第12話 大学祭⑦ エロの世界は広い

 ついに千春さんと紗香ちゃんが、川宮君のパソコンにインストールされているエロゲーを起動させた。タイトル画面にエロさは感じないが…。


さっきから画面は切り替わってるのに、音が聴こえないぞ? どういう事だ?


「このイヤホンがそうか。…はい」


パソコンに繋いであるイヤホンに気付いた紗香ちゃんは、片方を千春さんに渡してもう片方を自身の耳に付ける。


「ありがとう♪ …ちゃんと聴こえるわ♪」


「あたしも。とりあえず、ギャラリーを選ぶね」

彼女は手早く操作する。


シーンセレクト画面になり、千春さんはサムネをじっくり観察している。


「…これを選んでちょうだい♪」


「は~い」


少し離れたところにいる俺・光・静ちゃんには、何を選んだかはわからない。モニターに大きく表示されれば見えるはずだ。


「……」

川宮君は心配そうな様子を崩していない。


自分の性癖がバレるんだから、気が気じゃないよな。



 多くのゲームのシーンを鑑賞したい千春さんと紗香ちゃんの意向により、早めに読まれていくシーン達。それでも川宮君の性癖はよくわかった。


彼が好むのは、透明人間や身近な物に姿を変えるだ。急にイタズラされて戸惑っている女子を気持ち良くさせる感じだな。


…イタズラのレベルによっては〇漢と大差ないぞ。能力上、主人公の姿は絶対見えないのでバレる心配はないが。


「こういうのは、ゲームじゃないとできないよね~」

紗香ちゃんがつぶやく。


「そうね♪ Hなゲームも面白いわ♪」


俺もエロゲーに少し興味を持ったが、光に浮気と思われるかも…?


「田中君はさぁ、この『炎の~』シリーズが好きなの?」


そういえば、沢田さんは田中君のエロゲーをやっていたな。


「まぁ…」


「それ、どういうゲームなの?」

紗香ちゃんは沢田さんの横に移動する。


俺・光・静ちゃんの意識もそっちに向く。…千春さんは1人で他のシーンを鑑賞中だ。


「これ見てよ。みんな超おっぱい大きいでしょ?」


「ホントだ。それに、いろいろ飛び散ってるね~」


紗香ちゃんの言う通り、のが画面の多くを支配している。こっちもゲームならではの表現だな。


田中君が好むのは“巨乳系”か。どのキャラも胸の存在感が凄いし、間違いないだろう。



 それからというもの、紗香ちゃんは千春さんと沢田さんのそばを行ったり来たりして多くのシーンを鑑賞する。


元気なのは言うまでもないが、行動力が凄い。俺達は目で追うのが精一杯だ。


「ねぇ。お兄ちゃんはどういうエロゲーをやってみたい?」


「それ、わたしも気になってました。照さん教えて下さい」


光の問いに静ちゃんも加わる。


「う~ん…。どうせなら、ゲームでしか体験できないジャンルが良いかな」

姉系が良い例だろう。今更俺に姉ができる訳ないし…。


「それって、私達の下着に変身したいって事?」


「照さんも変態だったんですね…」


「そっちじゃないから! …興味がないと言えば嘘になるけど」


俺が変身してイタズラしても、顔が見えないのがネックだ。気持ち良さそうな顔と喘ぎ声はセットで味わいたい。


「私もそんな感じかな~。をずっと咥えるのも悪くないけど、顔が見えないのはちょっと…」


「顔が見えないと、気持ち良くしてるかわからないよね」


静ちゃんの言葉を聴き、Hもコミュニケーションの一環だと気付いた瞬間だった。



 俺達がHの雑談を終えた後に紗香ちゃんを見たら、何故か彼女は不満そうな顔をしている。一体どうしたんだ?


「紗香ちゃんどうかした?」


「なんかさ~、喘ぎがイマイチ!」


謎のクレームを出す彼女に対し、どう声をかければ良いんだろう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る