第21話 刀気戦

ガヤガヤ


いつもの道、いつもの時間に学校に向かうオレと椿、今日はいつもより何か騒がしいような?


「何かあったのかな?」


「さぁ?妾も違和感は感じておるが…」


「もしかして有名人でも来てんのかな?!!誰だ!!タモさんか!!さ●まさんか!!マツオデラックスか!!ダウソタウソか!!!もう会えるなら誰でもウェルカム!!!」


「有名人司会者ばっかじゃのぉ…」


ガキィン!キィン!


はい違いました…明らかに誰かバトってました。どうしてくれんだこの虚無感

しかも金属音が辺り一面に響いてる気がするんだけど、嫌な気しかしないんだが


「なぁ椿、さっきから聞こえる金属音からしてオレの予想なんだけどさ」


「聞くまでもなく、当たりじゃろうな」


だよね〜…こんな住宅街のど真ん中でドンパチやるなよ…危なっかしい。


「おい!なんだよあれ!」


「やべぇぞ!2人とも刀持ってお互い振り回しあってる!」


「おい、誰か警察呼べよ」


「ちょっ…押さないでよ!危ないじゃない!」


やばいな、どんどんと周りが混乱し始めてる。

こんな状況だと言うのに、慣れ始めて来てる自分がちょっと怖い。


「椿、オレ達は一般の人達に被害が出ないように慎重に移動させよう」


「うむ、じゃがどうやって」


そこなんだよなぁ〜、どーしよ…助けて〜スーパーマーン!とか叫んだら誰か来てくんないかな?


「うわっ!こっちに来たぞ!!」


ワァァァ!!!


野次馬の人達が困惑する中に、戦っていた2人の影が落ちてきた。


「くぅぅぅ…やっぱキッツいなぁ」


オレ達の目の前に落ちてきたのは、オレより少し年上くらいの女性だった。

…大学生くらいかな?


「大人しく斬られろ、苦しまずに殺してやるから」


女性を追いかけて空から落ちてきた男が、鉈のような武器を持って歩み寄ってくる。

どうせなら飛行石でも持った女の子が落ちてきて欲しかった…親方!空から女の子が!的な


「ベぇー!絶対にお断り!」


女性は舌を出して、男を拒絶していた。

随分と肝の座った人だなぁ、どっちかって言うと追い込まれてる側なのに。


「神威、野次馬に来ていた人達は全員何とか避難させたぞ!!」


はやっ!いつの間に、流石は相棒。

なら、次はどうする…オレと椿もトンズラしちまうか?


「よしっ…オレ達も避難「アンタなんかアタシに勝てても彼氏が倒してくれるわよ!!!」」


随分と威勢がいいけど、なんでオレの近くから離れようとしないんだこの人


「ほう、じゃあそいつも契りを交わしてるってことか…どこにいる?一緒にたたっ斬ってやるよ」


「それは…えーっと…」


何故か彼氏の居場所を聞かれてオドオドしだす女性、何か不都合でもあんのか?


「!」


と、いきなりオレの方を見てニヤリと笑った。

え?なんでこっち見て笑うの?


「この人よ!!!」


「「え?」」


「ほう」


オレの腕にガッシリとしがみついて、オレを彼氏扱いしてきやがった。

それを見て、オレと椿の目が丸くなる。


「お前がそいつの男か」


「違いま「お願い!助けてダーリン!!!」アンタ身勝手過ぎない?」


何この人?正気か?


「なら、斬る」


「だっから違うっての!!!」


男が、刀を構えて一気に突っ込んできやがった。

こうなったら後には引けねぇ、仕方ないが戦うしかなさそうだ。


「椿!!」


「神威!!」


椿もオレと同じ考えだったのか、既にオレの方へと向かって来ていた。


「ゆくぞ!!」


「おう!」


オレは椿と口付けを交わし、椿を刀に変身させた。


「!」


「え?!!」


「うっし、準備完了」


『気をつけよ神威、お主の刀気の出せる確率はまだ5と言ったところじゃぞ』


「わーってる、何とかするさ」


「そうか、お前の女も契りを交わしてるなら、お前自身も契りを交わしてても不思議はねぇか」


だから、オレの女じゃねぇって…初対面だっつーの。


男が刀を振り上げ、オレの頭上から刀を振り下ろす。


「出ろ!刀気!」


オレが念を込めると、刀が薄く青い刀気を纏った。


「でた!!」


『来るぞ!!』


振り下ろされた刀を、刀気を纏った刀で弾き返してやった。

うん、中々どうして悪くないんじゃない?


