第3話 慣れた後に訪れるお楽しみタイム

 ひかりの友達のしずかちゃんを家に上げ、俺達3人は光の部屋にいる。折り畳み机に向かう合うように座る俺と静ちゃんに対し、光は俺のあぐらの上に座ってる状況だ。



 静ちゃんは男に興味があると言っても、マスコットのように愛らしく、大人しい性格の持ち主だ。俺から話を振って緊張をほぐしてあげよう。


影山かげやまさんって、光から俺の名前聴いてる?」


「いえ…。いつも『お兄ちゃん』って呼んでるので…」


「そうか。俺の名前は“てる”って言うんだ。照らすの照だ」


「照…」


静ちゃんの表情を見るに、しっくりこない感じか?


「珍しい名前でしょ? 親から聴いたんだけど、名付ける時に明るいの“あきら”と迷ったらしい。俺はこの名前で良かったと思ってるよ」


「そうなんですか…?」


「うん。だって、誰とも被ったことないからね。俺は個性を大切にするタイプなんだ」


そう考えるからこそ、シスコン・ブラコンの兄妹が存在する訳で…。


「ちなみに、光の名前は即決だったらしい。光って良い名前だよな」

父さんと母さんは良いセンスをしてる。


「お兄ちゃんの『照』も良い名前だよ♪」

光が振り向いて俺の顔を観ながら言う。


「嬉しい事言ってくれるじゃないか光」


「お兄ちゃんこそ♡」


「……」

静ちゃんは俺達のイチャイチャを見つめている。


いかんいかん、光の友達をスルーしちゃダメだ。今回は聞き手になってもらったから、次は静ちゃんにいろいろ話してもらおう。



 「影山さんと光が友達になったきっかけって何なの?」

これなら話し手にならざるを得ない。


「そうですね…。たくさんあるんですけど、一番は体育のペアが光ちゃんだったことです」


体育のペアか。話す機会は多いと思うし、友達のきっかけになるだろう。


「他のきっかけも教えてくれる?」


「えーと…、入学式で教室がわからなかったわたしを助けてくれたり…」


かなり前から顔見知りだったのか。


「光ちゃんとは今も隣の席なんですけど、落とした消しゴムを拾ってもらったり…」


「傘を忘れた私に、相合傘してくれたこともあったよね」

光が補足する。


女子2人の相合傘だと? ヤバい、妄想が次から次へと…。自重しなければ!


「…大体そんな感じですね」


「なるほど、教えてくれてありがとう。影山さん」


女子校にいれば、そういうトラブル? も付き物だよな。もしかしたら、本人達が自覚してない百合展開があるかもしれない。…妄想が止まらないぞ。



 「あの…、お兄さん…」

静ちゃんが遠慮がちに呼んできた。


「どうしたの? 影山さん?」


「話し相手になってくれたお礼をしたいんですけど、思い付かなくて…。わたしどんくさいけど頑張るので、言って下さい」


お礼? ちょっと話し相手になっただけなのに、静ちゃんは良い子だな。光の友達に相応しい。そんな2人だからこそ頼めることがある。


最初だし、ドン引きされない軽いやつにするか。ようやくお楽しみタイムが来たって訳だ!


「わかった。早速言うよ…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る