第19話
犯人も後になってトリックが崩れるとは考えていなかっただろう。縄がちぎれて、死体が大広間の机へと落ちてしまったのだ。
犯人はそのせいで縄を処分することになった。しかも、大広間と倉庫の二箇所にあるせいで、どちらも処分しなければならない。
そこで、犯人は先に倉庫の縄を処分することにした。倉庫の方が目立たないと判断したのだろう。
そして柱にくくりつけた縄をほどこうとした。しかし、落ちないようにしたら、今度は強くしすぎたせいでほどけなくなったのだろう。
そこで犯人は「ほどく」のではなく、「切る」ことにした。その証拠は柱に着いていた切り裂いたような傷、ハサミで縄を切った時に出来た傷だ。
犯人はそうすることで縄を回収できた。そして頃合いを見て大広間の方も処分しようとしたはずだ。ただし、この時倉庫から出たところで私と一織ちゃんに遭遇している。
「随分と長くなりましたが、これでトリックの証明は終了です」と一言言った後、犯人の顔を見てこう言った。
響「私の推理に間違いはありますか?この事件の犯人…火車 菊さん!」
全員が一斉に菊さんの顔を見た。菊さんも余裕を失ったような表情を見せたが、すぐに落ち着き、こう言った。
菊「とても良い推理だとおもいますが…なぜ私が犯人なのですか?倉庫の場所を知っていることが理由なら、それは家内も同じです。それに、鍵さえあれば誰でも入れますよ?」
その反論は間違いない。あの倉庫の場所は、ここの主人である椿さんなら知っているだろうし、鍵を借りれば誰でも入れるだろう。だが、その反論、斬ってみせる!
響「いえ、残念ながらその可能性はほとんどありません。 私たち客が犯人ならば、犯行自体はできたとして、建物の構造を正確に理解したうえで倉庫の鍵を開けて、さらに料理に睡眠導入剤を仕込む、という行動を全て行う必要があります。
あなたたちが易々とそんなところに客を入れるとは思えません。どう考えてもあなたたちの方が疑わしいのです」
ここまで言われたが、菊さんはまだ椿さんが犯人だと言いたそうな様子だった。しかし、私はそんな隙も与えずにたたみかけた。
響「それに、椿さんも犯人だとは考えられません。睡眠導入剤で眠った私たちは犯人によって部屋まで運ばれました。つまり、犯人には力があるということが言えます。
これが、椿さんが犯人ではない理由です。だって彼女はバケツすら持てないんですよ?人を持てるわけがないじゃないですか」
ここまで言い終わったころには、菊さんは、もう反論する気力すらなくなっていた。そして、私は「それでは、最後に事件の流れをまとめてみましょう。それでも穴があれば教えてください」と言った。
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