第7話闘う理由

「話しってなんですか?里見先輩」


里見先輩は人気のない教室にオレを招き入れると、話し始めた。


「お前…刀と契りをかわしてるよな?」


「え、えぇまぁ」


「その刀の名前は?」


?何が聞きたいんだ?

オレは頭をボリボリと掻きながら答えた。


「椿っすけど」


「!…そうか、あいつか…ならいい」


何が聞きたいんだろうか、今の所さっぱりだ。


「もう1つ確認したい。お前、黒羽くろはって言う刀を知ってるか?」


黒羽?聞いたこともないな、それが何かあったんだろうか。


「いや、知らないっす」


「そうか…オレはその黒羽って刀を探してる」


探してどうすんだそんなもん。契るのかな?


「先輩はその刀を見つけて、どーするつもりなんっすか?」


ふと疑問に思ったオレは、つい先輩に聞いてしまった。


「どうする…か…フッ」


里見先輩が、何故か頬を緩める。

いや、フッじゃないんすよ、フッじゃ


「その刀はな、オレの祖父母を殺しやがった男の手に渡っちまったのさ」


「!?」


なんか、聞いちゃいけない話しを聞いてしまってる気がする。


「オレはそいつを追って祖父母の仇を取らないといけないんだ」


おっも…聞いといてなんだけど重っ

里見先輩は手の平を強く握り悔しそうな顔をしていた。


「オレはそいつを殺して黒羽をへし折らないといけない、その為にお前と接触したって訳だ」


「へし折るって…先輩は刀と契ってるんすか?」


先輩は、握った手を緩めてこちらを見た。


「当たり前だろ、だから刀と契るとかそーゆーのを知ってんだよ」


あーなるほど、まぁじゃないと刀の事情とか分からねぇよな。


「それで、オレに接触してきた理由は?」


「あぁ、お前、オレと手を組まねぇか?」


は?


「オレ達は黒羽をへし折り祖父母を殺した男をぶち殺す。その代わりこの刀同士の闘いに生き残るために全力でお前らに手を貸してやる。どうだ、悪い話じゃねぇだろ?」


悪い話じゃないっていうか…


「生き残ってどうするんすか?」


「は?」


オレの質問に、先輩は素っ頓狂な声をあげた。え?オレおかしなこと言った?


「お前…刀同士がなぜ争ってんのか知らねぇのか?」


「はい全く」


先輩はため息を吐いて、肩を落とした。

オレが悪いの?


「この世に生を受けた刀は数限られている。それは分かるか?」


「いーえ、全然」


「…そこからかよ…」


この人と喋る度に、オレは呆れられてるな、何でだ?


「何でもかんでも全部の刀に生を宿されていたらそれこそニュースになるハズだろ、それがないってのは限られた数だけが生を受けたって事だ」


「あ、なるほど」


「そして、その刀同士が争い、最後に勝ち残った持ち主とその刀のみがどんな願いも叶えられる。それが刀同士が争っている理由だ」


え?何それ?Fateの聖杯戦争?あ、でもあれは結構あやふやだっけ、全部観た訳じゃないから知らんけど。


「ほとんどの持ち主は、自分の欲を叶えるため、より強い刀を求めて奪い合う、生き残ればどんな願いも叶うってのはそれほど魅力的だからだ」


なるほど、よく椿が狙われてるのはそーゆー意図があったからか、でも分からないことがひとつある。


「じゃあその願いで黒羽って刀と持ち主を倒してもらえばいいんじゃないっすか?」


先輩は、更に呆れた顔でオレを見てきた。

え?何?


「お前、バカだろ」


「何で!!?」


「願いが叶えられるのは生き残ったヤツって言ったろ、仮にオレが願いを叶えられるようになってたとしたら、そいつらを倒さねぇと無理じゃねぇか」


あ、そうか、確かに


「でも、残りの刀がいくつあるかなんて、オレ達じゃ分からねぇんじゃないですか?」


「あぁ、だから何かしらの方法で数が一定数を切ったら分かるようになるらしい、今のところはオレにもさっぱりだがな」


そんな機械みたいなこと、あるのだろうか。


「で、話しを戻すが、どうだ?オレと手を組んでくれるか?」


オレとしては争う理由も無くなるし、正に願ったり叶ったりだ。だが、椿がなんて言うか。


「今すぐじゃなくていい、答えが決まったら話しかけてくれ。オレの教室はここだ。決まったらここに来てくれればいい」


里見先輩は、そうして紙に2ー3と書いてオレに紙を手渡してきた。


「それじゃあオレはいくぜ」


先輩はそのまま教室を出て行き、オレは廊下から先輩を見送った。


「里見先輩…か」


「「「「や〜く〜し〜く〜ん」」」」


「ハッ!!!」


オレが後ろを振り返ると、先程オレを追いかけていた男子の奴らがオレを睨みつけていた。


「ようやく見つけたぞ!!この裏切り者め!!!」


「成敗してくれようぞ!!!」


「スマンがここで海の藻屑となれ!!!」


「裏切った覚えは無いし、成敗される言われもないし、1人だけガープ混じってんじゃねぇかちくしょぉぉぉぉ!!!!」


オレは、その後も必死で逃げ回った。


そして、椿は下駄箱前でずっとオレを待っていたとかいなかったとか


「……遅い」


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