14話。(???視点。)

 何なんだ、このダンジョンは。


 至る所に仕掛けられた大量の罠。盗人シーフのミコーゾが盗人の勘センス・トラップで感知してくれなければ、全てを把握することは絶対に出来なかった。罠の内容自体はよくあるものだったが、道を一歩進むたびに何かしらの罠がある。解除自体も難しくはない、盗人シーフでない俺や他のメンバーでも対処出来るくらいだ。しかし、それが数十、数百となってくると話が変わってくる。罠の解除をしながら次にどこに仕掛けられているか分からない罠に気を配り続け、それを何度も何度も繰り返す。常人なら途中で集中力が途切れ、罠にかかってしまうだろう。先にこのダンジョンに入った村人達には不可能な話だ。残念ながら罠に掛かり、叫ぶ暇もなく命を刈り取られてしまったに違いない。そういえば一つだけ杜撰な罠があったな。あのあからさますぎる小部屋。確か左と右の道に一つずつあったが、流石にあれに引っかかる者はいないだろう。


 あと、未だに一体も出てこない魔物。これもおかしい。普通ダンジョンというのは魔物で溢れている。ダンジョン内の空気に含まれている魔力から生成されているという話だが、このダンジョンには魔物がいない。いや、まだ探索していない箇所があるからいない、とは言い切れないが……それなりに探索をして一体も魔物を見ないというのは不思議なことだ。出来たばかりのダンジョンだからか?いや、以前新しく出来たと思しきダンジョンを調査した時はかなりの数、種類の魔物がいた。ここは罠が主体のダンジョンなのだろうか。しかし一つだけ、心当たりがある。


 道を抜けた先の広場から放たれている異常なまでに強い圧迫感。これほどの重圧は今まで感じたこともなかった。飛竜ワイバーンを討伐した時も、過去に偶発した骸骨騎士スケルトン・ナイトの討伐の時も、強敵ではあったが立ち向かうことに恐れは抱かなかった。だが、は無理だ。まだ姿すら見ていない相手を恐れるに十分すぎる存在感。明らかに人知の届く範囲の存在じゃない、今すぐここから逃げろと俺の勘が言っている。


 他のメンバーも同じことを考えているようだ。重騎士タンクのランドも、狩人ハンターのキャスリーも、目が合うだけで小さく頷く。ミコーゾに至っては左の道を奥まで進んでからずっと顔を真っ青にしたままだ。気配に敏感な職業ジョブだ、きっと俺達以上にやばいものを感じているのだろう。そして、経験を積んだ俺達だからこそこれ以上はまずい、と全員が感じている。


 まだ真ん中の道は探索していないが、まず間違いなくここにも罠が設置されている。左と右で罠の種類が違ったことを考えると、また別種の罠だろうが……今はここで切り上げて、後日大規模な調査隊を結成した上で改めて調査し直すことが懸命だと思う。少なくとも俺達四人だけではダンジョンの奥まで調査することは不可能だ。


 四人でそう結論を出し、荷物を纏めて早々に脱出しようとしたその時。外から日光を取り込んでいた入り口が唐突に土の壁に覆われる。周囲に灯りもなく、真っ暗になった空間に次々に灯りが灯っていく。壁にたいまつ?さっきまでそんなものは……。


 しかし、それ以上別の事を考える余裕はなかった。


 中央の道から、ダンジョンの奥で感じた強大な圧が迫って来る。ずん、ずん、と。一歩一歩地面を踏みしめて。少しずつ、少しずつ迫って来る。姿はまだ見えていないのに、足音が、圧が近づいて来るたびに心音が加速していく。呼吸が浅くなり、身体が震える度に歯がかちかちと音を鳴らす。ついに、が姿を現した。


そこには、黒い鎧を纏ったが立っていた。



────────────


お待たせしました、14話です。

土日は名前に悩むのかと思ったら普通に用事が出来て更新できませんでした……。


名前は結局勢いで決めましたね。苗字とか考えたら多分死ぬほど疲れるのでなしにしました。

確かヨーロッパとかは16世紀くらいまで苗字の文化が根付いてなかったって記憶がぼんやりあるので、ナーロッパ世界観ということでここはひとつ……。


あと、彼らは男3:女1です。以下の通りです。


男:リーダー、重騎士、盗人

女:狩人

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