第7話 大学祭② 良かったらおいで♪

 俺達を乗せた車は、ついに大学の駐車場に着いた。移動中の車内で光と紗香ちゃんにされ続けた俺だが、2人のテクニックに驚かされる。


というのも、2人とも見事に“寸止め”してくるからだ。大きくなったり小さくなる様子を楽しんでるように見えた。何度もHしてる光はともかく、紗香ちゃんがその領域に達するとは…。


色々な意味を含め、今後の成長が楽しみだ。



 全員、千春さんが運転していた車から降りる。


「ここからはみんなの番ね♪ 案内お願い♪」


「わかりました。俺に付いて来て下さい」

ここは年長者らしく、俺が全員をリードしよう。


「は~い♪」

子供のように返事をする千春さん。


「ねぇ、私達の立ち位置なんだけど…」

光が静ちゃん・紗香ちゃんと何やら話している。


「あたしは後ろで良いよ~。前にいたらよくわからないし」


紗香ちゃんも千春さん同様、案内する対象だ。後ろにいたほうが良いと判断したか。


「それじゃ、私と静ちゃんがお兄ちゃんの隣ね」


「そうだね」


光は俺の右隣、静ちゃんは左隣に移動した。知らない人にこの状況を見られたらどう思われるか…。


「まずは正門に行こうか。良いかな?」


全員賛成してくれたので、早速向かう事にした。俺達3人が前で、紗香ちゃん・千春さんがちょっと後ろにいる流れだ。


「ねぇねぇ、照のお尻ってあの人より大きい?」

向かってる道中、紗香ちゃんの声が聞こえた。


今尻見られてるの? さっき言ってた“よくわからない”って、こういう事?


「あの人って玲君の事よね? どうかな~?」


あまりジロジロ見ないで欲しい。…そういえば前、紗香ちゃんから尻の相談を受けたことがあったな。(第1部 12話参照)


当時は、彼女とここまで親密になると思わなかったものだ。あの時の俺が知ったらどう反応したかな?



 大学の正門に着いた。午前中だが賑わっているな。焼きそばなどの模擬店を出しているところや、学校でよく見かけたテントの下で展覧会もやってるみたいだ。


「盛り上がってるわね~♪」

千春さんはウズウズした様子で、辺りを見渡している。


「一応言っておきましたが、1人で勝手に行かないで下さいよ?」

今の彼女の反応は、子供そのものだからな。


「わかってるわよ♪ 心配しないで♪」


「あたしがそばにいるようにするから」


…言葉だけ聴いてると、紗香ちゃんの方が年上じゃないか?


「お兄ちゃん。私達も千春さんを見守る感じで良いんじゃない?」

光の言葉に静ちゃんも頷いた。


今日俺達が大学祭に来たのは、千春さんを下ネタイベント会場に案内して見届けるためだ。つまり、彼女と別行動をとったら意味がない。


「そうだな。千春さんから目を離さないように意識しながら楽しもう」



 「とても上手な絵描くのね~」


千春さんが目を付けたのは、とある女子キャラのイラストだ。展覧会は多くのサークルでやってるみたいだな。コスト皆無で宣伝できるのが理由だと思う。


「ありがとうございます!」

そばにいた男子サークル部員? が礼を言う。


「これからも頑張ってちょうだい♪」


「はい…」


彼、千春さんの美貌に目を奪われたとか? 歳を感じさせない美しさだし、その気持ちはよくわかる。


「私、銭湯を経営してるの♪ 良かったらおいで♪」

千春さんはカバンから小さい紙を取り出して、彼に手渡した。


「必ず行きます!」


「バイバイ♪」

小さく手を振って、千春さんはその展覧会を後にした。



 「千春さん、さっき何を渡したんですか?」

さっきの展覧会から少し離れた後に訊いてみた。


「割引クーポンよ♪ 楽しむだけじゃなくて、宣伝もしないとね♪」


宣伝は、今回ここに来た理由の1つになる。


「それはわかりますが、今の時代は“電子クーポン”のほうが主流では?」


キャッシュレスが急速に広まってるからな。ここ最近、現金は一切使っていない。クーポンも専ら電子だ。俺と同じ大学生は、ほとんどそうだと思うが…?


「確かにね。けど、紙のほうがすぐ手渡せるメリットがあるの。うちにも電子クーポンはあるけど、うまく使い分けないと♪」


そういうものなのか…。俺の考えは浅かったようだ。


「あ♪ あそこ面白そう♪」


俺達は、しっかりしてるかわからない千春さんに付いて行く…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る