第32話 改良か改悪か

「全然ですね」


「手厳しい」


「知ってます? ここもう十年以上前の団体なんですけど外周回る時、めちゃくちゃ足揃っているんですよね」


「これはすごいな」


「これで銀です。少なくともこれを越えないとお話にならないです」



 休日放課後、ぶっ続けで練習をし、大会三日前にして監督がふらりと借りている体育館に来た。


 上から隣でみていたので。これは激励げきれいかなと思っていた。しきりに微妙だ微妙だと連発。


「ちょいちょいマーチングリーダー」


「なんですか?」


「ラストの曲、コンテちょっと変えるからみんなに伝えといて、作成のメンバーはすぐに学校へ戻して、確定している部分は練習で」


「先生、ちゃんとマイクオンです」

 殺意が上に届いた。

 そりゃそうだ。早く書いてくれたのだろう。四十分で仕上がったものを見ると全員で正面を向いて横一列で歩くカンパニーフロントのタイミングに溜めを持たすための改良だった。改悪になるかもしれない。


「リーダー、一言」

 時間は夜の七時を回っていた。あと一時間で出ないといけない。


「指揮台の監督に精一杯の殺意をこめて、行くぞ」

 声をあげる一瞬、体育館の外で講師と談笑する監督を全員が見た。

 今日が終わって、明日であと二日と本番で解放だ。

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