第15話 ついに始まるコスプレH

 大学祭から数日が経過した。今日は紗香ちゃんの家庭教師をする日だ。その間に彼女は銭湯のバイトの見学に行ったらしい。携帯で簡単な感想は聴いたが、勉強の休憩がてら詳しく訊いてみるとしよう。



 いつもの時間に家に伺うと、香美こうみさんに出迎えられた。これもいつも通りで、後は静ちゃん・紗香ちゃんの共同部屋に行くだけなんだが…。


「朝宮君。家庭教師の前にあなたに訊きたいことがあるの。リビングに来てちょうだい」


「わかりました」

何で急にそんな事言い出すんだ?


もしかして、プライベートで紗香ちゃんと過ごしてるのがバレた? それだけなら何とかごまかせると思うが、Hのことを指摘されたらおしまいだ。


俺は不安な気持ちを抱いたまま、香美さんに付いて行く。



 リビングに案内されたので、香美さんと向かい合って座る俺。


「朝宮君緊張しないで。悪い話じゃないから」

彼女は優しく微笑んだ。


「そうなんですか? じゃあどうして…?」


「紗香から将来の事とか聴いてるかな? と思って」


「将来ですか?」


「ええ。あなたは光ちゃんを通じて、静だけじゃなくて紗香とも仲良くしてくれてるからね。歳が近いあなたには色々話してる気がして…」


大学祭の時、紗香ちゃんは“エロゲー声優”になろうかな? と言っていたが、さすがにそれを言う勇気はない…。


「期待に応えられなくて申し訳ないですが、特に聴いてないですね」


「そう。私の思い過ごしだったみたい。ごめんなさいね、変な事訊いて」


「気にしないで下さい」


「私これから出かけるから、あなたの家庭教師が終わる時は留守にするわ」


「そうなんですか、わかりました」


「帰りは夜遅くになるから、静がいつもより早めにバイトを終わらせて帰ってくるからよろしくね」


「はい」


近年何かと物騒だから、中3といえど家に1人きりにさせたくないか。それか、共同部屋の事を考えての発言かも?



 香美さんの話が終わり、俺は静ちゃん・紗香ちゃんの共同部屋に向かう。すると彼女は…、何故かテニスウェアを着ていた。


「いらっしゃ~い、せんせ♡」


紗香ちゃんは家庭教師として来た限定で、そう呼ぶことがある。


「その恰好どうしたの?」


「この間言ったじゃん! コスプレHしよって。(第2部 1話参照)」


「香美さんがいる時は無理だから」


「お母さん、これから出かけて夜遅くまで帰ってこないよ?」


「それはさっき聴いたよ。紗香ちゃんを1人きりにさせないために、静ちゃんが早めに帰ってくるみたいだね」


「そうなの? お母さんもお姉ちゃんも、あたしを子供扱いしてるよね」


「心配してるんだよ。物騒な世の中だからさ」

俺だって光がそばにいない時は、ずっと心配してるぞ。


「物騒って言われても、このマンション別に高級じゃないし出かけるつもりないんだよ? 危ない事なんてないじゃん?」


「用心するに越したことはないんだよ」


「心配し過ぎだと思うけどね~。まぁ良いや。さっさと今日の分やろうよ!」



 紗香ちゃんは問題をスラスラ解いていく。正解率も高めだし、心配することはほぼないな。あえて不安要素を言うなら『慢心』だろうな。


「ふぅ。やっと終わった~」

座りながら伸びをする紗香ちゃん。


「お疲れ様」


彼女は椅子から立ち上がり、テニスウェアのスカートをひらひらさせる。中が見えそうで見えない絶妙なめくれ方だ。


「照ってさぁ、生でアンダースコート観たことある?」


「ないよ。体育は男女別だし、女子テニス部に縁はないからね」


「ふ~ん。だったら、思う存分目に焼き付けると良いよ」


紗香ちゃんはスカートをまくり上げ、アンダースコートを披露するのだった。

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