前日譚『三度の大戦、目覚める機神』

そして失われた歴史、通称『失歴』からおよそ6万年後の世界

機甲歴十七年に勃発した天月対カキシュ帝国との戦争

カキシュ帝国からの一方的な宣戦布告から始まった大戦

後に『第一次天巨大戦』と呼ばれることになる戦争において、カキシュ帝国の圧倒的な物量に何とか持ち堪えていたものの、少しづつ押され、戦線を後退させていく


敗戦も確実と言われ始めた頃、それが発見された

偶然発見された失歴当時の軍事施設のようにも研究施設のようにも見えるような遺跡、その最奥に眠る17人の始祖機

その外見は人とほぼ同じだったが、決定的に違うところがあった

彼らを包む透明な素材は当時最も威力がある炸薬ですら煤一つつかない代物

しかし彼らは、それぞれのやり方でいとも容易く内側から破壊し、起き上がってきたのだ


そして彼らは、当時の首都まで残り数十kmまで押し込まれていた戦線を文字通り一日で押し上げ、目覚めてから僅か3日で電撃的に休戦協定を結ばせるに至ったのだ


そしてその半年後にカキシュ帝国の再びの侵攻を発端とした第二次天巨大戦

しかし始祖機は条約の影響で参戦することが出来なかった


封神条約

余りにも強大過ぎる始祖機の参戦を禁止し、彼らの兵装・能力による人員・建造物・地物への重大な影響を先んじて抑え、無くすための条約


これ幸いと和平を破り、再度国土を蹂躙され始めた天月

やはりその物量は圧倒的であり、じわりじわりと侵食され始める

その中で、その勢いを押し留めたのは、たった12人だった

最初期においてなんとか最低限の性能を有した現行型のPFの直系の先祖である第一世代PF12機で構成された部隊を前線に投入し、戦線を拮抗

場所によっては見事に押し返す活躍を見せた

そして彼らの各種データを元に後継として製造された12機の先行量産試作型第一世代機

正に彼らは戦場のあり方を塗り替える物だった


歩兵程度の大きさでありながらも瞬間的に音速に迫る速度、重戦車を片手でひっくり返す膂力

そして、本来歩兵が単独で運用することを前提としていない重火器、分厚い装甲を容易く切断する近接兵装を数多く携行し、戦場を疾駆する

さらに、少し後に発掘された失歴当時のTDも同時に投入したことにより、少数で大量の軍勢を押し留めることに成功する

その後戦時下特殊命令の発令により、正式量産型第一世代機を適合者と共に前線に投入

拮抗していた戦線をじわじわと押し返す

それに焦った帝国と再度の休戦協定を結び束の間の平和が訪れた


そして本来全体に配備するはずだったものの、製造ラインの大半をPFの製造に回していたため、極小数しか配備できていなかった武装がほぼ全機のPFへ配備された

TD系統機の現行型の先祖となる試作型が開発されていた頃、緩衝地帯のほんのいざこざを発端として第三次天巨大戦が勃発

精鋭揃いの高い質を誇る天月軍

圧倒的な物量をもって戦線を構築するカキシュ帝国軍

その戦いは正に五分五分

後期に正式量産型第二世代機が投入されるもそれは変わらない

戦線はほとんど前後せずこの後1年半後に最後の休戦協定を結ぶことになる


そして、それが帝国との最後の和平となった

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機神の適合者 @Yamato_Kurogane

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