獅子ライガー』の頭部に突き刺さり、『虎獅子』は多量の血を流しながら消滅していく。


「へぇ〜。その獣臭い物で、お姉様を喰い殺そうなんて、許さないわよ」


「ヒルド。あなた、前に出過ぎですよ」


「ですが、この程度のもの、お姉様の相手にはなりませんわ」


 エイル達は、即座に『虎獅子ライガー』に自分達の槍を投げ刺したようだ。もう一体の『虎獅子ライガー』が、私に襲いかかるが、ヒルドはそれを蹴り返し、スルーズとオルトリンデが、槍で突き刺す。  


「次は誰?」


「ヒルド。そんなに暴れると、ここを壊しかねませんよ」


 スルーズ達は、『虎獅子ライガー』を返り討ちにする。それを見て、魔術師は最後の一体に攻撃を命じる。


「クソッ!! ならば、こいつだけででも、お前を殺してやる!!」


 魔術師は私に向けて、最後の一体を放つ。『妹達シスターズ』は私を守るように、私の前に立つが、私は彼女達に道を開けるように言う。


「下がって。後を私がやるわ」


「お姉様。これは私たちで処理いたしますので、お姉様はお下がりください」


「オルトリンデ、あなた達はここまでよくやったわ。後は私がやるわ」


「とか言って、お姉様がやりたいだけでしょ?」


「ヒルド、口をつつしみなさい。ではお姉様、後はあなた様にお任せいたします」


 エイルの声に、他の『妹達シスターズ』は下がりだす。


「『レーヴァテイン α値 出力解放 フォームチェンジ 『α』』」


 レーヴァテインのモーターが、赤く変色する。そして、刀身が日本刀のようなものに、変形する。

 そうしてるうちに、『虎獅子ライガー』が私に襲いかかる。


「死に晒せ!!」っと魔術師の声が聞こえる。それと同時に、私はレーヴァテインを横に振るう。


「いくわよ。『α‬・ブレイズ』!!」


虎獅子ライガー』の口に向けて、『核の炎』を纏ったレーヴァテインの斬撃を放つ。すると、『虎獅子ライガー』は横に半分に斬られ、『核の熱』によって蒸発して消滅する。


「こ、これが、レーヴァテインの、え、S級魔具の威力なのか!?」


「残念ね、まだ序の口よ。全開で使うと、この街は壊滅するわよ」


 力を放出したレーヴァテインは、元に戻り、赤熱化した刀身は元の戻る。

 私が前に進むと、魔術師は尻餅をつきながら、後退りする。


「さぁ。これでもう邪魔なものが消えたわ。そろそろ観念しなさい」


「いやだ! 死にたくない!! お願いだ!! 見逃して!!!」


「言ったでしょ? あなたは規定を破った。あなたの死を持って事実を認めないと、こっちとしては立場上示しがつかないわ」


「し、知るかそんなの!! お、俺は、自分の技術を広めればそれで――――――――」


 彼の会話を聞き流し、私は魔術師の首をレーヴァテインで斬る。吹き飛んだ首は、スルーズが受け取り、それを私に引き渡す。


「お疲れ様です。これで、この一件は終わりましたね」


「いいえ、まだ大元を潰しただけよ。後はキサラギさんがどうにかするはずよ」


 私は、魔術師の首を布で丸める。エイルがアタッシュケースを持ってきたので、それをしまう。


「さぁ、そろそろ行くわよ」っと私の声と共に『妹達シスターズ』は、私の後に続く。

 こうして、私はセシリアさんの代行の仕事を終わらせたのだった。

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