第20話

今回の事件を可能にするために犯人が最初に行ったこと、それは睡眠導入剤を仕込むことだ。睡眠導入剤の作用によって私たちを眠らせることで、その犯行を誰にもばれずに行えるようになるから、犯人にとっては都合がいいのだ。


眠った私たちは、一人のある人物を除いた全員が、犯人によって部屋まで連れて行かれた。部屋まで連れて行ったのは、私たちに犯行をばれないようにするためだ。


これらの作業を全て行った犯人は、ここから二つの殺人を行う予定だった。


まずは、部屋に連れて行った河童さんの殺害だ。睡眠導入剤で眠っていたとはいえ、目覚める可能性は十分にある。そこで犯人が使ったものが、現場に落ちていた石像だ。上手く頭をそれで殴れば、確実に気を失わせることができる。あわよくば撲殺も可能だ。


しかし、ここで犯人はミスを起こした。上手く殴れなかったせいで、河童さんが目覚めてしまったのだ。しかし、犯人は咄嗟の起点で部屋にあった刀で河童さんの腹部を刺した。結局、河童さんは死んでしまった。


もう一人の犯人の狙いは、一玉さんだ。犯人は睡眠導入剤で私たちを眠らせた後、一玉さんだけは大広間に残しておいたのだ。首吊り殺人に見せかけるためのトリックを実行するために。


犯人は、首吊り偽装のために、首に縄をくくる必要があった。縄は倉庫にあったものを使ったと考えられる。その縄を、倉庫の床に空いていた穴から通した。その穴は大広間に繋がっていたから、そこに縄を通せば、大広間にいた一玉さんの首を吊れる。


そして、犯人はその縄を使って一玉さんの首をくくった。そのことを確認した犯人は倉庫へ行き、今度は柱に縄をくくった。このとき、相当力を強くこめたのだろう。柱にその跡がはっきりと残ってしまった。


こうして、首吊りトリックは完成した。しかし、二つのアクシデントがおきてしまった。


まずは、犯人が倉庫で首吊りトリックを実行していた時だ。本来予定になかった三人目の被害者、玉藻 舞が来てしまったのだ。彼女は夢遊病を患っていたから、気づかないうちに倉庫へ行ったのだろう。


しかし犯人にとっては、自身の犯行を見られたとなれば都合が悪い。そこで犯人は、急遽彼女も殺すことにした。犯人は、倉庫にあった猟銃を使って彼女の頭を撃った。玉藻さんは犯人の顔すら見れないまま殺されてしまった。


玉藻さんを殺した犯人は、死体を露天風呂へ運ぶことにした。この時、血が床につかないように、倉庫にあった布団を使って死体を運んだ。


そして、犯人は死体を持ったまま、露天風呂の女湯に入った。犯人は男だったが、睡眠導入剤で他の人はみんな寝ていたから、疑いをかけられずに入ることができた。そして、犯人は露天風呂に死体を沈めて、この犯行は完了した。


もうひとつは、首吊りトリックが終わって時間が経った後だ。


一玉さんの死体を吊っていた縄がちぎれてしまった。そのせいで、トリックが見破られる可能性があった。そこで、犯人は証拠を処分することにした。


犯人は大広間と倉庫の二箇所の証拠を処分する必要があった。犯人は大広間だと目立つから、先に倉庫の方へ向かった。


犯人は、倉庫の柱にくくった縄を処分しようとした。しかし、首吊りトリックで強くくくったせいで、上手く外せなかった。


力ではどうしようもないと思った犯人は、縄を切ることにした。倉庫にはハサミがあったから、それを使ったはずだ。そうして、犯人は縄の処分ができた。柱にはこの時の傷が残っていたが。


三人を殺した犯人は、最後に残虐極まりない行動に出た。被害者それぞれの足を切り落としたのだ。


この行動には、人喰い蜘蛛を印象付ける意味があった。特に、首吊りトリックは人間にはできないように見せかけることができたから、さらに印象を強めることができる。


このような殺人を行った犯人、「人喰い

蜘蛛」の正体は…


響「もう反論はありませんね?火車 菊さん!」

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