第21話
私はできる限りの推理をした。きっと合っているだろうと思っていた。その事に対する菊さんの反応はというと…
菊「チッ、見抜きやがったのかよ」
それまで見せなかった冷酷な様が表れていた。まるで、醜い化け物に成り果てたかのような印象を抱いた。
そして、続けてこう言った。「そうだよ、犯人はこの俺だ。だからどうしたっていうんだ?」
正直怖かった。まともに口も開けなくなりそうなほどに。しかし、私は事件を解決に導く者として、聞かなければならないことがあった。
響「あなたが犯人ならば答えてください。なぜ三人を殺したのですか。何かあなたに関係でもあったのですか」
彼は冷徹な笑みを浮かべながらこう言った。
菊「あいつらは関係ねぇよ。なんならお前らを殺しても良かったんだぜ?ま、美しい芸術ってのに必要だっただけだ」
美しい芸術。血塗られた惨劇を引き起こしながら、全く似つかわしくない発言だ。
そこにいた誰もが、理解できないまま立ちすくんでいた。それを見かねたのか、彼はこう言った。
菊「理解できないのか?ならこっち来い。いい物を見せてやるよ」
彼に言われるがまま、私たちは外へ出た。たった一人、椿さんを除いて。気分が悪いと言っていたが、実の夫が人殺しをした事実に耐えられなかったのか、それとも後から見せられる物が分かっていたのか、それはわからずじまいだった。
私たちが菊さんに見せられた物は、一つの倉庫だった。どうしてそんな物を見せようとしているのか、私は考えを巡らせる一方だった。
そんな私を、倉庫の中の怪物はどのように見ていたのだろうか。
菊さんは、何も言わずに倉庫の扉を開けた。そこで私たちが見たのは、美しいと称された、おぞましい芸術だった。
倉庫の中には、人喰い蜘蛛をかたどった像と、死体から切り落とされていた足が、血の匂いと共に隠されていた。
一体誰がこの現実を受け入れたいと思っただろうか。それを見ただけで、私たちに一切の濁りもない、ハッキリと分かる程の恐怖心を抱かせた。
そんな状況でも、いや、そんな状況だから菊さんは笑っていた。猟奇的な笑い方をしながら、どこか嬉しそうな様子でこう語った。
菊「これが俺が作り上げた芸術だ!ちゃちなレプリカなんかじゃない、本物の人間の足を使ったからできる、最高の作品だ!」
私は、その発言を聞いて、すぐに今回の事件のとの関係を感じ取った。そして、あることを彼に尋ねた。頭では理解していながら、心では理解することを拒んでいた。
響「まさか、そんなことのために殺人を犯したと言うのですか!?」
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