領主の娘はひろい世界に憧れているようです 9

「あ、おかえりなさいモトキさん、間違えた、ロリキさん。キリシャさん攻略は順調ですか? ちっちゃい子といちゃいちゃぺろぺろしてきましたか? いやーロリキさんってば器が小さいばかりか小さい子が好きとかほんと驚きですよお巡りさんこっちです」


「おかえりペドキくん……あんまりちっちゃい子ばっかりに欲情しちゃだめだよ……? 引き返せなくなっちゃうよ……?」


「…………」

 定宿の部屋に戻った途端、リューとルビィにひどく罵倒された。


 ったくペドとかロリとか失礼な。

 ちょっと守備範囲がひろいだけだろうが。


「ところでロリキさん、言われた通りにルビィさんをお連れしておきましたが、いったいどうするおつもりで? ちっちゃい子が大好きなロリキさんにはルビィさんのおっきなおっぱいは無用だと思われますが。というわけでわたしが代わりに揉んでおきますね。うっひょー! マシュマロみたいです!」


「や……リューちゃん揉まないで……」


 リューに爆乳をもみしだかれ、もだえるルビィ。

 

 大変エロいが、俺百合属性ないんだよなぁ……。


「……リュー、ルビィをはなせ。――ルビィを呼んだのはな、俺がこれからやることをルビィに手伝って欲しかったからだ。ストーリーテーリングに長けたルビィに、俺の策略のシナリオを補強して欲しいんだよ」


「モトキくん、わたしを……頼りにしてくれてるってこと?」


「ああ、そういうこと」

 俺は頷いた。


「よかった……わたしおっぱいだけの存在じゃなかったんだ」


「…………」

 今後はもうちょっとルビィを大切にしよう。

 リューはこれまで通り適当でいいや。


 俺はさっそく、今とりかかっている仕事について説明する。


「俺は今、モンターヴォという男を『主人公』に変えようとしているんだが……ちょっとこれが難航してる。モンターヴォプロデュースの内容を、ルビィに一緒に考えて欲しんだ」


「人を、『主人公』に変える……? どういうこと?」


「人はいくつかの条件さえ満たせば『主人公』になれるんだよ――まずはその条件について説明しよう」


 俺は説明を開始する。


「まず、主人公の条件その1 ――高貴な血をひいていること。もしくは神に特別に目をかけられていること」


 少年マンガの主人公や神話の英雄を思い浮かべてみて欲しい。

 彼らの父親や祖父は、大抵偉大な人物だ。


 英雄だったり神だったり王だったり――一般人ってことはまずない。


 身もふたもない言い方をすると、彼らは結局血筋がすごいのだ。

 ほんと身もふたもねえな。

 

「モンターヴォの場合、この条件はクリアしている。あいつ貴族だし、王の血も入ってる。ってことは古代の神の血も入ってるだろ。だからこれはOK」



 次に、主人公の条件その2 ――『贈与者』に修行をつけてもらうこと。


『贈与者』――人を教え導き『主人公』へと変える者。


 偉大なる教導者。

 贈与者から教えを受けないことには、どんな人材も『主人公』の位置にはたどり着けない。

 

「これに関しても問題ない。モンターヴォの『贈与者』に関しては俺が担当する。俺が『ミラー』であいつの成長に必要な人材に変身し、修行をつける」



 そして主人公の条件その3 ――修行修了時に、『贈与者』から最高の武器や必殺技、もしくは移動手段をもらうこと。


 ………これに関しては、ちょっと頭が痛い。


 モンターヴォのためになにか偉大な武器を調達してきてやってもいいが――おそらく、あいつじゃ名のある武器は扱えない。

 武器も主人を選ぶのだ。


 必殺技を仕込もうにも、あのネタキャラじゃ覚えられないだろう。

 手間かけさせやがってモンターヴォめぶっ殺すぞ。


 このあたりをルビィに一緒に考えていただきたい。



「んで、主人公の条件その4。そいつにとっての最大の敵との戦いに勝利すること。その際、ひょう付けが行われること」


 主人公はやはり自分の敵を倒さなくはいけない。

 そうして心の枷から解き放たれないことには、真に己の物語を紡ぐことはできないのだ。


 最大の敵に勝利した者には、勝利の証として傷跡スティグマが授けられる――これが標付け。


 私は主人公です、と証明するバーコードのようなものだ。

 

 たとえばルビィの場合、彼女の最大の敵はオークだった。

 そしてオークを倒したルビィは、その後俺に処女を奪われた。


 破瓜はかすることによって、ルビィは体内に傷跡スティグマを得た。標付けされた。


 ルビィも一応、ささやかながら主人公なのだ。

 いくつかの条件を満たしていないので、真の主人公とは言えないが。俺のセフレだし。


 ――さて、モンターヴォにとっての最大の敵とはなんだろう?


 あいつの心の枷になっているものは――そのあたりをこれから探らなくてはならない。  

 そして、それを打倒させてやらなくては。


 このへんもシナリオを練る必要がある。

 ぜひルビィに手伝ってもらいたい。


 俺は同時並行でキリシャ攻略も進めているので、ちょっと疲れているのだ。


「ま、こんなところだ。他にも女神と出会うとか人々から愛されるとか、色々『主人公』の条件はあるが、そのへんはどうとでもなる。――ルビィ、俺と一緒にモンターヴォを成長させるための道筋シナリオを考えてくれるか?」


「う、うん……! がんばってみる! わたし、モトキくんの役に立ちたい……!」


 拳をぎゅっと握るルビィ。

 その瞳には意志がみなぎっている。


 出会った当初、お人形だった頃のルビィと比べると、ずいぶん変わったものだ。

 

 ルビィが順調に成長してくれれば、今後も転生者と戦うにあたって助けになってくれるだろう。


「うんうんルビィさんも成長したのものです。かぁー……! 壁を破ろうともがく若者みてると目頭が熱くなっちまいますよ。まあ、わたしの域にはまだまだ遠いですがね」

 君は何様なのかな、リューちゃん。


「さて、と」

 俺は一つ息をはき――おもむろにルビィの服のボタンに手を伸ばした。


「モトキくん……ど、どうしてわたしのボタンを外すの?」


「え? いや、真面目な話して疲れたし、癒してもらおうと思って」

 そう言いながら、ルビィのブラをズリ下げる。


 ブルゥン……と上下に跳ねる双丘。


 いつもながらすばらしい弾力です。

 うお、まだ震えてる……。


 さあて、吸うか……あるいは揉むか……いや挟もうか……。


「……モトキくんがペドキくんになっちゃったのかと思って心配したけど……やっぱりモトキくんはいつものクズキくんだったね……」


 俺の名前はモトキだよー。


 **


 ルビィとリューと三人でめちゃくちゃにやりまくり――そして夜。


 俺は『シャクナの森』に向かっていた。

 不気味な夜の森を歩き、森中心部の広場に到着。


 いつもはキリシャがそこにいるのだが、さすがにこの時間に彼女はいない。

 もう家に帰ってる。


「さて……」


 俺は『ミラー』の力を使い、キリシャの姿に化けた。


 そして、彼女の姿で念じる。


 ”集まるですよ! キリシャのお友達!”


 すると、森のあちこちから赤い光の首輪のはまった魔獣たちが姿を現す。

 

 キリシャが『調伏テイム』したお友達。 


「いい子ですねー」

 

 俺は黒狼ゴドッフの背を撫でてやる。


 そして赤い首輪をさわりながら、ささやく。


黒狼ゴドッフさん、キリシャの名の元に命じます――――」



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