第5話 大学祭に向けて

 俺・光・静ちゃんが在籍している大学の大学祭に千春さんが来るらしい。『バナナ(事前申請でソーセージも可)を男性の気を引きながら食べて下さい』という下ネタイベントに参加するようだ。


その話を聴いた時に彼女はいなかったので、千春さんが店内にいる日時を玲さんに訊いてから、俺達4人は銭湯を後にする…。



 そして後日。聴いた日時に銭湯に向かうと、フロントに千春さんと玲さんがいた。この日も静ちゃん・紗香ちゃんが俺達の家に遊びに来たので、4人で来た形だ。


「あっ、みんな。どうしても伝えないといけないことがあって…」

玲さんが申し訳なさそうな顔をしている。


「どうかしたんですか?」

何かトラブルか?


「この間、千夏さんと『リスとクリ』のマスコットキャラについて話したでしょ?」


「はい」


「あの話、白紙になったんだ…」


「えぇ! 何で!?」

紗香ちゃんが驚きの声を上げる。


「千夏さんはなるべくエロい構図にしたかったみたいだけど、世間体を考えると思ったようにできなくてさ…」


それは当然のことだよな。マスコットキャラはいつ誰に見られるかわからないし、デザイン・構図にはかなり気を遣うはずだ。


「そのストレスで、千夏ちゃんがちょっと体調を崩しちゃったの…」

今度は千春さんが答えた。


「千夏さん、大丈夫なんですか?」

光が気にかける。


「うん、大丈夫だよ。だけど考える度にストレスを抱えたら、もっとひどくなるからね。僕達3人で話し合って、この件は白紙にするって決めたんだ」


「そういう事ですか…」

体を壊してまで、マスコットキャラを考える必要はないよな。


「せっかくアイディアを出してくれたのにゴメンね」


「そんな、謝る事じゃないですよ。玲さん」

本当に真面目な人だ。俺は全然気にしていない。


光・静ちゃん・紗香ちゃんも同じように言ったから一安心だ。



 「ねぇ、玲君。前から気になってたんだけど…」


そう話す千春さんの表情が晴れない。


「? どうかしたんですか?」


「マスコットキャラの事を話す時、千夏ちゃんは何度も『クリとリス』って言ってたはずよ? どうして“リスとクリ”って順番変えるの?」


「それは…」


この銭湯の常連になったからわかるが、千春さんも千夏さん同様にエロ知識は豊富だ。だから『クリとリス』の意味は知ってるはずなのに…。


「順番を変えても意味が通じる場合はあるけど、言葉には意味があるの。千夏ちゃんもそのつもりで言ったはずだから、勝手に変えちゃダメ♪」


「はい…」


言葉には意味があるか…。そう考えると銭湯名の『千夏と千春』にも意味が合ったりするのかな?



 …そういえば、今日の本題を終えてなかった! マスコットキャラの話があったから忘れそうになったぞ!


「千春さん。俺達の大学祭の下ネタイベントに、本気で出るつもりなんですか?」

こういう意思確認は直接訊かないとな。


「ええ♪ 私のようなおばさんになると、大学に行くことはないからね。色々見て回りたいの♪」


下ネタなのはわかってる感じだし、楽しみにしている様子が俺にも伝わってくる。止める必要がないのはわかったが…。


「千春さんって、俺達の大学のつくりわかります?」

敷地が広いからな。行きたい所に行けるとは限らない。


「それが全然わからないの。誰かに訊けばわかると思うけど、自信ないわ…」


「良かったら俺達と一緒に回りません? イベントも見守りますから」


この話は光・静ちゃん・紗香ちゃんにも話してあり、了承をもらっている。


「本当に? 1人は心細いって思ってたの。一緒に来てくれて嬉しい♪」


予想以上に喜んでくれたな。見ている俺の頬が緩みそうだ。


「照君達の大学には車で行くんだけど、みんなも乗ってく? ランチとかディナーもごちそうするわよ?」


「良いの!?」

紗香ちゃんが食いついた。


「もちろん♪ お礼はちゃんとしないとね♪」


そういう事なら受けておこうか。せっかくのご厚意だし。


「わかりました。お願いします」



 こうして、俺達は千春さんと一緒に大学祭を巡ることになった。光と静ちゃんは1年だから初めてだが、俺はバイトに明け暮れていて去年は参加していない。なので新鮮な気持ちでその日を迎えることができる。


そして大学祭初日…。

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