17話。

 今回の冒険者達との戦いで得た物の中で、非常に気になっている物がある。冒険者達の魂である。


 ダンジョンにおける魂の活用方法というのは大まかに二つあるらしく、一つは魂をダンジョンに取り込むことによって糧とし、ダンジョンを強化する方法。これは効果としては分かり易いものの、強化内容は取り込んだ魂の量に応じて変わるらしい。ただ、手に入れた魂の質、生前にどれだけの強者だったか、生前はどれだけ心が清らかだったかは関係なく取り込んだ量のみによって強化幅が決定するとのこと。


 では一つ目のやり方に使うにはもったいない、質のいい魂を手にいれた場合はどうするのか、そこで二つ目。此方が器を用意した上で、その中に手に入れた魂を定着させることで直接配下に加える方法。しかし、器の性能が魂と比べて低かったり、そもそも器との相性が良くない場合は器に定着することはなく、寧ろ魂が消滅してしまうそうだ。代わりに魂の質が良ければ良いほど、配下に加えた時、つまり魔物となった時の性能が高い。所謂ハイリスクハイリターンという奴だ。


 以前手に入れた村人達の魂は、敵対する意思はなくダンジョンであることも知らずに此処に飛び込み、そのまま命を失ったという事情が余りにも哀れで解放した。まぁそれは理由の半分ほどで、残りの半分は村人程度の魂を手に入れたところで活用方法が対してないというところにある。量は少ないし、たいして質も良くはない。だが、今回の冒険者達は人間という種族の中ではかなりの実力者だった者達。是非とも活用したい。あわよくば不死アンデッドとして復活させ、手駒としておきたい。


 そこで、私は新たな生を得て初めて死霊術を直接行使することにした。その術は、である。


 本来、魂という物は一つにつき一人分の記憶、性質を持ち生前に得た知識や技術は此処に残っている。しかし、魂とは所詮情報を保存しておくかめに過ぎない。魂を操る際に欲しているのはその力、及び知識、技術。その魂個人の記憶は大部分が必要ないのだ。そのため私は死霊術を用いて人為的に魂に介入し、魂の内側に宿るその者個人の記憶を覗き込み、不要と思われる箇所をことで、一つの魂に複数人の力を宿すことに成功した。その術を、冒険者達の魂を統合するために使おうというのである。


 難点としては例えば一つの魂が生前にとある技術を習得したとして、その技術の習得に関わった記憶を削り取ってしまうと、仮にその技術に関する他の情報を幾ら残していても技術を会得した理由を魂が覚えておらず、不完全なものになってしまうことだ。不完全さは物によって変わるが、魔法であれば出力の調整が上手くできなかったり、武術であれば動きの一部が再現できなかったりしてしまう。そうなってしまっては良質な魂を用いても元も子もなくなるため、作業の際は細心の注意を払う必要がある。


更に言えば、魂という物は器を失くした途端、目には見えない消滅へのカウントダウンが始まってしまう。それは一分間かもしれないし、一時間かもしれないし、一日かもしれないし、一年だって保つかもしれない。こればかりは魂ごとに違う上に事前に把握する術もないため、魂を扱う際には極力作業時間を短くする以外に私にできることはない。だが、なんとダンジョン内で手に入れた魂は格納されている間は一生変化なく保存されているらしいではないか!素晴らしい!実に素晴らしい!魂に関わる死霊術を実行する時の大きな問題が一つ、無条件に解決するとは!やはりここは私の最高の実験場だ!一生此処に住む!元から他にアテもないが!


駄目だ、考えただけで楽しくなってきた。早速実験に取り掛かるとしよう。ひとまず傍に仕えていたオリゴスに骸骨騎士スケルトン・ナイトは鍛錬をさせつつ、オリゴス本人は休憩するように告げた後、一人になるためにダンジョンコアが置いてあった部屋へと一人で籠る。


よし、まずは冒険者達の過去の記憶を読む所からだな。私の知っている知識と外の世界の知識が整合するかの実験も兼ねて、じっくり読ませて貰うとしよう。


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 ランキングの通知が二つ来てるなぁ、と思ったら異世界ファンタジーだけでなく総合の週間ランキングも500位以内に入ってたみたいです。

 読んで頂いた皆様、評価をして頂いた皆様、そしてコメントを下さった皆様、本当にありがとうございます。

 今後もマイペースに更新をしていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。


次回、いや多分次々回、新規仲間追加(予定)です。

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