第1話 コスプレHはどう?

 今日は大学の講義をこなした後、紗香ちゃんの家庭教師をする予定だ。このバイトは彼女が中3になってから始めたので、日数はそれほど経過していない。


高校受験にしては家庭教師をつける時期が遅いけど、紗香ちゃんは光・静ちゃんが通っていた女子校に進学予定で、学力・偏差値共にクリアしているのは確認済みだ。実際、過去問をスラスラ解いたからな。


にもかかわらず家庭教師をつける理由は『家で勉強する習慣を失くさないため』らしい。静ちゃん・紗香ちゃんのお母さんである香美こうみさんが言っていた。


俺の立場では詳しく訊けないが、紗香ちゃんの進学先も香美さんが選んだと思う。あの子の性格からして、自分から女子校に行くとは思えないんだよな。


あくまで予想だが、母さんみたいに“女の就職は女子校が有利!”という考えかもしれない…。



 紗香ちゃんを指導する時間になったので、彼女の家に向かう俺。香美さんに出迎えられた後、今も変わらない静ちゃん・紗香ちゃんの共同部屋に向かう。


「いらっしゃ~い、せんせ!」

紗香ちゃんはラフな格好をして、学習机に向かっていた。


静ちゃんはいないか。彼女もバイトか、光と遊びに行ってるかも?


「やる気十分だね、紗香ちゃん」


「やる事やらないと、お母さんがうるさいからね。後でいっぱい相手してよ♡」


…妙に色っぽい声を出してきたが、香美さんが在宅中にエロい事をする訳がない。万が一バレたら、俺はおしまいだ。


さて、今日も頑張って指導するぞ!



 紗香ちゃんに与えられた1コマが終了した。彼女はメリハリが利くタイプなので、やる時はやるのだ。その後は…。


「ふぅ。やっと終わった~」

紗香ちゃんは椅子に座りながら伸びをする。


「お疲れ様」

俺も見習いたい集中力だった。


「照ってさぁ、光さんとどれぐらいの頻度でHしてるの?」


オフになった紗香ちゃんは、エロトークが中心だ。その道に引き込んだ俺がとやかく言う資格はない…。


ちなみに俺より1歳下の光に“さん付け”する理由は『百合の気持ち良さを教えてくれた先輩』という敬意が込められてるらしい。


俺だってで紗香ちゃんを気持ち良くさせたはずだが、何故か呼び捨てのままだ。今更そんなことを指摘するつもりはないけどな。


「そうだね…。3日ぐらいに1回かな~」


「思ったより少ないじゃん? 毎日ってると思ったけど?」


「お互いバイトの疲れがあるんだよ。寝る前のちょっとしたイチャイチャなら毎日やってるね」


キスをしたり、軽く体を触り合うぐらいだ。


「それわかるかも。あたしも部活が大変だった日はHより眠気が勝つから」


「そんなに眠くなるの? 紗香ちゃんって、何部にいたんだっけ?」


3年生は既に引退してるので過去の話になる。前聴いた気がするが、うろ覚えなんだよな…。


「テニス部。結構大変なんだよ~」


「そうだろうね…」


コートを動き回るだけでなく、直射日光もある。俺の想像以上にキツイはずだ。


「…照はコスプレHに興味ある系?」


「急にどうしたの?」


「テニスウェアとかアンダースコートに興味あるなら着てあげるけど?」


なかなか魅力的な提案だが、正直に言うべきか悩む。今でも光がナンバーワンだから、彼女にしてないことを紗香ちゃんにさせるのは抵抗がある。


「あたしと光さんって、スタイルそう変わらないから着回せると思うよ?」

俺の心を読んだかのような補足をする紗香ちゃん。


出会った時は結構なスタイル差があったけど、成長期に入った紗香ちゃんが差を急速に縮めたのだ。それでも光のほうが1枚上手だな。


「じゃあ、光に着てもらってから紗香ちゃんに着てもらうよ」

これなら問題ない。1粒で2度おいしいってやつかな?


「りょうか~い」


必要以上に長居すると香美さんに怪しまれるので、俺は紗香ちゃんの家を後にした。

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