第22話 先輩に相談だ

共闘を提案してきた彩乃って女の人は、ニヤニヤとオレの顔を覗き込みながらオレの答えを待っている。


「共闘って、なにが目的っすか?」


「目的って失礼ねぇ、あなたの力を買ってるのよ」


そんなこと言ったって、いきなり共闘と言われて何を信用すればいいのやら。


「信用してはならんぞ神威、こやつは何か企んでおる」


「だっから企んでないっての!!!」


彩乃さん…?は、オレにズビシ!と指を指して話しを進めた。


「あなたと私が共闘して最後まで勝ち抜けば、最後には安全にどちらが勝者かを競えばいいし、それまで二対一の戦いが出来ればその分有利になれるじゃない!となれば、もうこれは強い人と共闘するっきゃないでしょ!って算段よ!!私ってあったまいい!!」


まぁ…言い分は分からなくもないけど…


「それを考えつくのはお主だけじゃないじゃろ」


「?」


そう、他にもチームを作っている人はいるだろう。

それを思い浮かばないわけが無い。


「そなの?」


存外、この人は頭がよろしくないのかもしれない…それに


「オレ、もう手を貸してくれてる人がいるんですけど」


「なら尚更よ!!私とも組めば3人体制でより勝率は上がるわよ!!」


だーめだ、この人話し聞かねぇ。


「というわけで、はい決まり!これであなたと私は一蓮托生って事で」


「決まっちゃったよ…先輩になんて話そう」


「…正直に言うしかないのぅ」


勝手に決まったこの組み合わせ、先輩はなんて言うだろうか。


「チーム名は何にする?」


そんな気の抜けた質問をしてくる彩乃さん、ほんとよく分からない人だ。


「…忍者海賊ミンク侍同盟とかでいいんじゃないっすか?」


「カ〇ドウでも討ち取りにいくの?」


「どちらかと言うと刀じゃし侍のみのチームという感じじゃの」


ぶっちゃけ、こんな強引に決められたチーム名は、オレとしては割りかしどうでもいい。


翌日オレたちは、真っ先に先輩のいる教室へと向かった。


「先輩!!お話があります!!」


「どうした、藪から棒に」


「好きです付き合ってください!!「断る」即答だった!!?」


スパァン!!という清々しい響きがオレの頭から聞こえてきた。


「アウチ!!」


「ふざけとる場合か!!!きちんと昨日の事を話さんか!!」


隣にいた椿に上履きでしばかれ、オレは、ふと我に返った。


「そうだ、先輩昨日なんっすけど」


「ちょいまち、その話しってのも気になるが場所変えるぞ」


「?」


なんで?

オレが首を傾げると、先輩は呆れ半分怒り半分といった顔でオレを見てくる。


「あのな…今のでお前の嘘告のせいで教室中ザワついてんだよ」


「…あっ」


ふと周りを見渡すと、ヒソヒソと生徒たちがオレ達を見ながら話していた。


「ねぇ、あの子」


「今、里見君に告白してたわよね?」


「マジ?そーゆー関係?」


「男同士の恋愛見せられる側になってみろっつーの」


「隣の女の子あんな現場に連れてこられて、可哀想に」


「両刀なのかな?」


やっべ、腐の流れが伝染してる。

なんならグへへと効果音のつきそうな笑みで腐の方々が教室の隅からこちらを見ているんだが…主に女子


「オレまた何かやっちゃいました?」


「ここは異世界じゃねぇし、やっちゃったと言うより、お前の場合はやらかしただ」


そう言って先輩はオレの横を素通りし、廊下に出る。


「話しがあるんだろ?ついてこい、ここじゃ騒がしすぎるからな」


「うっす!」


先輩の後ろを、オレと椿はあとを着けるようについて行き、訪れたのは人気のない屋上…の出入口の扉の前だった。

なぜ屋上では無いかと言うと、単純に鍵がかかっていてドアが開けられないってだけだ。


「で?話しってなんだ?」


「先輩、うちのチームに戦う女の子ってどうっすか」


「…ふざけた話しなら教室に戻るぞ?」


先輩は、スタスタと教室に戻ろうとし、オレは必死にそれを止める。


「待って待って待って待って!!ガチなんですって!!!」


「必死じゃのぅ」


見てないで、一緒に止めて欲しいんですけど椿さん。


「まぁ、そう言わずに少し訊いてやってはくれぬか里見先輩、本当に訳ありなのじゃ」


なんだかんだでフォローしてくれる椿さん、マジリスペクトっす。

そして、椿の呼びかけのおかげで、里見先輩は足を止めてくれた。


「はぁ…さっさと要件を言え」


お、話しを訊いてくれるみたいだ。

よかったよかった。


「実は…むかしむかしある所に「帰る」ワンモアチャンスプリーーズ!!!」


オレが言ったお言葉に、随分ご立腹のようだ。


「は・な・せ(怒)」


言葉のトーンに怒りを感じるのですが…


「いや、やっぱりお前じゃ話しが進まねぇから、椿、お前が話せ」


「よいのか?」


先輩が腰にしがみつくオレを指さし、淡々と話す。


「こいつじゃ話しが進まねぇだろ」


「…まぁ…確かにの」


コラそこ、納得せんと否定せんかい。

それから、オレを置いてきぼりにしながら、先輩は椿の話しを黙って終えるまで訊いていた。


「ふん…なるほど、それでオレに相談しに来たと」


「どうかのぅ先輩よ。お主の意見を聞きたいのじゃが」


先輩は一旦顎に手を当てて考える素振りを見せると、顔を上げて答えた。


「最終的な決断はこいつに任せるが、オレだったら反対だ」


「ですよねぇ〜」


先輩は、指を三本立てて理由を述べる。


「理由は3つ、1つは手を組む目的がハッキリとは分からない、

2つ、勝ち残れば夢を叶えると言う根本的な目的が同じ以上いつ裏切られるか分からない、

最後はオレ自身がその女の事を信用していないからだ」


「でも、先輩はオレと初対面なのに手を組む提案をしてきましたよね?」


「オレは黒羽を殺す目的があるし、夢を叶えなくてもいいっつったろ、それにお前の戦いを何度か見た上でオレは決断してんだよ」


え?何回も闘い見てたの?

じゃあ手を貸してくれてもよくない?


「言っとくが手を貸さなかったのはお前の実力をハッキリ見定める必要があったからだからな、いじめとか思うなよ」


バレてらぁ


「とにかく、オレ達もそいつに合わねぇと始まらねぇな、今日の放課後会いに行くぞ」


「オレ達って…春華さんも一緒っすか?」


「当たり前だろ」


「ヴェッ…」


なんか…椿の方から聞いたこともない声が聞こえてきたんっすけど

てな訳で、オレ達は放課後に彩乃さんに会いに行くことになりました!

———————————————————————フォロー、応援、コメント等よろしくお願いします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る