第14話 終焉

真人へ


お気遣い、ありがとう。この手紙が最後です。

そして物ではないけれど、あなたに打ち明けたいこととお願いがあります。

真人からはもう何も貰うつもりはありません。既にあなたから授かった宝物があるからです。そして、いつだったか、文通を始めた時に私がこの村を出なかった理由について真人が自責の念に駆られていた時がありました。でも、それは間違いです。何故なら私自らがこの子と一緒にこの場所に残ろうとしてこの道を選んだのだから。ずっと真人は私を置いて自分一人が東京に行ったことに対して罪悪感を感じていたようだけど、そんな見当違いのことで悩んでいたなんて……私はこの子の為に、亡くなった姉の為に私自らが選んでここに残ることを選択したのです。それと、いつか病院に行ったと手紙に書いたと思います。お腹にいる子どもの定期検診に行ったの。もうすぐ臨月です。お父さんになる筈のあなたに一度子どもを会わせてあげたい。お正月にでも帰って来て顔を見せてください。


弥生より

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往復書簡 釈迦堂入文 @ibuminmin

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