第17話

アリバイ潰しのトリックが証明されたところで、次は三人それぞれの殺害を推理していく。そうすれば自ずと犯人も分かると考えたからだ。


そんなわけで、河童さんの殺害について推理していこう。彼の殺害で不可解な点は二つ。彼の死因と部屋の間違いだ。


彼の死因だが、石像による撲殺、刀による刺殺、どちらもありえるのだ。


このことを全員に話すと、菊さんが驚いて、

「石像?なんでそんな物が?」と言った。どうやら網縫館には石像を置けるスペースがないらしい。殺人のために石像を調達したのだろう。


さらに石像の使われ方について、「本来撲殺で済む予定だったものが、失敗したから刺殺をしたのでは?」という可能性が礼司さんから提示された。その可能性には私も賛成だ。


この考えには睡眠導入剤が関係していて、睡眠導入剤が作用したとしても目が覚めたら意味がない。だから起きる前に意識を失うように石像で殴ったのだろう。しかしそこでミスが生じて、河童さんの目が覚めた。そこで急遽刀で刺したのだろう。刀は部屋にあったため咄嗟に凶器にすることはできた。


もうひとつ、部屋の間違いだ。私たちは気を失ったならば犯人が運んだと考えるのが妥当だ。そうなると、犯人が誰がどの部屋に泊まっているのか知らなかったと考えられる。しかし、この情報だけでは犯人は絞れない。


と思っていたのだが。「それが…私しかそのことは知らなかったんですよね」と言った一つがいた。椿さんだ。見取り図を渡したのも彼女なので、これは信じていいだろう。


これによって、椿さんは犯人である可能性がグッと減った。自らが犯人では無いと思い込ませるためにわざとやった可能性もあるが。


とにかく、これで河童さん殺害の流れは推理できた。次は玉藻さんの殺害について推理していこう。


とは言っても、倉庫の中で推理した、「犯人は玉藻さんを猟銃で撃ってから布団に乗せて運び、最後に露天風呂にしずめた」という流れで多くのことは整理できたが。


あまり納得しないような凪もいたため、一度倉庫へ一緒に行った。凪は倉庫の中の様子を見て納得したようだ。


戻った私に対して、椿さんがいきなりこう言ってきた。


椿「なんてわざわざ倉庫で殺したのですか?」


普通に考えればそうなるのもおかしくない。睡眠導入剤が効いていたのだから、わざわざそんなところで殺さなくてもいい。


ただし、これは「睡眠導入剤がしっかりと効いていたら」という前提の下に成り立っている。彼女が倉庫で殺されたことにも理由が存在している。


響「彼女は夢遊病を患っていたのです」

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