第31話 どんな感じや

 覚えろと言われば覚える方だと思っていたが、十分オーバーでコンテ何枚分だこれ。学校勉強宿題コンテ。二日でやれと言われたので、二日で大方頭に叩き込んだ。


「五十二番。後ろそうそう右に半歩くらい。斜めはチェックされると思うからマークタイムの間に斜めをそろえる意識でやってな。あとマークタイムしてるからと言って大幅に戻したらええってわけじゃないからな」


 マークタイムというのはその場所で足踏みという意味だ。何を言いたいのかというと縦列と横列だけではきれいではない。いくら横列を合わせても斜め線がずれていれば、その認識は誤りなのだ。


「光、めちゃくちゃ生き生きしてますね。監督はそれを見越して」

「役目を与えたら仕事したやろ」

 偶然、坂下先生と監督の目の前を通った部員がそう僕に教えてくれた。


 その時すでに二週間前、足もだいぶ復調してきた。杖はまだいるが、折った方の足を地面につけても痛くない。


「見ててどんな感じや」

 元、マーチングリーダーの小藤先輩が話しかけてきた。

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