「チッ」


「おっし!」


『やるのぅ神威、じゃが気を抜くなよ』


「わーってるよ!」


オレは体制を崩している男に向けて、刀を振る。


「『桜華流』」


「くっ」


「『枝垂桜』」


「そいつの刀に触れちゃダメ!!!」


だがオレが振った刀は、いとも容易く弾き返されてしまった。


「はっ!?」


『そんな!!!』


「甘いな」


男は体制を崩したオレに向かって、刀を横薙ぎに振るい、胴切りを狙ってきたのを、オレはバク転でかわす。


「あっぶねぇ、もうちょっとで上半身くんと下半身くんがお別れするとこだった」


『枝垂桜は桜華流の中でもかなり重い一撃として打ち込む技なのじゃが…あやつまさかそれを弾き返すとは、相当な腕力じゃの』


確かに、普通に考えりゃアイツの腕力がかなりのものに思える…けど、なぁんか引っかかっかるんだよなぁ。


「多分違うぜ椿」


『?どういう事じゃ神威』


「アイツに刀を弾かれた時に思った。アイツの返し方は腕力で弾いたというより、刀同士がぶつかった瞬間、自然に弾き返されたような感覚だった。何か高速で回転する金属に打ち込んだ時のような」


そう、アイツの弾き返し方は、腕力にものを言わせて弾いた時の感覚じゃなくて、何かに巻き込まれてその反動で弾かれたような感覚があったんだ。

これはかなり重要な事だと思う。


「気を付けて!今のがあの男の能力よ!!!」


やっぱりそうか、となるとどんな能力で弾き返されたか、しっかりと見極めねぇと


「椿はどう見る?」


『まだ決まった訳では無いが、刀気と関連しているか…もしくは強制的にぶつかったものを弾き返す能力か…じゃな』


どちらにしても、気を抜いた瞬間ぶった切られそうな


「オレの能力を探ってるようだな」


男は刀を肩に当て、オレに話しかけてくる。

オレの出方を伺いたいってところか


「さーて、どうだろうな。教えてくれてもいいんだぞ?」


男は口角を上げ不気味な笑みを見せつつ、刀を構え直す。


「心配すんな、戦ってる内に嫌でも分かるだろうからな」


それ、気づく前に決着…なんてこたぁないよね?

嫌だよ?そんな終わり方すんのは


そんな事を考えてる内に、ヤツはオレの目の前まで迫ってきていた。


「…ッ!!?」


『ボーッとするでない!!戦闘中じゃぞ!!!』


そうでした!!オレ慣れてきたとはいえまだ戦闘経験は新米のペーペーでした!!!まだ中忍試験を終えるかどうかぐらいまでしか強くなってませんでした!!


オレは即座に後ろに下がり、刀を逆手に持つと、体制を横にして飛び上がり、回転しながら男に向かって飛ぶ。


「『桜華流 桜牙おうが』」


「ッ!!」


空中で回転したまま、ヤツの胴体の真上から一太刀斬り掛かる。


ズバン!!


回転を止めて、地面に着地するが、オレが足を着いた場所にヤツはいなく、ただ地面をえぐった光景だけが見えた。


「消えた?」


『上じゃ!!!』


椿の掛け声で上を見あげると、男は空中に飛び上がっていた。


そして、ヤツに気を取られて気付くのが遅れたが、耳を澄ますとチュイィィンという音が奴の方から聞こえてくる。

なんの音?


「シッ!!」


「あっぶ!!」


奴が振り下ろす刀を、オレは右にかわして距離をとった。


ギャリリリという音が鳴り響き、奴が刀を振り下ろした地面がエグれていた。

…音?なんかおかしくね?


