第33話 二日前の変

 本番二日前、トランペットの一年生女子部員が来なかった。おかしいなと思いながら、放課後練習に励んでいたら、坂下先生に一報が入った。


「遠山、交通事故で大腿骨だいたいこつやった」

 泣きながら行く行くと抵抗を止めなかったらしいが、手術になり最低全治半年。数か月は安静になった。どうしようという不安と動揺が部員から漏れた。


「代替えのメンバーを招集して」

 普段やっていない僕でも二日かかった。今から三年生を出せてもギリギリだ。不幸中の幸いは遠山はソロを吹いていない。


「えへへ、みんな騙されたな。僕もう足治ってんねん。昨日、先生に包帯取れって言われてさ。なんも無かったら大会は止めとけって言われてて、その何かがあったから、遠山のとこに入るわ。トランペット貸してよ」


 足は痛い。ギブスを取って靴を持ってきてもらった。いや、久々の靴は窮屈だな。参った参った。


「でも入るって」


「代替えで僕以上にコンテが入っている部員はいますか?」

 邪魔するなよ。進撃の巨人のハンジさんの気持ちが分かる。


「いやでも」

 今最高にかっこつけたい気分なんだ。

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