22話。

「……それで、その人達を連れて来たと。」


「左様にございます。」


 オリゴスの居城となっている古戦場跡にて、今私の目の前には彼の話に出て来た一家と思われる、恐怖からか身体を震わせている三人。それに加えて一家以上に酷く怯えた様子の男達が居る。まぁそれも仕方がないだろう。男達は吸血鬼にいきなりボコられた挙句全く知らない場所に連れ去られた上、周囲をオリゴス達骸骨軍団に囲まれているのだから。一家も私達が味方寄りの立場であることを理解しているからか男達よりは動揺は少ないものの、周りを取り囲む骸骨達に怯えているというよりは……この状況に恐怖を怯えているのかもしれない。子供に至っては必死に泣くのを我慢しているが、我慢しきれずぼろぼろと涙をこぼしている。まぁ子供に不死アンデッドの集団を前にして冷静になれというのは無理な話か。


「静粛に!これよりマスターからあなた方にお話があります。虚偽のないよう、聞かれたことだけに答えなさい。もし先ほど私が聞いた話と違う話をする、または余計な話をすれば……命は、無いものと思え。」


 恐怖や焦燥からかざわついていた空気が彼の一言で一瞬にして静かになる。この人のドスの効いた声、怖すぎるな。生前の私だったら間違いなく一瞬で平伏していただろう。吸血鬼に逆らおうと思う人間の方が少ないはずだ。私の話を始める用意は整ったとばかりに一礼した後身を引いた彼に促されるまま、ひとまず一家の方を向いて話し始めた。


「さて、ではまず君達から。対価を聞こうか。私は平穏を求める。ただ静かに不死アンデッドの研究だけをしていたいのだ。そんな私に、如何なる対価を払って助けを求めるのだ?様々なリスクと君達の提案を天秤にかけ、君達の方に天秤が傾けば助けよう。」


 そう、無条件に助ける等という慈善事業、基、ただ働きをするつもりは一切ない。私は今言った通り不死アンデッドの研究だけをしていたい。先ほどの声だけで人を殺しそうな程威圧感を放っていた彼に目を向ければ、打って変わってにこりと笑顔を見せて一度頷いた。恐らく彼は既に対価について聞いている、そしてそれは私がこの一家を見殺しにしない程度には利益があるということを意味する。


「は、はい……私達が支払う対価は……そこにいる男達の命、そしてその仲間の命全てです……。」


 一家の夫らしき者が恐怖に声を震わせながら、ゆっくりと対価について話し始めた。曰く、彼ら一家は奴隷に落とされる寸前で逃亡した身の上であり、この男達は奴隷商を主に非人道的な生業で生計を立てる一団らしい。殺し、盗み、恐喝、強姦、行っていない犯罪を数える方が難しい程手広くやっている集団で、いなくなった方が世のため人のためになる。命が対価となるのなら、こいつら程打ってつけの奴らは居ない。そう語る声は最初こそ恐怖に震えていたが、徐々に怒りで震えているようだった。


 ふむ、不死アンデッドの研究をしているとは言ったが人の命を対価にできる、なんて話は一切していないんだが。そもそも幾ら死霊術師とは言え人命を利用した研究は法的には禁止されている。それなのにわざわざこんな話を持ち出したということは……。再び今回の面倒ごとを持ってきた本人に再び目を向けると、彼は何か問題でも?と言っているかのようにもう一度にこりと笑みを見せた。なるほど。彼の入れ知恵か。それほど彼らを助ける利点があると?


 少し納得いかないといった様子で考え込んでいる間に、勝手に命を懸けさせられることになった男達がふざけるなと騒ぎ立てる。今度はオリゴスに目配せすると彼は黙って男達の中から一人、無造作に頭を掴み、そのまま。余計なことを話すなという命令に逆らった男達に、すぐに頭を潰すのではなくあえて時間を掛けてゆっくりと、男が苦しみ、もがき、助けを求め、それでも抜け出すことができず苦痛に満ちた悲鳴と叫びを響かせながら絶命していく様子を見せつける。かつての仲間だったものが無残に殺される光景に男達は絶句し、中には吐き気を催しその場に戻してしまう者もいた。一家には吸血鬼の彼が傍に付き、防音の小規模な結界を張りながら視界を覆うようにしていた。よく気遣いのできる吸血鬼だな。


 ……正直、そこまでさせるつもりはなかった。最初の彼の一声のように静かにさせてくれればよかったのだが……しかし、片手を血まみれにしてこちらを見つめるオリゴスがまるで尻尾を振って褒めて貰える瞬間を待っている大型犬のようにしか見えず、そっと自らの内に秘めたまま後でオリゴスはきちんと誉めてやろうと思うのだった。とりあえずそのびくびくしている身体を置きなさい。保管するから。


「……話を戻そう。男達の命が対価となると言ったな。その集団の規模は?先に言っておくが、仲間を合わせても十数人しかいない程度であれば全く足りん。」


「その、正確なところはわかりませんが……私が見ただけでも五十は越えていると思います。噂では二百以上とか……。」


 二百、二百か。それだけいれば確かに数としては十分だな。まぁ最悪五十程度でも今までに手に入った物に比べれば圧倒的に多い。しばらく検体には事欠かなくなりそうだ。


「分かった。数は大丈夫だ。まぁ噂は噂として考えても五十でも十分対価となるだろう。だがまだ問題はある。私はとある事情で此処から動けない。つまりその二百を超える集団を此処に呼び寄せる必要がある。できるか?」


「それは、その……。」


 急に言葉に窮する男。不思議に思っていると、が私の前に立った。




「その先は私から説明いたしましょう。」




 ────────


 突然ですが、話の内容や設定に関するコメントには反応しないようにしようと思います。

 特に今後の展開などに関わって来る内容に関して、結局「今後の内容に触れるので詳細は言えません!」と言う、もしくは「さてどうなるんでしょうねぇ」としらばっくれることしかできないためです。

 ただコメントするな!というわけではないので、この先の展開どうなるんだろうなぁくらいの軽い気持ちでコメントはしていただければ幸いです。もし当たっていたら筆者はドキドキします。ドキドキするだけで路線変更はしませんが。なので当たったら「やったー」と思ってください。

 もちろんコメントを読まないというわけでもないので、頂いたコメントは「読者はこんなことを思いながら読んでくれているんだなぁ」と感謝しながら読ませていただきます。読んだ証拠になるいいねボタンとか欲しいですね。


 疑問や矛盾点があればご指摘いつでもお願いします。応えられる範囲で答えます。言えないとき応えられないときは言えない応えられないと言います。


 あ、このキャラ好き!とかこんなキャラ、魔物がいたらなぁ、みたいなコメントも大歓迎ですので。お待ちしてます。性癖語りましょう。ちなみに筆者は筋肉バキバキ高身長の強い女が性癖ドストライクです。ぶっちゃけいつか出て来ると思います。


 今後とも拙作をよろしくお願いします。

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