第3話

 二人目はすぐに調達しに行った。嫌な奴はいくらでもいる。

「私、また生き人形になってたの?」

「どうも一人の生贄あたり一時間なのかも知れない」

「そんな。どうすればいいの?」

「セックスをしよう。妊娠すれば何か変わるかも知れない」

 信子は半信半疑だったが、僕もそうだが、してみた。時間内に終わり、服を着たところで信子は生き人形に戻った。

 一人で二人目の死体を穴に捨てて、ブルーシートを洗った。今日の分の信子は十分だから、僕はシャワーを浴びて寝ることにした。信子の生き人形は信子の部屋に置いた。

 次の日に、三人目と四人目を捧げた。

 その次の日に六人目まで。その後もコンスタントに一日二人を生贄にしては信子と会い、一回は食事をして、一回はセックスをした。

 徐々に独居老人が少なくなって来た。

 十日目。二十人目。流石の村も、失踪者が出ているという噂で持ちきりになっていた。

「あなた、もう二十人目よ」

「そうだな。必要な犠牲だ」

「私考えたの。私のためにそんなに命が必要なのかって」

「必要に決まってるだろう。命が平等な訳ないじゃないか」

「あなたはそう考えても、私には、ごめんなさい、もう耐えられない」

 信子は包丁で自分の胸を刺した。

「信子!」

 血が流れて行く。

 一緒に命も流れて行く。

 助けようがない。そう思ったとき、信子は生き人形になった。

「これは」

 もし次に生贄を捧げたら、信子は死ぬ。そうでなければ生き人形ではあるが死なない。医療機関で戻したら助けられるだろうか。だが、そこで誰かを殺すことは出来ないだろう。

 僕は諦めるしかないのだろうか。

 いや違う。

 僕は信子を寝室に連れて行き、ベッドに横たえる。

 その横に僕も寝て、信子が刺したのと同じ位置に自分でナイフを突き立てる。

 血が流れて、少しずつ僕が溶けて行くのが分かる。僕が死んだそのときに信子は全てを理解するだろう。

 薄れゆく意識、最後に信子の頬に触れる。

 僕の命が流れ切る。


(了)


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生贄 真花 @kawapsyc

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