第13話 大学祭⑧ 紗香ちゃんの意外? な才能

 千春さん・沢田さんと共にエロゲーを楽しんでいた紗香ちゃん。そんな中、彼女が「喘ぎがイマイチ!」と言い出した。


俺・光・静ちゃんは少し遠くからパソコンのモニターを見ているだけだから、イヤホン越しに流れているであろう喘ぎ声は聞こえない。


さて、どうすれば良いかな?



 「照。ちょっと聴いてみてよ!」


紗香ちゃんが手招きしてくるので、俺達3人は彼女に近付く。


「このまま聴き続けて」


紗香ちゃんにイヤホンを渡されたので、付けて聴いてみる。


……彼女が文句を言う演技とは思えない。光達の喘ぎ声を生で聴いたことがある経験上、真に迫ったというかリアリティはちょっと欠けるな。


だけどそれは仕方ないんじゃないか? 演技にも限界はあるはずだし…。


「これで男を興奮させられると思ってるのかな~?」


喘ぎ声は異性に聴かせるものだから、同性だからこそ思う事はあるかもな。


「もっとさぁ~『照のお〇ん〇んが奥まで届いて気持ち良いの~♡♡』みたいに言わないとダメだって」


主人公の名を俺に置き換えた後、ヒロインと同じセリフを言う紗香ちゃん。


…あまりの色っぽさに全員の視線が彼女に集まる。演技らしさを全く感じず、Hの時に聴く声そのものだ。紗香ちゃんにこんな才能があったなんて。


「みんなどうしたの? あたし下手だった?」


「そんな事ないよ。超凄かった」

感心する沢田さん。


「恵ちゃんの言う通りよ♪ 紗香ちゃん上手ね~♪」


「そう?」


千春さんのお墨付きをもらった紗香ちゃんは嬉しそうだ。


「あたし、将来エロゲー声優になろうかな~」


せめて“エロゲー”は抜いて。そうじゃないと香美さん(静ちゃん・紗香ちゃんのお母さん)に話せないから。



 「実演のほうがエロいと思ったからバナナを食べる流れにしたが、声もアリだな」


…川宮君が何やらブツブツ言っている。何か企んでるな。


「紗香ちゃん。さっきの声、録音させてくれないか? 千春さんのとは違うになりそうだから」


「えぇ~」


明らかに嫌そうというか面倒そうだ。


「残ったバナナ全部食べて良いから!」


これから沢田さんがエロく食べてもバナナは十分余りそうだが、彼女は大食いキャラじゃないぞ…。


「紗香ちゃん、Hなゲームを見せてくれたお礼をしないと。1回だけ付き合ってあげましょ♪」


千春さんは社会人だから、その辺のフォローは大切にしてるな。


「それもそうか…。1回だけだからね!」


「ありがと~紗香ちゃん!」



 その後、紗香ちゃんのエロい声を録音する川宮君。面白がった千春さんも挑戦したものの、自然な感じにならないのでボツになった。


録音後は沢田さんがバナナをエロく食べた。彼女は千春さんより口が大きいのか、豪快な責めがウリだったな。咥えられる範囲が広い事広い事。


それが済んだ後、主催者の川宮君と田中君以外で残ったバナナをおいしく完食した。食べごろのバナナを揃えた限り、彼はこのイベントにこだわったようだ。



 気付けば、夕方が目前だ。もうそろそろ千春さんが銭湯に戻りたい頃だろう。


「川宮君。私、もうそろそろ帰るわね」


「そうですか…。千春さん、今日はありがとうございました」


「良いのよ♪ 私も楽しめたから♪」


その言葉に嘘はないと思う。


「…忘れるところだったわ。これ、銭湯の割引クーポン♪ 良かったら来てね♪」

そう言って、千春さんは3枚の紙クーポンを川宮君に渡す。


「3枚…ですか?」


「安藤君にも渡してあげてね♪」


「いないアイツのことを気にかけてくれるなんて…」


「当然の事よ♪」


こういう気遣いは千春さんの強みだな。何となくだが、千夏さんはここまでしない感じがする。


「2人ともバイバイ♪ …照君、道忘れちゃったからまた案内お願いね♪」


「わかりました」

1回通っただけじゃ覚えられないよな。


こうして、俺達と沢田さんはパソコンゲーム研究部の部室を後にした。



 「ウチはまだ残るから、ここまでだね。ちはっさん」


サークル棟を出た後、沢田さんが話しかける。


「わかったわ。また今度ゆっくり話せると良いわね♪」


「だね」


千春さんは別れ際に、紙のクーポンを沢田さんに渡したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る