第3話 銭湯で聴く面白い話①

 俺と光の家に遊びに来ている静ちゃん・紗香ちゃんの2人。そんな中、静ちゃんが『バイト先の女の子と仲良くなりたい』という相談をしてきた。


紗香ちゃんは百合を勧めたが、俺はどう答えようか…。



 「静ちゃん。厳しい事を言うけど、その子と仲良くなるには自分から行動するしかないね」


紗香ちゃんを除く俺達3人は大学生だ。理想だけじゃ上手くいかないことを伝えないとな。


「やっぱりそうですよね…」

彼女は落ち込んだ様子を見せる。


「心配しなくても、バイトに応募する勇気がある静ちゃんならできるよ!」

年上の店長とかと話すより、同年代のほうがハードルは低いはず。


「照さん、励ましてくれてありがとうございます。わたし頑張ります!」


静ちゃんの力になれたみたいだ。たまには良いところを見せないとね。


の照にしては、ちゃんとしたこと言うじゃん」


「変態は余計だよ、紗香ちゃん」

せっかくの良い雰囲気が台無しだ。


「盗聴した前科があるんだから変態に間違いないでしょ?」


「確かにそうだね」

クスッと笑う静ちゃん。


「静ちゃんまで言わないでよ~」


俺の情けないツッコミの後、女子3人が笑い出す。光と2人で過ごすのはもちろん楽しいけど、4人で過ごすのも良いよな~。そう思う俺であった。



 「光。今日も風呂は銭湯で良いよな?」

銭湯『千夏と千春』の貸し切り温泉のことだ。この家から徒歩圏内にある。


「もちろんだよ、お兄ちゃん」


「そういえばここって、あの銭湯から超近いじゃん。そのためにここにしたの?」

紗香ちゃんが訊いてきた。


「いや、当初は〇ブホとして使う気だったんだよ」

近隣に物音を気にする人がいた時の避難先にする予定だった。


だが、俺の予想に反して家の浴室の管理が面倒なことに気付いた。油断するとすぐにカビが生えるのだ。なのでシンプルに風呂としても使わせてもらっている。


あの銭湯の常連になった俺と光は千夏さん・千春さんと連絡先を交換し、貸し切り温泉をすぐ予約可能な状態にした。いちいち銭湯に電話するのは面倒だからな。


千夏さんの旦那にあたる玲さんとは連絡先を交換していないが、その理由は彼は裏方にいることが多く、見かける頻度が母娘に比べて少ないからだ。


決して嫌ってる訳じゃない。優しくて良い人なのはひしひしと伝わってくる。


「あの温泉がすぐそばにあるのって良いよね。あたしもこのへんに住もうかな~」


「私達4人で住むのも面白そうじゃない? ねぇお兄ちゃん?」


「確かにな」

将来の選択肢に入りそうだ。


「…お風呂の話を聴いてたら入りたくなっちゃいました。今からでも良いですか?」

静ちゃんがウズウズした様子を見せる。


「俺は良いけど…」


「私も良いよ~」


「んじゃ行こっか」


紗香ちゃんも乗り気だし、すぐ行くとしよう。千夏さんに連絡したところ『空いてる』と返信があったので、俺達は早速向かう事にした。



 銭湯『千夏と千春』に着き、フロントにいる千夏さんに声をかける。そしてカギを受け取った後、いつも通り貸し切り温泉を楽しむ俺達4人。


誰1人タオルで隠そうとせず、ありのままの姿をさらしている。それによりみんなムラムラして手を出すのがお約束だ。静ちゃんが急かしたのはこういう事かも?


風呂を済ませフロントに戻ると、千夏さん・玲さん夫妻がいる。玲さんは婿入りしたので、順序はこれで問題ない…よな?


「カギ返しに来ました~」


「はいよ」


俺は千夏さんの開いた手にカギを置く。


「あのさぁ、常連のアンタ達に言っておきたいことが2つあるの」


「2つ? 何かあったんですか?」

1つならまだしも、2つあるとは。千夏さんは何を言う気だ?


「暗い話じゃないから安心して。1つ目はここのマスコットキャラを考えて欲しいのよ」


「マスコットキャラですか…?」

光が確認する。


「そう。テーマは決定済みだけど、構図が悩むの。だからアタシ達みたいにHやり放題のアンタ達の意見を聴きたいって訳」


「話は分かったので、決まってるテーマを教えてください」


「『クリとリス』を使うのよ! これは絶対譲れないわ!」


「えっ…?」

俺の聴く間違いか?


「だ・か・ら、を使うの!!」


聴き間違いじゃなかった! この人は大声で何言ってるんだ? 近くの人の反応が気になって仕方がない。


「千夏さん。声を抑えるか、せめて逆にして…」

玲さんが小声で彼女に指摘した後、周りを見渡す。


「何でよ? エロに妥協なんてあり得ないから!」


俺と玲さんはキョロキョロするものの、千夏さん含む光達女子は平然としている。俺達が気にし過ぎなのか?


「ちゃんと礼はするから、一緒に考えてよね!」


この銭湯は何度も利用してるし、頑張って千夏さんの力になるとしよう…。

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