16話。

「オリゴス、お疲れ様。」


 冒険者達との戦いを終え、鎧の目元の隙間から矢が突き刺さったままのオリゴスをボス部屋である古戦場跡に戻って来るのを出迎え、一仕事終えた彼へ労いの言葉を掛ける。彼は恭しくその場に跪き、私の言葉を受ける。私としてはもう少し仰々しさを減らして貰っても構わないんだが……きっとそういう性分なのだろう。


 今回手に入れた冒険者の死体、魂、そして遺品となる装備品の数々を確認しながら先ほどの戦いを振り返る。


 まず盾役の重騎士タンクの男が周囲の注意ヘイトを稼ぐ騎士の矜持プロヴォークを発動した。オリゴスの注意が重騎士の男に向いた瞬間、即座に他のメンバーが動き出す。気配を消した盗人シーフの男が素早く背後に回り込み、鎧に覆われている物の繋ぎ目による隙間がある膝関節へナイフを差し込むと同時に、狩人ハンターの女も薄く開いた目の隙間へと的確に矢を放つ。素晴らしい。実に素晴らしい連携だ。これが並みの魔物や、上位種であったとしても肉体を持つ者であれば、膝関節に傷を負い機動力を欠いた上に目元に迫る矢によって次の行動を制限される。確実に先手を取っていただろう。


 しかし、オリゴスには肉体がない。首無鎧デュラハンであれば首がなく、骸骨騎士スケルトン・ナイトであれば節々に骨が見えるため骸骨スケルトン類であることが分かる。きっと彼らは歴戦の冒険者ではあるのだろうが、全身鎧フルプレートで中身がどんな魔物なのかは分からなかったせいか、骸骨将軍スケルトン・ジェネラルとはどんな魔物なのか知らなかったせいか、彼らは判断を誤ってしまい……それが致命的な過ちとなってしまった。


 膝への攻撃にも、目元への攻撃にも一切怯むことなく、オリゴスは動き出す。膝へとナイフが刺さったまま、目元へと矢が突き刺さったまま、構えた大剣を横へと一閃。目にも止まらぬ速さで振られたその一太刀は、虚空を斬ったかのように見えた。余りの速度に息を吞む盗人シーフ。次の瞬間、ゆっくりと重騎士タンク狩人ハンターの身体が胸元の辺りから上下に分かれ……どちゃっ、と仲間の死を告げる鈍い音と共に地面へと崩れ落ちた。重騎士を捕らえたその剣は、剣圧だけで狩人までをも両断したようだ。


 その時、リーダー格の男が雄叫びをあげながら背後から斬りかかった。不意打ちで叫んでは意味がないだろう、とは思うが彼も仲間を一瞬のうちに失って正常な判断ができなかったのかもしれない。オリゴスはすぐさま反応してみせ、振り向きざまに懸命に立ち向かう男の刃へと振り下ろす。鍔迫り合いになることすらなく、男の剣はあっさりと打ち砕かれその身を斜めに切り裂いた。


 いつの間にか距離を置いていた盗人シーフの男は、リーダーの男の死に直面して生を諦めたのか今にも泣きそうな、絶望に歪んだ表情でその場に崩れ落ちた。オリゴスがゆっくりと歩みを進めても微動だにせず、うつむき、項垂れたまま剣が振り下ろされるのをただ待っていた。


 こうして、オリゴスの、そして我がダンジョンの初戦闘は幕を閉じた。そして思ったことがある。


 予想より冒険者達弱かった。


 いや、これは少し語弊があるな。彼らは人間の中ではかなり強い部類に入る。何なら上から数えた方が早いくらいには強かったはずだ。少なくとも以前の私が彼らと戦うことになれば苦戦していただろうし、骸骨スケルトン軍団もかなりの被害が出ていただろう。これでも過去の私は国が処理に乗り出す程度には力を付けていたからな、人間の域を出ることはなかったが。ただやはりというか、骸骨将軍スケルトン・ジェネラルことオリゴスが強すぎた。天災に近い存在に、たった数人の人間如きが敵うはずもない。ここは様子見のためにもオリゴスではなく骸骨騎士スケルトン・ナイト達に対処させるべきだったか。


 次の戦闘があった場合のことを考えつつ、私は冒険者達から手に入れた戦利品をどのように活用しようか考えるのであった。


 ────────────


 更新遅れてすみません!

 お仕事が忙しかったのと、作業環境がPCなのですがPCを触れない状況になってしまって……。


 戦闘シーンはありませんと言いましたが、自分の練習のためにも回想で軽くではありますが少し書いてみました。

 どうも俯瞰して見る状況というか、場面を立体的に捉えることが苦手でして……今後も戦闘シーンでは違和感を覚えたり、前に書いてたことと違う、みたいなことがあるかもしれないので、そうならないように頑張ります。

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