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PM 10:00 札幌市内の学校


 学生達をラスティアの車で家まで送り、私たちはそのままあの学校へ向かう。

 いじめグループにいた生徒からもらったメモ用紙で、学校の裏口まで向かうと、書かれていた通り、セキュリティがかかっていなかった。

 私たちは、そこから学校の中に入る。


「ここが、日本の学校。なんだかシンプルな感じ」


「学院は、もっと大きいかったしね。そう思えるのは、自然だよ」


 静寂な校内に、2人分の声が響く。世間帯では、深夜になる為かこうして会話をしたとしても、声が反響してしまう。

 そんな会話をしながら、例の教室に到着した。


「ここが日本の教室か。講堂とは違うんだね」


「一つの教室に、何十人も入りゃ何が起きても仕方ないわけか」


 2人は、そんな会話をしていると何かの気配を感じ取る。すると、見えない腕がこっちに向かって放たれる。

 私たちはそれを避けるが、教室の壁が強い力によって破壊される。


「何これ! 一体、何かいるの!?」


「こいつは、少し厄介なもんが隠れてるみたいだね。ここまで強いとなると、タチが悪くなるな」


 2人は、壊された壁を見て驚きを隠せない。まさか、これほど強いものは呼び出すなんて、予想なんてしていないのだから。


「『幻霊レイス』か。こいつが、この教室の陰湿な空間にさせてる最後のピースか」


「しかも、従来よりも強力みたい。こいつは少し厄介だね」


幻霊レイス』は魔術を唱え、私たちに向けて放つ。私たちはそれを避けるが、面倒なことに学校に火がついてしまった。

 しかし、私は即座に火を吸収することで、大事にはならないで済む。

 だが、『幻霊』は攻撃の手を止めることなく、再び魔術を唱える。


「させません!」っとラスティアは、氷花を抜き、『幻霊レイス』を凍りつかせる。

 そして、凍りつかせると同時に斬りつけ、『幻霊レイス』は砕け散る。


「まずは、1体ってところでしょうか」


「そうみたい。まだかいるみたいだ」


 2人の会話の通り、この教室にはまだ数体の『幻霊レイス』が存在する。しかも、どれも強力な個体となっているというおまけつきだ。

 私は、グラムとティルフィングを展開する。残る『幻霊レイス』は、ざっと見て3体。

 どんな状態であれ、こいつらを倒さないといけないのは変わらないらしい。


「ここは、1人1体がノルマかな?」


「でも、それしかなさそうですね。姉さん。あまり壊さないでね」


「はいはい。できるだけの加減はしておくさ」


 私たちは、それぞれで『幻霊レイス』と交戦を行う。先に、ラスティアが攻撃を始める。

幻霊レイス』は、魔術を唱えると先ほどと同様の炎を放つ。しかし、ラスティアの冷気によって、炎を鎮火させる。


「その炎では、私の前では無意味ですよ」


 ラスティアは、氷花を『幻霊レイス』に向けて振りかざす。すると、氷花の刀身は消え、『幻霊レイス』を切ることができなかった。

幻霊レイス』は、ラスティアに向けて襲いかかる。だが、ラスティアが氷花を鞘に納めた瞬間、無数の氷の刃が、『幻霊レイス』を襲う。


「『氷花 抜刀術 居合式 弐の方 【雪霞ゆきかすみ】』。微粒子となった無数の氷の刃が、霧のようにあなたに降り注ぐ!」


 無数の氷の刃が、『幻霊レイス』を襲う。無慈悲とも思える量の氷の刃が、『幻霊レイス』を襲い、それによって『幻霊レイス』は消滅する。

 ラスティアは、『幻霊レイス』を倒すと、すぐに私たちと合流する。


 続いて、明日香もまた『幻霊レイス』と対峙する。二丁の銃を構え、『幻霊レイス』と交戦する。

幻霊レイス』は、魔術を唱え波を出現させるが、明日香は軽快な身のこなしでそれを避ける。

 明日香は、『幻霊レイス』に向けて銃で撃ち抜くが、霊体であるためか銃弾がすり抜けてしまう。


「流石に、魔力を抑えてると、通らないか」


 明日香は、口笛を鳴らす。すると、影から黒い猫を召喚する。


「ウィズ。私に魔力をお願い!」


 黒猫のウィズは、鳴き声とともに、明日香に魔力を送る。『幻霊レイス』は拳を振るうが、明日香はそれも避ける。

 そして、銃弾を数発、『幻霊レイス』ではなく亜空間に向けて撃つ。すると、別に位置に亜空間を展開すると、先ほどの銃弾が現れ、『幻霊レイス』を貫くとこれもまた亜空間へと消えていく。そしてまた、別の位置に亜空間を展開しこれまた同じ銃弾が『幻霊レイス』を貫いては同じく亜空間へと消える。


「どう? 何もできずに、蜂の巣にされる気分は?」


 弾丸が、『幻霊レイス』を無慈悲に何度も貫く。そして、ついには耐えきれなくなり、そのまま消滅していった。

 最後に、私の出番である。『幻霊レイス』は私に向けて魔術を放つ。しかし、白の炎を放つことで、『幻霊レイス』の魔術を無効化にする。


「返すぞ」っと言いつつ、私は『幻霊レイス』が放った炎をそのまま私の魔術として放つ。

 すると、炎の放線は『幻霊レイス』に直撃する。炎の海に包まれ、もがきだす『幻霊レイス』を見て、私はすかさず攻撃を加える。

 ティルフィングを右手と同化し、『幻霊レイス』向けて放つ。


「『三重魔術 上級展開・『黒炎』』!!」


 黒い炎が、『幻霊レイス』を包み込む。すると、『幻霊レイス』は徐々に黒い炎に包まれていき、次第に消滅していった。


「これで全部か。こんなのが、まさかこの教室にいたなんてな」


「魔術師でも、幻獣召喚には専門の知識がいるのにそれも『幻霊レイス』を4体召喚していたなんて。

 それを、非魔術師が行えれるなんて」


「それをやり遂げれたんだ。その術者は、相当なセンスがあるんじゃない?」


 私は、再び教室の中を見渡す。視界に映る歪なものはもうないようだ。


「結界を張り、外からの認識を遮断していじめを誤魔化した。糸を張って、同時に針を展開して刺すことで、洗脳の魔術を付与した。

 その維持装置として、『幻霊レイス』を使役して4体配置したっと。

 こうすることで、術者の魔力の負荷を最低限にし、合法的にこの教室を支配していたという事になるのか。

 それなら、あの時点で私と『仮面の魔女ジャンヌ』も気づくことができなかったと言う訳か」


「でも、これでそれも解けたなら、もう終わりじゃない?」


「だと、いいんですけど。今の若い子達は、変に起点がいいからこの後の事が考えづらいのが現実ですよね」


 ラスティアの言う通り、Z世代と言われる子達は、変に知恵が回る。

 今回より、もっと悲惨なことが起きるとも考えられる。そうしないためにも、しばらくは様子を見るのが最適だ。

 時計を見ると、時刻は深夜0時となっている。

 こうして、私たちは騒ぎが起きないうちに学校を後にしたのだった。 

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