第3節 度が過ぎた過ち

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PM 1:10 探偵事務所 如月


 昨晩の戦闘から、約半日程度が経った。今日も朝のうちに事務所での仕事を終わらせ、これからまた、あの学校に向かう所である。

 荷物をもち、これから向かおうとした時だった。古電話が鳴る。あっちからの依頼なのかと受話器をとる。


『あら? 思ったよりすんなり出てくれたわね』


「『仮面の魔女ジャンヌ』か。今日は学校じゃなかったの?」


 電話の相手は、『仮面の魔女』だった。古電話に電話をかけるなと言ってたはずだが、時たまこっちにかけて来るから、やめてほしいものだ。


「このダイアルにはかけるなと言ったはずだけど?」


『そんなこと言って、スマホにはあまり出ないくせに。こっちの方がまだマシよ』


「はいはい。それで? なんのよう?」


 私の問いに、『仮面の魔女ジャンヌ』は答える。


『暇だから、電話をしてるのよ。今日、学校休みだし』


「休み? どういうこと?」


『夜中にボヤ騒ぎがあったんですって。とういうのは建前よ。そういうことにしておいたわ』


 どうやら、昨晩の出来事のせいで、今日は臨時休校になったそうだ。『仮面の魔女ジャンヌ』の後処理によって、ボヤ騒ぎと言うことになったらしい。

幻霊レイス』との戦闘は、一般人からは認識できないから、当たり前の事だろう。


「それは助かったよ。それで、今は暇だと」


『えぇ、そうね。それに、あなたに伝えたいところでもあったのよ』


「何? 今度は」


『『II位アレ』が、例の魔術師の討伐に向かったわ。昨晩のことだから、もう終わらせてるかもね』


「美羽なら、大丈夫だろう。ないなら、もう切るけど?」


『そうね、では最後に、彼らとケリを付けるなら、早いうちになさい。相当面倒なことになるわ』


「――――――わかった。肝に免じておくよ」


 そう言って、私は古電話を置いた。椅子に腰掛け、煙草を吸おうとした時だった。ラスティアが電話に出ると、急いで私に渡す。


「もしもし?」っというと、電話越しから涙声が聞こえる。状況を確認すると、急いで立ち事務所を出る。


「姉さん! どうしたの!?」


「まずいことになった! ラスティア! 車出せれる!?」


「大丈夫だけど、何かあったの!?」


「依頼者の男子学生が、奴らにやられた……。今、集中治療室で治療してるそうだ」


「嘘!? なんでこんなことに……」


「わからない。だから、話を聞きに行く」


 ラスティアは、私の言葉に従い車を用意する。こうして、私とラスティアは車で彼女達のいる病院に向かった。


数時間後 北大付属病院


 車を駐車場に止め、急ぎ足で病院に向かう。すると、受付で依頼者の女子高生が待っていたので、急いで病室に向かう。


「これは、一体……?」


「先ほど、瀕死の状態で運ばれたそうです……。一命は取り留めたそうですが、いつ目覚めるのがわからないそうです……」


 ガラス越しに、横たわる男子高生を見る。見るに堪えないほどに体は負傷し、無機質な機械音が、室内に響く。


「君らのクラスメイトが、やったのか」


「…………おそらくは。いくらなんでも、これはやりすぎです。ここまでやらなくても良かったのに」


「あぁ、もう1人の子はどうした?」


「私たちを逃して、1人彼らと行きました。あなたに伝言を遺して」


「伝言? それは、一体」


「私たちと合流できたなのなら、廃倉庫に来てくれ。そして、あいつらを、止めてくれ。っだそうです。いかれますか?」


 彼女は、私にそういう。どうやら、かなり心配しているようだ。しかし、私はそれの気にせずに彼らの所へ向かう。自分でも分かるくらい、私は相当頭に来ているらしい。

 受付で待つラスティアに話かける。


「彼女達を頼む。私は少し席を外す」


「姉さん……。本当に行くの?」


「あぁ、奴らを倒す。殺さないようにはするさ」


「でも……。わかったわ、気をつけてね」


 ラスティアは私を見送る。そして、私は病院を後にする。

 煙草を吸いながら、街を歩く。その形相は、自分でも引くくらいに怒りで溢れていた。

 しばらく歩き、女子高生が言っていた場所へと着く。光がさす所を見つけ、覗き込む。すると、昨日教えてくれた男子高生が、数人に殴られてる光景が見えた。

 彼らは、楽しげに彼を殴ったり、蹴ったりを繰り返していた。それを見てるだけで、私の怒りは増していく。

 小杖を召喚に、彼を殴ろうとしてる不良に向けて、小さな火球を放つ。火球が当たり、彼らは動揺する。


「そこまでだ」


「テメェ! なんでここに!?」


「生憎、私は相当頭に来てるんでね。死人が出てもいいなら、相手になってやるよ」


「また来やがったな!! 今度はなんのようだ!?」


「二回ほど、お前らがふっかけただろうが。それより、そいつは離しな。でなければ、今度こそ殺すぞ」


 私は、小杖を携えて脅しをする。しかし、彼らは私の脅しを無視し、私に襲いかかる。

 彼らは、強化の魔術を使い、その拳を私に振るうが、私はそれを避ける。逆に今度は、私が攻撃を仕掛ける。

 小杖に魔術をこめ、火球を放つ。すると、それを受けた何人かの学生達が、吹き込んでいった。


「なんだ、こいつ!? 化け物か!?」


「さぁ、どうかな? それよりもそいつを離せ。さもないと、全員死ぬことになるかもな」


 ここにいる全員が、凍りつく。すると、昨日出くわしたリーダー格の学生が現れた。


「よう。昨日ぶりだな」


「あいさつはいい。今、私は相当キてるんだ。殺してもいいなら相手になってやるよ」


「そう急かすなよ。まだ遊びは始まってねぇんだからよ」


 余裕そうな雰囲気で、私は挑発する。すると、ナイフを持ち部下の学生の首元に突き刺す。


「何をする気だ?」


「何って? 当然、テメェを殺すために決まってんだろ? テメェは、俺らが何しても効かない。

 昨日、あの人からとっておきを教えてもらったんだ。それを試して、テメェを殺すってわけだ」


 周囲の不良達は、笑い出すが私の声に静かになる。

  

「やめておけ。どうしようが、私に敵わないのは明白だ。まずは、そのおしゃべりな口から焼いてやるよ」


「どうかな? それは、やってからのお楽しみだ!!」


 リーダー格の少年は、部下の不良の首を斬る。すると、その血を使って術式を唱える。


「来い! 『合成獣キマイラ』!!」


 血溜まりから、魔方陣を展開し幻獣を呼び出す。現れた幻獣は、雄叫びをあげる。


「『合成獣キマイラ』か。だが、お前に魔力じゃ操れんぞ」


「知ったことかよ!! テメェさへ殺せば、なんだっていいんだよ!!」


 彼は、『合成獣キマイラ』に指示し、私に差し向ける。だが、ここで思わむ事態が発生する。

 なんと、『合成獣キマイラ』は獅子の爪で、召喚者である少年の首を斬ってしまったのだ。

 中に浮く生首。それを見ていたグループの女子は叫び出した。


「いやァァァァァァァァァァァァ!!!」


 廃倉庫に響く悲鳴。そして、魔力が足りず、暴れ回る『合成獣キマイラ』。


「まずいな……。こいつを生かすと、面倒なことになるな」


 私は、逃げる不良達と逆に、『合成獣キマイラ』のもとに向かう。

 こうして、私は『合成獣キマイラ』との戦いを始めるのだった。                          

                                                

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