第20話刀気

あれから無事に退院したオレは、今日も今日とて椿の修行を受けているわけだけど、今日はいつもの庭と違って人の来なさそうな岩山に居た。

しかもういはまで連れてきちゃってるし


「こんなとこで何すんの?椿さんよ」


「うむ、今日は刀気について教えようと思うてな、それをする為にはういはも必要じゃから連れてきたのじゃ」


「はい!お願いしましゅっ!」


相変わらずよく噛む子だわ。


「ってか、刀気ってなに?」


椿は疑問符を掲げるオレとういはに対して、刀気について説明してくれる、


「刀気とは、剣士が使う気迫のようなものじゃ、刀気そのものは誰でも持っておるが、扱えるようになるには修行をせんとできんのじゃ」


「なんかかっこいいな!その刀気ってのを使えるようになればオレもかめはめ「かめはめ波は使えんと言うとろうが」…ほーんと、最後まで言わせてくれないよね君は」


ガックリと肩を落とすオレを見ながら、椿はニヒルと笑っていた。


「じゃが、この刀気を上手く操れれば、お主のやりたがっていた漫画などに似たような技も使えるようになるぞ」


「マジで!!?」


そんなワクワクドキドキの技なのか!今からめっちゃ楽しみなんだけど!!


「お姉ちゃん、私は何をするの?」


ういはが、自分の役割について椿に聞いていた。

そういえば、なんでういはも一緒かまだ聞いてなかった。


「うん?そうじゃの、とりあえずういははまず、刀になってくれぬか」


「うん!わかった!」


そう言って、ういはは元気にオレにキスしてきた。


「ぐぬっ…この光景だけは、何度見てもモヤモヤと感じさせるのう」


いや、今回はお前が要求したんだけどね?

刀になったういはを持ちながら、オレは椿に話しかける。


「で?これからどーすんの?」


「ちょいとういはを借りるぞ」


椿はオレからういはを受け取ると、大きく深呼吸をする。


「何してんだ?」


「刀気というのは刀を通すと濃く現れるのじゃ、それを利用してお主に刀気を見せてやろうと思うてな」


へぇー刀気って目に見えるんだ。

そして、オレが見守る中、椿は刀になったういはに気を集中させていく。

すると、刀になったういはに、薄く青いモヤのようなものが見え始めた。


幻覚か何かか?と思ったオレは二三度目を瞬かせ、何度も刀を見返す。


「どうじゃ?大したものじゃろう?」


「うんうん、大した胸だな」


ズプリ


「あぁぁぁぁぁぁ!!!目がぁ、目がぁぁぁぁぁぁ!!!」


こいつ、いきなりオレの目を指で突いてきやがった!!!


「まったく、見るところが違うわ、この戯けが」


そんなこと言っても、視界に入った物に素直に感想を述べただけなのに…


『ご主人、大丈夫?』


「おう、大丈夫、ありがとな」


オレはういはに優しく答えると、1つ疑問が浮かんだ。


「ってか、離れてても声は聞こえるんだな」


「まぁ、持ち主はお主という事になっておるからのぉ」


ほぉー、じゃあ椿に声は聞こえないわけだ。


「ほれ、つべこべ言うとらんと、やってみぃ」


椿は、刀になったういはをオレに手渡し、指示を出して来た。


「いきなりやれったって」


「しょうがないのぉ、ならやる気が出るようにお主の好きそうな技を見せてやるぞ」


おぉ!それは見てみたい。


椿はういはを構えて、また刀気を出そうと集中する。


「桜華流」


刀の先端から、青い小さな刀気の塊が現れる。

何あれ?


睡蓮すいれん


小さな青い刀気を空いた手で握りとり、椿が自身の前で握った手のひらを開くと、青い刀気がドヒュンという音を立てて一直線に岩に向かって飛んで行く。


「おおぉぉぉぉ!!!」


チュドォォン!!と巨大な爆発音と共に、目の前の岩は消えてなくなってしまった。


「すっっっげぇぇぇ!!!」


これは、まさしくレーザービーム!!!

男のロマンがまさかこんなところに!!


「っはぁ…はぁ…」


オレが興奮してる最中、椿は息をあらげながら膝をついてしまった。


「椿!!!」


「お姉ちゃん!!!」


突然のことに、ういはも慌てて人の姿に戻り椿を心配そうに見つめた。


「安心せい、集中しすぎて疲労が出ただけじゃ」


そ…そうなのか?全力で走りきった後、みたいなもんか。


「何はともあれ、これで少しはやる気になったじゃろ?神威よ」


「おう!これは会得するしかないっしょ!」


オレもビーム撃ってみたいしな!


「ならば、早速ういはを使うてやってみよ」


?椿でやるんじゃねぇの?


「お前は刀になんねぇの?」


「刀気を教えるには口だけで説明するより、実際に手足を使うて教え込む方が早いんじゃ」


ふーん、そーゆーもんか。


「ほれ、さっさと初めぬか」


「おう!」


オレはういはを刀にし、握りながらめちゃくちゃ力を込めてみる。


「ふん!…ぬぬぬぬ…」


『ご主人がんばれー!』


だが、一向に刀気っぽいオーラが現れる気配はない。


「それではただ力んどるだけじゃ、もっと身体の力を抜いて、意識のみを集中させるんじゃ」


意識のみって言われても、あれか、よく漫画にある目を瞑って集中するやつか。

よーし


オレは目を瞑ると、今までにないほど集中した。

そして、目をカッ!と見開き、椿を見る。


「見えた!」


「?刀気は出とらんぞ?」


「今日のお前の下着の色はしr「まだ見ようとしとったのか!!!」ぶべら!!!」


オレが椿の下着の色を言い当てる前に、椿の強烈なビンタが飛んできた。


「まだまだ先は長そうじゃの」


それからもしばらくオレは、刀気を出そうを躍起になって修行を続けていた。


「ふん!ぐぬぬぬぬぬ…出ろ刀気ぃぃぃ」


「じゃから力みすぎじゃと…はぁ、しょうがないのぉ」


椿はオレの後ろに回り込み、そっとオレの手に自分の手を添えた。

めっちゃいい匂いがする。


「妾がお主を通して刀気を流す、その感覚を覚えれば、刀気を出しやすくなるじゃろ」


なるほど、だから椿が刀にならずにういはを使ってるのか。


「ゆくぞ」


「お、おう」


椿が目を瞑り、オレを通してゆっくりと刀気を流した。


「おおぉ…」


何か、身体が暑いなこれが刀気を流す感覚か。


「覚えたか?」


「おう、覚えた。背中にあたるお前の胸の感覚」


ボゴッ


椿の拳がオレの顔面にクリーンヒット…


「ふいまへん(すいません)」


「まったく…お主はそんなに胸が好きなのか?」


「安心しろ、ちゃんと尻も好きだ」


「堂々と言うことではなかろう」


『ご主人、変態さんなの?』


おっと、ういはにオレが変態と認識されてしまうところだ。ここは違うとはっきり言っておかないとな。


「違うぞういは、オレは変態じゃない」


「変態じゃろうが」


お黙り、ういはに誤解されるでしょ。


「とにかく、刀気の感覚を覚えたなら修行を続けるぞ、今日中に刀気を出せるようにはなってもらうからのう」


「うっす」


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