第6話 大学祭① 大学に向かう

 今日はいよいよ大学祭だ。千春さんのお願いにより、俺達4人は銭湯『千夏と千春』の駐車場にいる。彼女の車がもうすぐここに来るのだ。


今の時間は朝になる。昼頃やる下ネタイベントをこなしてからランチを食べ、それからここに戻って解散する予定だ。下ネタイベント前は色々見て回って楽しむことになっている。


俺達はもっとゆっくりできるが、千春さんが言うには銭湯は夕方のほうが混むらしく、念のため早く帰りたいとのこと。受験生の紗香ちゃんもなるべく早く帰ったほうが良いと思ったので、俺達も千春さんと一緒に帰る事にした。



 ……1台の車が俺達の前に停車する。千春さんが来たようだ。


「みんな、お待たせ!」

運転席の窓が開き、千春さんが顔を出す。


「この車って何人乗りなの~?」

紗香ちゃんが問う。


「5人乗りよ。後ろは3人乗れるわ♪」


ということは、俺・光・静ちゃん・紗香ちゃんの4人の内、誰かは助手席に乗る必要があるな。男1人と女子3人なら…。


「俺が助手席に乗るよ。女子3人は後部座席で良いよね?」


「良くない!」


「わたしもそう思います」


「お兄ちゃんは、後部座席の真ん中ね♪」


紗香ちゃんの否定を皮切りに、静ちゃんが同意して光が席を指定してきた。見事な連携プレイだ。ここは大人しく従おう。


「決め方は“じゃんけん”で良いよね?」

紗香ちゃんがやる気満々な様子を見せる。


「オッケ~♪」


「わたし勝てるかな? 自信ない…」


誰かに肩入れするつもりはなかったが、自信ない人を応援したいから静ちゃんの勝利を心の中で祈っておく。頑張れ、静ちゃん!



 「やった~! あたしの勝ち!」

紗香ちゃんが大喜びしている。


これで残るは、光と静ちゃんの一騎打ちだ。この状況なら光を応援するな。俺はシスコンだし…。ゴメン、静ちゃん。


「……負けちゃいました」


「ふぅ。何とか勝てた~」

テンションを下げた静ちゃんをよそに、肩の荷を下ろす光。


「決まったみたいね♪」

車内で見守っていた千春さんが言う。


「すみません、お待たせしてしまって…」


「そんな事は全然良いのよ♪ 照君はモテモテなのね♪」


「モテモテだなんて…」

光達以外の女子とは接点がない俺がモテモテ? …いまいちピンとこない。


「お邪魔しま~す」

紗香ちゃんは車のドアを開けて車内に入る。


「失礼します」

俺と光もほぼ同時に言ってから続けて入った。


静ちゃんも助手席に向かってから、俺達と同じことを言って乗り込んだ。


「よろしくね、静ちゃん♪」

乗り込んだ彼女に微笑む千春さん。


「こちらこそ、よろしくお願いします…」


この挨拶後、千春さんの車は発進する。



 「ねぇ照。もっと脚広げて良いよ」

紗香ちゃんに言われたので確認すると、彼女は脚をピタッとくっつけている。


そのおかげで、スペースにだいぶ余裕があるけど…。


「お兄ちゃん、遠慮しないで」


光もか。いくら女子とはいえ、少しは空けないと窮屈じゃないの?


「2人は優しいのね♪」

ルームミラー越しに俺達を観た千春さんがクスッと笑う。


「だって、照の大きいからさ~。ちゃんと広げないと!」


いらない気遣いだよ…。


「照君のお〇ん〇ん大きいんだ?」


そこに食い付かないで、千春さん。


「多分ね! 照以外の観たことないから、よくわからないけど!」


も立派なのよ♪ どっちのほうが大きいかしら?」


「男としては気になるところだよね? 照?」


「いや、全然…」

紗香ちゃんの期待を裏切りたくないが、ここはハッキリさせたほうが良い。


「そうなの? 何か意外!」


「男の子は、お〇ん〇んを息子のように大切にしてるって聴くわ♪ 可愛い息子を争いの元にしたくないわよね♪」


「…そうですね」

色々ツッコむのが面倒なので、それで良いよ…。



 「光ちゃんと紗香ちゃんは、大人しく乗ってるのね~」


車を発進してどれぐらい経っただろうか? 千春さんが謎めいたことを言う。


「あの、どういう事ですか?」

すかさず光が確認する。


「千夏ちゃんと玲君が後部座席にいると、すぐHしちゃうのよ♪ 運転中は見られないけど、赤信号の時はじっくり観ちゃうわ♪」


観てないで止めたほうが良いんじゃ…?


「2人はどういう事やってたの~?」

興味を持った紗香ちゃんが訊く。


「キスはもちろんだけど、とかモミモミかな♪」


「照、今からやってあげようか?」


「お兄ちゃん、遠慮しないで♡」


俺のためというより、2人がやりたいようにしか見えない…。


「いいなぁ…」

助手席にいる静ちゃんが後ろを観てつぶやく。


光と紗香ちゃんの熱意に負けた俺は、大学の駐車場に着くまでされ続けたのだった…。

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