『気づいたか?神威』


「あぁ、あの音はまるで…」


チェーンソー、そしてその音がアイツの刀から聞こえるってことは。


「お前の能力、刀身に目には見えずらいノコギリのような刃がついててそれを回転させるチェーンソーの能力だろ。だからオレの刀を弾き返すことが簡単に出来てた。」


「あぁ、正解だ」


お、当たった。


「椿!オレも相手の能力が察せるようになってきたぞ!凄くね?!!やっぱオレも成長してんだね!!」


『集中せんか!!!戯け!!!』


怒られた…せっかく喜んでたのに


「タネがわかったからって、オレに勝てるとは限らねぇぞ」


男はオレに向かって走り出し、刀を大きく振り上げた。


『刀気を纏うんじゃ!!』


「わわっ!!」


オレは慌てて刀に刀気を纏わせようと念じるが、刀気が出ない。

やっべ!斬られる。


『くっ!』


間一髪で、椿がオレの身体を操って奴の攻撃をかわしてくれた。

たっ助かった〜。


「サンキュー相棒」


『全く、修練が足りぬぞ愚か者』


毎回地獄のような修行させといて、鬼ですかアンタは。


男は振り下ろした刀を、オレたちに真っ直ぐ向けて狙いを定める。

?何してんだアイツ。


「…飛刃ひじん


「『はっ?』」


ビュンビュンとオレ達の方へ刀から何か小さい粒のようなものが勢いよく飛んでくる。


『神威!!あれは奴の刀についていた刃じゃ!!!当たれば身体がエグれるぞ!!!』


「は!?」


何その危ない技!!?

かわすしか…いや、間に合わねぇ!!


『桜華流じゃ!!』


「わかった!!」


オレは、刀を縦横無尽に振り回しだす。


「『桜華流 乱香らんか』」


自分達に飛んでくる刃を、一つ一つ確実に打ち落としていくが、数発はオレの身体に刃が突き刺さってしまった。


「ぐっ…」


「8割がた打ち落としたか、やるな」


痛ぇ、くそっ、無茶苦茶過ぎんだろ今の。


『無事か!!神威!!』


「何とか」


でもまだ動ける。なら何とかなる…よな


『…神威、刀気が出たらあの技を使うんじゃ、アレなら勝てるかも知れぬ』


「アレ?…あぁ睡蓮か」


正直、睡蓮は椿ほどの威力はないけど、それなりに形になってきた刀気を使う技の中ではオレの1番使える技だ。


『刀気が出たら妾とタイミングを合わせるんじゃ』


それで決めるって事ね。


「りょーかい」


オレ達が作戦を立ててる頃、ヤツは既にもう一度オレ達に刀を向けて狙いを定めていた。


「飛刃」


「『!』」


またヤツはオレ達に向けて刃を飛ばしてきやがった。

しかもさっきの3倍の量の刃だ。


「やべっ!」


オレは必死に、刀気を出そうと念を込める。


すると青い刀気がようやく椿に纏っていくのが認識出来た。


「来た!!」


『急ぐんじゃ!!!』


オレはそのまま、刀の先端から刀気の玉を浮かび上がらせ握りとる。


「『桜華流』」


「!」


そして、握った手を飛んでくる刃ごと、男の方へと向けて手を開いた。


「『睡蓮』」


シュン!!と勢いよくオレの手から放たれた刀気は、レーザービームのように刃を巻き込みながら奴へと飛んで行った。


「なっ!!」


オレが放った刀気が、奴の腹を貫いた瞬間爆発を起こし、やつを巻き込んだ。


「ぐわぁぁぁぁ!!!!」


オレ達は、何とか奴との勝負に勝てたんだ。


「ッ…はぁ!はぁ!」


かなりキツイ戦いだった。

勝ちを確信したオレは、その場で膝をつく。


「無事か?神威」


人の姿に戻った椿が、オレを心配してくれる。


「ふーん、君強いね」


そういや、助けた女の人がいたな…忘れてた。

女の人はゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。


「私、彩乃って言うの。よろしくね」


「…うっす」


ギュゥゥと、何故か椿がオレを抓ってくる。

痛い痛い、なんで抓られてるの?


「たらし」


「何で!!?」


女の人はニコニコと笑いながら、オレの顔を覗いてきた。


「ね!私と共闘しない?」


「『…は?』」


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